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第24話 王の集結

 一通り見たところで中庭に出る。南西側の中庭に噴水や長椅子などを設置して軽い休憩場所を作る。そこでくつろぎながらこれからの事について話し合う。


「確かさ、今日が12月30日だから明日王会議やるんでしょ?それでさ、もし王会議が終わった後どうするかなって考えた時思いついたんだけど…シェンの故郷に行こうと思う」

「我の故郷というと世界の中心の島じゃな?」

「だめか?」

「いや、大丈夫じゃと思うぞ?我が突然いなくなって今頃大騒ぎになっとるかもしれん」

「島から出たりしないの?」

「それは我が約束として決めてあるから我がいなくなっても探しに他の島にはいかんはずじゃ」


 ん?という事は約束を決めた竜王自らが約束を強制的に破らせたって事か。悪い事をしたな。


「ここからシェンの竜化で行ったとしてどれぐらいかかる?」

「そうじゃのお。ここからアレンまでが1時間ぐらいじゃったから半日もあればつくかの?」


 この世界は地球とほとんど同じくらいの面積があるので半分を半日で行けるのはかなり速い計算になる。だが俺にはもう一つ疑問があった。


「そもそもなんだけどさ、この世界の竜種ってみんなシェンみたいに喋れんの?」


 俺はいつの間に勝手に竜種の長になってしまったが、出来れば仲良くしたい。そのためにもまず会話ができない事には何も始まらないよな。


「全てが出来るわけではないぞ?出来るのは上位種から上の位の竜のみじゃな。他はまだ経験が浅すぎておそらく喋れん。喋れたとしても半分ぐらいしか聴き取れんじゃろうがの」

「上位種から上が喋れるなら大丈夫だ」

「ソーマさん、そもそも竜の島になんで行く必要があるんですか?」


 ミラだけでなくシエラも不思議そうだ。2人は俺が竜種を支配してどうするとか考えているのだろうが本当はそんなことはない。


「理由は2つある。1つ目がシェンの失踪による竜種の暴走を防ぐため。これはさっきシェンが約束があるから大丈夫って言ってたけど、絶対守ってくれるとは限らない。もし仮に一体でも脱走して街を滅ぼしたなんてことになったらそれは俺のせいだからな。なるべくそんなことを起こさないためにも早めに行きたいのが1つ。

 2つ目が単純にどんな竜がいるのかが見たいから。すべてがシェンのような竜の姿をしているのか?それともワイバーンの様な飛竜から、飛べない竜もいるのかとか色々知りたいから。それならシェンに聞けばいいと思うかもしれないが、俺は自分の目で見て確かめたい。

 2つ目は完全にわがままだがそんな感じだ。納得してもらえたか?」


 俺はこの世界についてすごく興味を持っている。元々小説やゲームをこよなく愛していたから竜がいて魔法が使える世界は夢といっても過言ではない程すばらしい場所だ。だからこそシェンに聞けば分かる竜の種類についてもわざわざ自分から行って確かめたいと思った。


「分かりました。確かに竜が脱走しないとは限りませんもんね」

「そうじゃな。万が一に備えておくのはいい事じゃ」

「…王会議が終わったら行こう」

「みんな俺のわがままに付き合ってくれてありがとな。…さて、まずは王会議を終わらせなきゃな。多分もう少しで「瞬光」の誰かが来ると思う。城壁の外でお出迎えするとするか」


 俺たちは中庭から出て、城壁の外に出る。城壁周辺に魔物がいないことはすでに分かっている事なので外に出ても問題ない。


 外に出たところで俺はこれからのこの城の発展のさせ方について相談する。


「ちょっとみんな聞いてくれるか?」

「どうしました?」

「少しこの城の発展のさせ方について相談しておこうと思ってな」

「それは将来国として発展させて、マスターが国王になったときの話か?」

「国王になるつもりなんてまだ無いが、そうだな…街として発展させる気ではいる」

「…それで、ソーマの相談って?」

「ああ、まずは街づくりで必要なのは家や敷地なんだが、家は俺らが使っているキッチンや風呂の大きさを小さくして一軒家程度の大きさにしたものを使う。新しく作らなきゃいけないが、〈万物創造〉で同じ物なら量産が出来るようになったから数は大丈夫だ。土地もこの辺りは平らな草原が広がっているから大丈夫。それで一番の問題が……」

「…誰が住むか、ですね?」


 俺の溜めに察したミラが反応してくれた。やっぱこういう所で察してくれると助かるな。


「そうだ。住む場所が出来てもそこに住む人がいなければ何も始まらない。ただ住むやつが欲しいならその辺の人を攫ってくればいい」

「じゃがそんなことをすれば魔王の評価がまた下がる、という事じゃな」


 魔王としての力もある以上、俺が人を攫うのは簡単だ。だがもちろんそんなことをすれば魔王の評価は下がり、見ただけで攫われると勘違いするような輩が出てくるだろうし、俺自身もそんな卑怯な手で人手を集めたくはない。


「そこなんだよ。魔王としての評価が下がらずに手っ取り早く住む人を集める方法。今までないかと探していた。あったよ、意外と簡単だった。俺がこの世界の住人じゃないから頭の中から外れていただけだった。本当はやりたくはないんだがな…」

「それって?」

「奴隷を使う。いや、奴隷というのは間違いだな。実際には買うのは奴隷だが、買った後その人を解放する。それでここに住むのも良し、ここに住まないでどこか他の街に移動するのもあり。その時は必要最低限の装備とアイテムを用意する。この世界には奴隷市場という物があるみたいだしな。どれぐらいの人数を確保できるか分からないが、今ある金で出来るだけの人を救ってあげたい」


 この世界における奴隷というのは主に街の人気のないところで行われる奴隷市場という所から入手できる。そして買った奴隷は買った相手の奴隷として一生働き続けるというのが常識である。そのため人は奴隷にならないように必死に働いているのだ。


 だが異世界人である俺にそんな常識は通用しない。俺は人が人を絶対権力や身分の差で従えるのは違うと思っている。だからこそ奴隷を解放してやり、さらに住処を確保することで奴隷を物としてしか扱わないような輩から守ろうと考えている。


 奴隷は一生買った人の物。というのが常識になっているミラ達3人からすればそれはあり得ない話だろうが既に奴隷寸前だったシエラを助け出したことからそれほど驚きは無い。


「計画は理解した。じゃが、マスターの力で出来るのか?」

「さあな。金はあるから簡単にいくかもしれないし、難しいかもしれない。それについて話そうと思ってたんだが…「瞬光」が来たみたいだから詳しい事は王会議で説明する。…それと魔導王もいるのか…」


 指を指した先には7つの人影がこちらに向かってくるのが見えた。そして俺たちの近くに来るとやはり「瞬光」と魔導王ディランだった。


「おい、じいさん。なんであんたが今ここにいるんだ?俺は明日来いと言ったんだが…」

「その辺はあまり気にせんでくれ。「瞬光」が呼ばれたと言う事は寝床があると言う事。それならば1人増えたところで変わらないじゃろう?…それにしてもこの城壁と城はどうしたんじゃ?」


「瞬光」がいるんだから自分もいても何の問題もないだろ、とさも当たり前のように言う魔導王。十王の一角としての自覚は無いのだろうかこのじいさん。もう少し自分の体を大事にしろよ。というよりここからアレンまでかなりあるんだぞ?どうやってきたんだ。


「一応僕たちもとめたんだけど、聞かなくてね。ごめんソーマ君」

「ディランさんギルドマスターの仕事を放りだしてここに来たんですよ…すみませんでした」


 レックスさんとアイシャさんが謝罪してくる。どうやらこのじいさんはギルドマスターの仕事を放棄してまでここに来たらしい。他のメンバーも申し訳なさそうな顔をしている。なんて最低なじいさんだ。


「気にしないでくれ。別に来てもらって困る訳じゃないんだ。ただちょっと驚いただけ。この城は魔王城をぶっ壊して新しく作った。みんなには1階の部屋に寝てもらいたい。1人ずつ寝るか、何人かに分かれて寝るか相談してほしい。全員で寝れんことも無いと思うけど、部屋に置いてあるベッドの数には制限がある。すまない」


 話を聞いて、「瞬光」とディランのじいさんが相談し始める。話の内容的に迷宮で転移された組のシーナさんとソーナさん、ラッシュさんとアンドリューさん、レックスさんとアイシャさんの組で、ディランのじいさんは1人で寝るらしい。やっぱレックスさんとアイシャさんは兄妹だから同じ部屋か。仲がいいんだな。


「話の内容から寝る組は分かったからその数でベッドを置いておくから適当な部屋で寝てほしい。あ、「瞬光」のみんなはこれからどうするの?まだこの城しか建ててないけど、わざわざアレンから来る?俺としては城下町ができるまではこの城に住むことをおすすめするけど」


 一回一回アレンからここまで来るとなると普通に1日以上かかるだろう。ディランのじいさんに聞いたら魔法で来たんだとさ。本当に便利だな。


「そうさせてもらうよ。さすがにアレンからここまでは遠いからね」

「分かった。じゃあまずミラの作る飯を食べる前に風呂で体を洗ってきたらいい」

「風呂!?風呂があるのか!」


 以外にも風呂に一番反応したのはラッシュさんだった。他のみんなも風呂という言葉は聞いたことがあるようだが実際はどんなものか知らないらしい。


「お!風呂を知ってるのか?」

「ああ!一回だけ入ったことがある。あれはすげぇぜ!貴重な水に体を入れるなんてよ!まさに貴族しかできない事だが…出来るのか?」

「そうか…この世界の貴族でも水風呂が限界だったな。悪いが俺んとこの風呂はその貴族以上だと思ってもらおう。なんせ水じゃなくてお湯だからな」


 少し残念だな。めっちゃはしゃいでたからお湯かと思ったけどこの世界では水に疲れる事だけでも贅沢なんだっけか。


「「「「「「お湯!?」」」」」」

「なるほど…ソーマ君は既にお湯の作り方までマスターしておったか。儂にも習得に数十年はかかった合成魔法を」


 この世界のお湯というものはまさに幻の水といってもいい程保存が難しいのだ。一般人のお湯の作り方は火を起こして作るか、火の魔石(魔物が落とす魔石に火の魔力を溜めた物)を使って作るかの2択しかない。一流の冒険者になれば稀に火と水の魔法でお湯のようなものを作りだせるものもいるが、完全なお湯にするためにはディランのように何十年と努力しなければならない程お湯は貴重であり、だいたいの人が一生に一度みれれば運が良いといえる、とまたまたミラペディアの説明があった。


 そんなお湯を体を洗うために使うというのだからこの世界の人からすれば贅沢の中の贅沢だと言えるだろう。


「え?合成魔法?そんなの使わなくてもお湯ぐらい誰でも作れるだろ?なあミラ?」

「いやーさすがにソーマさん以外の人は出来ないと思いますよ?」


 あれ?そうなの?どうやら「万物創造」を持っている俺からすれば当たり前に出来るお湯を作ることは、一般人からすればとてつもない努力の結晶らしい。


 日本人だからというのもあり、お湯を作ることの難しさをしらない俺は首を傾げる事しかできなかったけど何とか理解した。


「あ、俺が特別なのか。まあお湯の事はどうでもいいから早いとこ風呂に入って疲れを癒してくれ。」

「ソーマ君、その風呂は1人用かい?」

「多分30人は軽く入れるぐらいの大きさはあるぞ?それと男風呂と女風呂に分けてあるけどみんな仲良く入りたいならどっちかの風呂だけ使ってもいいぞ」

「いや!遠慮しておきます!」


 俺の冗談に真面目に答えるアイシャさん。彼女もまだ10代とはいえ年頃なので兄であるレックスさんに体を見せるのは恥ずかしいようだ。


「瞬光」とディランのじいさんに風呂の位置と入り方を教え、俺はここに残り、ミラたちは城の中を案内するように頼む。


「ソーマさんも来ないんですか?」


 もちろん何故俺も城に入らないのか疑問がわくだろう。


「俺はちょっと用事があるからな。先行っててくれ」

「だめじゃ。マスターの用事は高確率で危険な行動じゃ。我らがいないとまたマスターを失うハメになる」


 今までの経験上俺を1人にしておくことの危険さを十分知っているシェンは、引き下がらない。そこにディランが首を突っ込む。


「ソーマ君を1人にしてあげたらどうじゃ?今のソーマ君は決して危険な行動はとらんよ。儂が保証しよう」


 ナイスじいさん。まあじいさんも気づいてるから言ってくれたんだろうけどな。


「魔導王がそう言うなら…我は手を引こう」

「私もディランさんとソーマさんを信じます」

「…ソーマも気を付けてね」

「心配すんな」


 ディランの言葉により渋々城に入っていくミラ達と後をついていく「瞬光」とディラン。


「そろそろ出てきてくれてもいいぞ」

「バレてたのね。残念」


 突如何もないところから声が聞こえ、10歳ぐらいの少女が現れる。バイオレットだ。


「お前も来るのが早いんだよ」

「ダメかしら?さっきの話では泊まる場所はあるみたいだけれど?」

「あのな?ディランと「瞬光」にはお前のこと話してないから当日まで来てほしくなかったの。確かに泊まる場所はあるけど、泊めたら確実にバレるだろ?」


 俺としては、王会議当日までバイオレットの事は隠しておきたかった。別にバレて困ることは無いけどさすがに悪魔王まで知り合いなのは隠しておきたかった。


 だが、バイオレットはそんな俺の願いを耳も貸さずに自分の要件を伝える。


「私が早く来たのは今回の王会議の欠席者を伝えるためよ」

「欠席者?」

「ええ、会場場所が遠い場合や仕事などが忙しい時に欠席出来るわ。今回の欠席者は今この城にいる王と魔導王以外の全員。つまり、聖王、獣人王、亜人王、妖精王ね」

「俺の知らない王全員が欠席かよ」


 という事は今回の王会議は俺の知り合いだけで行われるみたいだ。ちなみに聖王と獣人王は国の管理、亜人王はめんどくさいから、妖精王は魔王が嫌いだから、という理由で欠席するらしい。半分は個人的な理由じゃねえか!王会議はそんなに大事じゃないのか?


「そうね。でも王会議の意見は多数決で決まるから知り合いが多いと有利だし、この前王会議の時に仮面をかぶった方が良いって言ったけど、そもそもこの世界のほとんどの人が聖王と魔王以外の十王の事を知らないし、王会議があることも知らないから私たちの素性が他の王に知られても何も困ることは無いから大丈夫だと思うわ」


 実は5人も王の知り合いがいる俺にとって王会議は非常に有利だ。なぜならとんでもない意見以外は俺を含め6人の王がいるため大体通るからだ。


「分かった。で、どこで今日を過ごすつもりでいるんだ?野宿ならテントぐらい貸すぞ?」

「じゃあ今日はあなたのベッドの中で寝させてもらうかしら?」


 何を急に言うのだろうかこいつ。俺をベッドから追い出すってか。


「…は?じゃあ俺はどこで寝んの?」

「そんなの私たち2人で同じベッドで寝るに決まってるじゃない」


 俺はバイオレットの超問題発言を理解できない。内容は理解しているのだが、中々呑み込めない。本当に何言ってんだ?頭おかしいのか?バッドか何かで一回頭を強く殴ってやった方がよさそうだ。


「いやいやいや!それはまずいだろ!」

「何がまずいの?」

「そりゃあ付き合ってもいない男と女が同じベッドで寝ることがだよ!」


 俺としてはミラたちと一緒に風呂に入ったことはどうなんだろう、と思ったが深く考えるのをやめた。ミラたちとバイオレットでは訳が違う。君たちは今までずっと一緒に過ごしてきた女性とつい先日あったばかりの女性に同じ扱いをするかね?しないだろ普通。


「そうね…でも別にいいんじゃない?」


 何が問題かが良く分からなそうにしているバイオレットを見て、本当にこの世界の女性は自分の体をなんだと思ってるんだ?と呆れざるをえない。


「別にお前がいいなら俺はいいや」


 こいつはダメだ。俺が折れなきゃずっと言ってくるタイプだ。俺が折れてあげるのが一番早そうだ。


 ただの話し合いだけで疲れてしまった俺とバイオレットはとりあえず城に行く事にした。 

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