第28話 王会議
「今回の王会議の司会進行は儂が務めよう」
縦に置かれたテーブルに座っていたディランの爺さんが話す。
今現在この王会議室にいるのは、俺、ミラ、シェン、シエラ、ディランのじいさん、バイオレットの6人の王だ。3人ずつ並んで座って向かい合うような形になっている。
この6人の中で、王会議に出席したことのある者はディランのじいさんしかいないので司会進行は経験者がやることになった。
「まずは王会議についてのルールを説明させてもらう。
1つ、王会議中は他の王を名前ではなく、王の名前で呼ぶこと。
2つ、王会議にて出された意見や提案は多数決で決める。
3つ、王会議中に争い事が起きた場合、争い事に関係の無い者は首を突っ込まない。
この辺りが大まかなルールじゃが、何か質問のある者は?」
質問は無いようだ。いや、あっても長年の王会議の中で決まられたルールなんだから異論はあっても言えないだろ。
「それではこれより王会議を始める!まず最初に各王が治める土地について話し合う。王は自分の治めたい土地を申請してくれ。
では儂から。儂は今まで通りアレンの冒険者ギルドだけでよい」
「じゃあ次は私ね。私は(ちょっと待った。)…何?」
次にバイオレットが言おうとしたところで待ったをかける。
「話を遮って悪いな悪魔王。土地について話し合う前に1つ提案がある。いいか?魔導王」
「なんじゃ?魔王」
「俺は十王にこの城を王城として、剣王、竜王、英雄王の4王で連合国を作ることを申請する」
俺が申請したもの、それは魔大陸初となる国の開国の話だ。
いきなり自分の王の名前を出されたミラ達は一瞬困惑しているが、すぐにこの前に俺が言っていた事だと思い出し、冷静になった。ディランのじいさんも表情1つ変えることなく話を進めている。
「なるほど、土地決めの前に提案することによって国の領土を広げられると考えたわけか。反対の者は挙手を!」
誰も手が上がらない。ミラ達はまだしもディランの爺さんたちも俺の性格は知っているから、国を開いても問題ないだろうと判断したんだろう。この中で俺の事を知らないやつが聞いたら国を作って世界征服でもするのか!?ってなっただろうな。俺が魔王だから。
「多数決により十王は魔王ソーマの新国設立を認める!さて…魔王よ、国を作るのはいいんじゃが、国の名前や住む住民、内政などの話はどうするんじゃ?」
「国の名前はおいおい決めるが、住民や内政の担当者の確保は出来てる。住民はまだ目途を付けただけだけど」
俺は国を作っても冒険者をやめる気は無いから、内政に関しては4神に任せようと考えている。住民に関しても奴隷を解放してここに住まわせるつもりだ。嫌だっていうならどこかに送ってってあげるけどさ。
ミラ達は住民の事は知っているが、内政担当者の話は聞いていないというか俺が今さっき決めたから当然頭を傾げている。
「魔王さん。内政の担当者って誰なんですか?というか私たちじゃないんですか?」
「ああ、俺たちは冒険者としての仕事で忙しいからな。もう担当者は見つけてある。誰かはここでは言わないけども」
4神に任せるにしてもあいつらで出来んのか心配になってきたな。オニマルとマサムネは出来そうだけど、ユウキは重度の人見知りだし、ユカリは何か俺目線の内政をしそうだし…超不安だわー。
「そうか…もう決まっておるなら儂は意見は無い。悪魔王はどうじゃ?」
「私も特にないわ。魔王の提案も通ったことだし、土地決めの話に戻りましょ。私は基本的に悪魔界を治めるわ」
バイオレットは今回の悪魔王だから、バイオレットが責任を以って悪魔界を管理しなければならないんだと。
悪魔界というのはバイオレットの様な吸血鬼などの悪魔が住まう世界の事で、星で例えると、この世界が惑星で、悪魔界や魔獣界などが衛星にあたるといえる。
他にも妖精界などがあるが、妖精界と悪魔界はこの世界から行くことのできる世界らしい。魔獣界に王がいないのは、魔獣界側が王になるのを却下したためだと4神から聞いた。
悪魔族が悪魔界、妖精族が妖精界に行くのはそれほど難しくはないが、人間などのこの世界の種族が行くとなると難しくなるそうだ。そう簡単にポンポン人間たちが悪魔界とかに来たら戦争になるわな。
バイオレットの意見を聞いたところで、ディランのじいさんは俺に話をふってくる。
「悪魔王の意見は分かった。それで魔王よ。お主はどの辺りを治めるつもりじゃ?場合によっては戦争になるほど大切な事じゃ。まじめな意見が聞きたい」
どこを治める?決めてなかったな…。まあ適当でいいか。
「あー俺は別に国周辺と竜種が住んでいる島周辺の管理だけでいいよ。そうだな…これから国を大きくすることも考慮すると、大体この城を囲むようにある山の中だけでいいってところか?それだと大体半径20kmぐらいかな?他の都市に触れない場所だったらどれぐらいの大きさでもいいんだが、そんなに大きな国にする予定は無いな。
竜種の島については竜王を使い魔にしたせいで、管理権が俺にあるみたいだけど、俺はいろんなことは竜王に任せるつもりだ。その辺のめんどくさい事はあとで考えるよ。俺だけの意見だから剣王たちにも聞いてからだな。最終決定は。どうだ?そこんところ」
正直その辺は興味無い。俺にとっては土地の広さよりもどちらかというと国民の安全や生活面に力を入れたいから、国土は狭くても別に構わない。でもいい感じに魔王城を中心にして周りは盆地みたいに山に囲まれてるからその地形を利用させてもらえればいいな、ぐらいの考えだ。
ミラたちも大切な事なので、十分考えている。最初に口を開いたのはシェンだ。
「そうじゃな…我としてはそんなにこの国の国土は広くなくても良いと考えておる。実際の執務などは我らや魔王が決めた者がやるとはいえ、魔王が竜種の島の管理をする以上国土を広くし過ぎると手が回らん可能性のあるからのう」
やはりシェンには竜族の管理があるため、国土はそれほど大きくないほうがいいみたいだ。ただ今のシェンにはわざわざ竜族の島に行って管理する気は無いらしい、今度俺達と一緒に竜族の島に行ったときに誰か他の竜執務やらなにやらを全部丸投げするつもりでいるんだと。今シェンの言っていることは半分本当で半分嘘だな。
「私は魔王さん達と作る国ならどの大きさでもいいと思っています。でも、大きすぎて手が回らず、国民のみなさんを困らせたくはありません。ですので魔王さんの言っていた山から中の土地を管理するのが一番良いと思います」
「…私も同じ」
ミラは国民の事を第一に考えていた。ミラ自身魔大陸にいるから国という物を見たことが無いらしい。だからこそ、国の事は俺が言っていた内政をする人に任せ、自分は国民のために動こうと考えていると思う。
一番最後になってしまったシエラもミラと同じような事を考えているらしい。
シエラは俺に助けられなければ奴隷になっていたので、既に奴隷になってしまった人を助けたい、という気持ちが強いのだろうな。
3人の意見を聞いていた俺は、最終的に自分の意見にまとまってくれて良かった。と安堵した。
「3人の意見は聞いた。俺の意見と同じだったようで良かった。それで一番大事な住民の確保の話だが、魔導王に知っている情報を教えてもらいたい」
「分かった。まず詳しい話を聞かせてくれ」
「ああ。まず最初に確保したい住民は奴隷だ。それも身柄は確保されているが、奴隷になっていない人だ。これでなんとなく分かったとは思うが、俺は奴隷を買い、自分の所有物にしたところで解放する。それでこの国に住みたいものは住まわせるし、住みたくない者は他の街に行けばいい。そのために必要な道具は渡すし、何なら俺が届けてもいいと思ってる。それでアレンには奴隷市場というものがあるらしいな?」
俺自身、奴隷市場があるのは知っているが、アレンについてからそういう話は聞かなかった。だからアレンに奴隷市場があるのか不安だった。アレンに無くても他の街にはあるかもしれないけど、なるべく知り合いで尚且つそこそこ権力のある者に手伝ってもらった方が効率がいいからな。普通に考えて知り合いにギルドマスターが居たらそこを頼るよな。
「あるとも。週に一度商店区の裏路地で開催されるぞ。儂ら冒険者ギルドの者は関与しておらん。じゃが、脱退する者のほとんどは地上げ屋という借金を抱えた者を捕らえたりする仕事についているそうじゃ」
あ、ほんと?いやまて。そりゃそうか。だってシエラの時地上げ屋がいたって事は奴隷がいるって事だもんな。アレンで捕まえて奴隷市場が無かったら違う街に送んなきゃいけないのか。忘れてた。
「その奴隷市場は次いつ開催されるんだ?」
この奴隷市場の開催日時によってはシェンの故郷の竜の島より先に行かなければならなくなる。俺としては両方優先したいけどどっち?って聞かれたら奴隷市場だな。奴隷市場は奴隷になるかならないかの人の人生がかかってるから。
「確か…明日のはずじゃ」
だがディランから返ってきた返事は俺としては良くない返事だった。まじですか…確定で竜の島よりも先にやることになったわ。
「そうか…明日か…すまない竜王。竜の島の件は奴隷市場の後でもいいか?もしかしたらだいぶ後になってしまうかもしれない」
「む?我は別に構わんぞ」
以外にもシェンは許してくれた。後は俺達が島に行くまでの間、島から抜け出す竜がいないことを祈るだけだ。いてもそいつは掟を破ったから殺しても問題ないらしい。竜の島にいる竜たちもそれを止めるだとかしないんだと。大人になったんだから自分の道は自分で決めろ、という事らしい。おっと、だいぶ話がずれた。
「済まない。それで住民の話は置いといて前の話に戻るが、俺はさっきも言った通り山脈から内側の地域を国土にする。それで新しい国の国王として、魔王、竜王、剣王、英雄王の4王で作るつもりだ。既に4王全員の意見としては俺が王になって、他の3王は王の一個下の立場に就くと言っているんだが、悪魔王と魔導王はどう思う?ちなみにこの城に来た時に見たと思うけど玉座が一つしかなかったのはそのため」
俺としては、連合王国を作る時には4王全員が同じ立場に立ってほしかったのだが、この世界の国王は1人しかいてはいけないらしい。前世でも総理大臣とか大統領とか国の最高責任者はだいたい1人しかいなかったけど。
「私は魔王だけが王になるのはいいことだと思うわ。もし4人王がいたら意見が対立したときにどうしようもないもの」
「儂も魔王が王でいいと思う。悪魔王の言う通り4人じゃと意見がまとまらない可能性が出てくるからの」
ディランも考えていることは同じようだ。意見がまとまるのは良い事だな。面倒くさくない。
「そうか…みんながそう言うならそうした方がいいんだろうな。じゃあ土地の管理は4王でやって国の王は俺がやるよ」
俺の宣言にみんなが拍手を送ってくれる。これから頑張れという意味や、よろしくというたくさんの意味が込められた拍手。嬉しいというかただ恥ずかしい。よし話を戻す。
「魔導王、これで土地決めが終わった訳だがもう王会議は終わりか?」
「そうじゃな。王会議は終わりじゃが、これから軽い雑談が残っておる…と言いたいところじゃが儂らも色々と忙しいからのう。悪魔王が良ければこれで解散にせんか?」
雑談自体は昨日の夕食の時にしたのでみんな大体話しただろう。
俺ら4王は明日の奴隷市場に、ディランの爺さんも放り出してきたギルドの仕事が残っているらしく出来るだけ早く王会議を終了したいらしい。なんだ、意外とちゃんとしてた。俺は4神の事で頭がいっぱいだったが。
「別に構わないわよ。私も悪魔界で色々とやることがあるしね」
バイオレットもやることがあるようで、結局王会議はこれで終了になった。俺達はディランの爺さんとバイオレットを城壁の外で見送る。
「あのさ…これから1年に1回でいいからさ、この6人の王であんなかたっ苦しい王の名前じゃなくて本当の名前で雑談会でもやらないか?」
俺が言っているのは簡単に言えば今回の王会議のメンバーで雑談だけの集まりをしたい、という事だ。
「儂は別に構わんが、バイオレット君はどうするんじゃ?悪魔界から来るのはさすがに骨が折れるじゃろう」
「私は別にいいわ。その代り、昨日のあれもらってもいいかしら?」
「あれ」というのは昨日バイオレットが酔ったときに飲んだ俺の血の事だろう。舌なめずりしているからほぼ確定だ。俺の血は魔力が濃いらしいので、ヴァンパイアにとっては最高のご馳走なんだとさ。俺は何のことか分かっていたが、ミラたちはジト目で俺を見ている。始まった…こいつらのとてつもない嫉妬。
「はぁ…いいぜ。俺が死なない程度ならいくらでもくれてやるよ。じゃあ場所はここで、来年の今日って事で。それまでに会うかもしれないが、そのときはお互い助け合おうな」
「もちろんじゃ。達者でな」
「ええ、分かってるわ。ソーマ君たちも健康には気を付けてね」
「ああ、じゃあな」
また会う事を約束した2人は、ディランの爺さんはアレンの方向へ、バイオレットは迷宮の方向へと歩いて行った。




