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第33話 竜の島②

「まあそう威嚇しないでください。エンシェントドラゴンがいないって事は今は誰が管理しているんですか?」

(何故人間如きにそんな事を教えねばならん)

「人間如き?これを受けても劣等視できますか?」


 俺は軽く〈霊気解放〉で威圧をかけて脅してやる。軽くといっても赤のレインボードラゴンが放つ威圧の軽く数倍はある。


 俺の霊気を受けてラプトルたちがばたばたと倒れていく。上のワイバーンたちも落ちてくる。幸い俺らの所に落ちてくる奴はいなかった。


(なんじゃ!?そのオーラは!貴様人間か?)

「どうでしょうね?でもこれで俺の実力は少しは理解できたかな?それでもう1度聞くけど、今は誰が管理してるの?」

(い、今は儂らが管理しておる。儂ら以外でエンシェントドラゴン様がいないのを知っているものはおらんはずだ。仮にいてもごく僅かだろう)


 なるほど。まだシェンがいなくなったことは公にされていないと…。困ったな。じゃあ俺が長になったって言えないじゃん。もう疲れるからシェンの素性明かすか。


「もう疲れたから3人とも素性明かしていい?」

「いいんじゃないですか?話も進まなそうですし」

「いいと思う」

「承知した。では竜化でもするか。ちょっと離れた場所でしなければな」


 そういうとシェンは気絶しているラプトルの間を通って竜化できる位置まで移動した。そしてシェンの体が白く輝くと、赤いレインボードラゴンにも劣らない程綺麗な白い鱗を持った竜の姿になった。


(…エンシェントドラゴン様?)

(うむ。久しぶりじゃの。赤よ)


 どうやらこのレインボードラゴンは“赤”って言う名前らしい。意外と単純だった。と言う事はシェンにも名前があったのか?その辺は気にしないでおこう。シェンも今の名前で満足してるんだし。


(おお…今まで一体どこへ行っておったのですか。儂はずっと探しておったのですよ?しかし島中にもおらず、島の外には掟があり行けず、結局分からないまま)

(済まなかったの。我が独断で動いた訳じゃないのじゃ。まあ説明すると長くなるが聞いてくれ)


 シェンは俺と合ってからの出来事を全部赤に話した。なるべく俺が悪者にならないように慎重に言葉を選びながら。そのせいもあってか赤は黙ってシェンの話を聞いていた。


(…という訳じゃ。だから我は今シェンという名前でマスターの使い魔として暮らしておった。本来ならばここに戻って来る予定はなかったんじゃが、マスターはこうしてここに戻って来ることを許してくれたのじゃ)

(なるほど。そう言う事だったのですか。申し訳ありません魔王よ)


 赤が長い首を下げている。竜の姿だからよく分からないけど話的に謝ってるのかな?悪いのは俺なんだけどな。


「いや、悪いのは俺の方だ。シェンを勝手に使い魔にしたりしちゃって」

(何を言いますか。あなた様のお気遣いがあったからこそエンシェントドラゴン様…いえ、シェン様がもう1度ここに戻ってこられたのですから)

「じゃあそう言う事にしておくか。あ、それと色々とここについて詳しく聞きたいからシェンの暮らしてた山に案内してくれない?」

(畏まりました)


 案内してくれるようなのでシェンは竜人化して俺らと一緒に赤の背中に乗った。赤の背中は炎の適性が強いためかシェンよりも暖かく、歳をとっているせいか鱗はシェンより硬めだった。でもシェン以外の竜の背中に乗るのも悪くない。


 竜のスピードは飛行機よりも速いだろう。30分もかからないうちに山についた。この山はカルデラが出来ていて、そのカルデラの中でシェンが暮らしていたらしい。この前どうせ洞窟とかだろ、と言っていた自分が恥ずかしい。


(さあ、着きましたぞ)

「ありがとうな」


 赤がカルデラに降りると俺らも赤から降りる。竜の住処だから金銀財宝があるという訳ではなく、広めのグラウンド程のカルデラにシェンが寝れるような大きさで干し草が積まれてるだけだった。


「じゃあ早速現状の確認をしよう。今現在この島から出た竜はいる?」

(いえ、報告ではまだ出ていません。なによりシェン様が不在だったことを知る竜が少ないのと、知っている儂らを初めごく少数の竜たちでいつも以上に見張っておりましたので)


 ふむふむ。とりあえず1つ目の目的は大丈夫だな。意外とシェンがいなかったことは知られていなかったって事はシェンはあんまり竜たちの前に現れないのか?まあいい。島から出た竜がいないならひとまずは安全だろう。次の目的が俺らにとって1番大事なんだよな。


「なるほど。現状以内なら問題は無いか…でも警戒はしておいた方が良さそうだ。今はまだ機会を狙って大人しくしている竜がいるかもしれない」

(今後しばらくは警戒態勢を強化したままにするのが妥当ですな)

「もう1つ聞きたい。というか聞くというよりお願いに近い」

(何でしょうか?儂らに出来る事なら何でも致しますぞ)


 本当に赤は頼りになる。長生きしてるだけあって瞬時に状況を判断して1番最善な方法をとる。まさに内政向きだ。うちの国に欲しい。それにレインボードラゴンなだけあって、かなり強そうだ。俺たちとは比べ物にならないけど。


「今ここにいる俺たちは新しい国を作った。国民も少ない数ではあるがいる。だが国民以上に内政をするものや国民を守る敬語をする者たちが全然いない。要するに人手不足だ」

(ふむ。なるほど)

「そこで、だ。この島の竜人化できる上級竜をうちの国に欲しいんだ」


 俺は土下座をして頭を深々と下げる。この話を竜側にとっては良い条件ではないだろう。向こうは俺らに人手というか竜手?をくれる。だが俺らは竜側に何も返してやれない。俺は竜たちの個人個人の能力を判断して、オニマル達内政班に加える竜と国を守る防衛班などにいくつかの班に分けるつもりだ。でもその前に竜たちが集まらないと何もできない。


(なるほど…その要望はシェン様も望んでおられるのですかな?)

「ん?まあここの島も向こうの国も両方我にとって大事なものだからな。片方だけを守って片方は見捨てるような真似はしたくは無い」

(でしたら儂だけでは判断できませんのでしばらく時間をくださいませんか?他の仲間と相談をして決めます。それまでの間、この島を観光なさってはいかかですかな?まあ観光といっても建物などなく、大自然そのものですがな)


 あれ?意外といい方向に持っていけてるのか?もしかしたらいけるかもしれないな。別にいなくなった竜がいないなら急ぐ必要もないからしばらくはここでまったりしてもいいかな。幸い食べ物も作れば困らないし、家や調理キットもある。


「分かった。協力感謝します。俺たちはしばらくの間この島に滞在させてもらいます」

(畏まりました。あなた様方にとって面白いような物はありませんが、どうかお許しを。…そうでした。シェン様はこれからはどうなさるおつもりですか?)

「これからはマスターたちとはしばらく分かれてこの島の管理に専念しようと思う。暇を見つけたらマスターたちにも会いに行くがな」

(そうでしたか。ではごゆっくりと)


 ん?聞いただけなのか。別に感想を言うでもなくどっか行ってしまった。というかこの山からどうやって観光するんだよ!?シェンも今はあまり竜化できないんだぞ。バレるからな。


 だからといってこのままカルデラで黙って過ごすわけにもいかないから俺たちは適当に山を下り始めた。山の標高はそれほど高くないし、斜面も急ではないので比較的簡単に下山できた。


 そして山を下りた先には見渡す限りの森。木々は生い茂っていてまさにジャングルだ。大自然を満喫するのには十分すぎるくらいだな。


 俺たちは森を適用に歩き続けた。結構いろんな竜に出会ったけど1頭として敵意どころか警戒を見せなかった。ほとんどが下級竜か中級竜だったので話せなかったが、会っても特に咆哮を上げられるとかそう言う事は無く、大体何事もなかったかのように通り過ぎるだけだった。赤たちレインボードラゴンたちが素早く情報を回したのかな?だとしたらすごいな。


 途中何頭かのラプトルが何か態勢を低くしながら吠えてたのでシェンに何言ってんのか聞いてみたらどうやら背中に乗ってもいいよ、って言ってたらしい。なのでラプトルのお言葉に甘えて乗らせてもらった。


 馬につけてる鞍とか手綱が無いから落ちないか心配だったけど意外とラプトルの背中は安定性があって踏ん張ることさえ出来れば普通に乗れた。ミラは体感が悪いのか何度も「落ちるー!」とか叫んでいたけど。


 そんな肉食だけど心優しいラプトルに乗ったまま森を駆け抜けたり、ラプトルの巣に案内させられてラプトルの赤ちゃんを見てたら親譲りの鋭利な爪で腕持っていかれそうになったりと危ない場面もあったけど楽しく過ごした。


 飯と睡眠はラプトルの巣でとった。ラプトルの巣は洞窟の中だったけど暖かく、獣の匂いもしなかった。


 飯はさすがにラプトルの食べてた生肉は食べれないからミラが外で調理キットを使ってスープとか作って食べた。


 寝るときも俺ら1人につき乗ってた1頭のラプトルと丸まるような形で寝た。ラプトルは鱗が無くて皮膚がむき出しだった。この辺はもしかしたら独自に進化して竜というよりかは恐竜に近いなと感じた。


 ラプトルの肌はすべすべしていたけど温かくて寝心地がすごく良かった。柔らかいからプニプニと押して遊んだら軽く吠えられて上に乗っかられて遊ばれた。腹筋が死んだ。




「マスター、起きているか?」


 暗い洞窟の中でシェンの小声が響く。寝る前に言われたがどうやらシェンは服を着たまま寝れるようになったらしい。「慣れた」と言っていたけどなれとかそういう問題じゃない気がするんだよな…。


「ん?どうしたシェン」


 とりあえず起きているので暗闇の中ではあるが返事を

返す。


「1つだけ聞きたいことがあったんじゃが、赤と状況の確認をした時に何故マスターが新しい竜族の長になることを言わなかったのじゃ?」


 ………あ。すっかり忘れてた。俺の方がそんなに大事じゃないと思ってたし、反対だったから頭の中からすっぽり抜けてた。


「…忘れてたわ」

「そんな事だろうと思ったわ。それで次に赤に会う時に伝えるのか?」

「いや伝えるつもりはない。シェンがここで分かれて管理をする以上シェンがここの最高責任者でいいよ。新しい長が俺なんかより今まで通りシェンが管理をした方が竜のためになると思うからな」


 新しい長が俺よりもシェンがいなくなっていたことをほとんど知らないんだからそのまま何事もなかったかのようにしておいた方が得策だと思う。俺はこんな馬鹿みたいに広い土地の管理+国の国王なんて出来ないからな。


「そうか…ならば我からは何も言わん。ただ1つだけ伝えておきたい」


 暗いせいでシェンの声しか聞こえなかったが、シェンが俺の近くまで来たのが分かった。俺は洞窟から一番外に近いところで寝ていたから俺のところはうっすらと月明かりで明るい。


 シェンが俺の横に座る。どうしたんだろ?何か月明かりの下ってムードあるよな。


「その…何だ。我は正直怖かった」

「何がだ?」

「我が再びここに帰ってきた時にもしかしたら眷属たちに冷たい目で見られるのではないか…と」

「お前が誰にも言わないまま突如姿を消したからか?」

「そうじゃ。しかし誰も何も言わなかった。我がいなくなったことさえ知らないから、というのが大きいのじゃろうがな」


 そりゃそうだろう。今シェンがいなくなって戻ってきたのを知っているのは赤とおそらく赤が相談しているであろうレインボードラゴンだけだ。


「結局何が言いたいんだ?」

「あ、そうじゃの。我がマスターに伝えたいのはたった1つじゃ…」

「ん?」


 月明かりだけだからはっきりとは見えないけどシェンが泣いてるような気がする。声が微かに震えている。


「…ありがとう」

「…ああ。こちらこそ。シェンがいるだけで毎日安心できた。正直ミラとシエラはどこか危なっかしいところがあったからな。でもシェンという保護者的存在がいてくれたおかげで2人はそんなに無茶な行動はとらなかったと思う。俺も安心できたよ」


 実際シェンがいないところではあの2人はかなり無茶をする。例えば俺がブレイブソードで死んだときにシエラが命を削ってまでブレイブソードを壊そうとしたりしたしな。ミラだって目を離したすきにどっかに行こうとしたことだって何回もあった。でもそんな時は大体シェンがいた。シエラの時はいなかったけど、ミラがどこかに行こうとする前にまずシェンが止めていた。だから俺も安心して旅が出来た。


「そうか…我は使い魔として役に立てていたのだな」

「違う」

「…え?」

「お前は使い魔としてではなく、俺たちの仲間…いや、1人の家族として活躍してくれていたよ」


 いつもシェンは自分の事を使い魔として見たがる。俺は何回も使い魔じゃなくて仲間だと言ってきたんだがな。シェンだって俺の使い魔になるのは本望のはずじゃないと思う。でも多分俺を思ってあえて自分を下にして言ってくれているんだと思う。


「うう…マスター」

「ん?どうした!?」


 シェンは俺に抱きついてきた。引き剥がすわけにもいかない。シェンが俺の胸の中で泣いているのが聞こえるから。


「どうしたんだ?お前らしくもないぞ?」

「うう…済まないマスター。今日ぐらいは甘えさせてくれ」


 シェンのこういう所は見たことが無い。俺がトラブルばっかり起こしてた時も泣いてはいたがそれほど感情が大きく揺れてなかった。でも今は何か子供みたいな雰囲気だ。


「うん。シェンの気持ちは分かった。俺の胸で良ければいくらでも泣いてくれ」

「…済まない」


 その後どれぐらいだろう。30分ぐらいシェンは俺の胸の中で泣き続けた。声を上げるのではなく、ラプトルやミラ達を起こさないようにひっそりと泣いていた。洞窟にはシェンの鼻をすする音だけが響いていた。

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