第22話 新生カオス
部屋に帰ってきた時はちょうど昼過ぎだったので俺たちは急いで冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドにつくと「瞬光」のみんながいた。
一番先に俺たちに声をかけたのはもちろんレックスさんだった。
「もう帰ってきたのかい?お疲れさま。どうだった?」
「無事攻略してきた。楽勝だったね」
「そうかい、僕たちもちょうど君たちのランクについて話し合っていたところだから早く依頼を終わらせてこっちに来てくれないかな?」
「はい」
受付に行き依頼が終わったことを証明する最下層ボスの魔石を見せた。まさかEランクが攻略するとは思っていなかったようでビックリされたがちゃんと依頼達成になった。
ランクの更新と報酬の話に入ろうとした時に受付嬢の後ろから1人の男が出てきた。アレックスさんである。
「君たち久しぶりだな。今ちょうどランクと報酬についての話をしているところだ。ちょっと来てもらえるか?」
「お久しぶりです、アレックスさん。分かりました。案内お願いします」
アレックスさんに案内されついたのは“ギルドマスター室”と書かれた部屋だった。中に入るとギルドマスターと思わしきおじいさんとさっきロビーにいた「瞬光」のメンバー全員がいた。
「ギルドマスター、連れてきました」
「そうか、入ってくれ」
案内されるがままにギルドマスター室に入り、ギルドマスターの指示でソファに腰掛ける。するとギルドマスターが自己紹介をしてきた。
「まずは初めましてかの?儂の名前は“ディラン”じゃ。お主らの事は「瞬光」のみんなとアレックスからよく聞いておるから自己紹介はせんでよいし、敬語も使わんでよい」
「はあ。それでギルドマスターが俺たちに何の用で?」
「分かっておろう。お主らの活躍とランクの件じゃよ。お主らの活躍は聞いておる。アレックスとの冒険者ギルドの入団試験に1発合格、更にSランク冒険者「瞬光」が13層で止まっておった迷宮の制覇及び転移トラップに掛かった「瞬光」の救助。入団から数日でここまでの功績を上げた者はいない」
「そりゃどうも」
「それで、じゃ。これからはちと真面目な話になるからアレックスは退室してもらえるかの?」
「分かったぜ」
アレックスさんが部屋から出て行くと、ディランの爺さんの体から微量ではあるが闘気を放つのが見えた。一般人から見れば迫力があり、怯むだろうがケンタウロスと一瞬ではあるが俺の闘気を受けたんだ。「瞬光」はまだしも、ミラ達からすれば恐れるに足らない闘気だろう。
「そろそろ本題に入る。「カオス」に言いたい要件は3つ。Sランクへの昇格と「瞬光」の要望通り大規模クラン「カオス」の立ち上げとそれによる「瞬光」の「カオス」クランへの傘下入りの許可の3つじゃ」
「「「「…は?」」」」
俺たちは同時に声を上げ、固まる。
Sランクは分かるよ?きっと「瞬光」とアレックスさんが進言してくれたんだろう。でもクランの立ち上げって何?しかも「瞬光」も入るの?
「話の意図が分からない。Sランクの昇格は分かる。だがクランの立ち上げとそれに「瞬光」が傘下に入ることが分からん」
俺の疑問に答えたのはレックスさんだった。
「それは僕らが要望したんだ。ソーマ君たちは強い。今回の迷宮攻略で思い知らされたよ。僕たちは冒険者の中でも最強だと思ってたし、そうだと言ってくれる冒険者も多かった。でも違うと、それは勘違いだと教えてくれたのはソーマ君たちだ。だから身勝手かもしれないけどソーマ君たちの下で動いて少しでも強さの秘密を発見したいんだ。どうかな?僕たちの気持ちは伝わったかな?」
「瞬光」の気持ちは本当らしい。実際冒険者たちに「魔大陸の冒険者パーティの中で最強はどこだと思う?」と質問したら100人中98人程「瞬光」だと答えるほどの強さなんだとさ。だが今回は挑む迷宮が悪かった。
本来迷宮は出てもAランクの魔物が限界であり、数もそんなに多くない。だが吸血鬼の王の資格を持たない偽者が作った迷宮は、そんな常識を覆した特別中の特別だった。もうこのような強さの迷宮が出ることは可能性としてはほとんど無いのだが、それでも「瞬光」のプライドは簡単に壊れた。だからこそ強くなるために「カオス」の傘下に入ろうと考えたわけらしい。
「みんな同じ気持ちでいるなら俺はいいと思います。向上心は大事ですから。ミラ達はどう思う?」
「私は賛成です。アイシャさんたちといろんなことを話したいですしね」
「我も賛成かの」
「…私も異論はない」
「というわけで「カオス」はSランクの昇格を受け入れ、「カオス」クランの立ち上げ及び、Sランク冒険者パーティ「瞬光」クラン入隊を認める!」
俺が許可を出したことにより「瞬光」…いや新クラン「カオス」の「瞬光」のみんなは大喜びしている。クランを立ち上げたはいいが何をするってわけでもないからただの交流会みたいになりそうだけどな。
「…さて、「瞬光」も俺らの傘下に入ったところで、ミラ達はなんとなく気になっているであろう事の答え合わせと行こうぜじいさん…いや“魔導王”ディラン」
「「「「「「「「「魔導王ディラン!?」」」」」」」」」
そう、俺は何となくこのじいさんが魔導王であると分かっていた。ミラたちも違和感は感じていただろうが正体までは分からないだろう。そしてディランが俺の事を魔王だと知っていて要件を言ったのだとさっきの闘気で分かった。
「ほお…さすがにバレておったか中々やるのお、魔王ソーマよ。それと…この感じは竜王、英雄王、剣王…いや女性じゃから剣姫かの?それで?わしと剣を交えるかね?」
「ご名答。だが俺に交戦の意思が無いの分かっていってるだろ?なんで戦わねばならん」
「ほっほっほ。その通りじゃ。これを「瞬光」の前で言ってよかったのかね?わしは構わんが」
「もう先に言ってあるからその辺は大丈夫。1つ聞きたいんだけどさ、王会議が魔王城でやるって本当?」
「本当じゃ。今は12月の終わりじゃからあと数日で向かわなければいけないのう」
「やっぱ本当なのか。ちなみに王会議って何するの?」
「そうじゃのお、各王の治める土地決めと、軽い雑談かの。中の悪い王は雑談中に軽い戦いになっておったが今回は起こらなさそうじゃな」
治める土地とは各王が領土としている土地で聖王は聖王国、魔王は魔王城、竜王は世界の真ん中の島、など大体の治める土地が決められている。中にはどの王も治めていない土地などがあるが、それらの土地はお互いが不可侵にするか、資源を分け合ったりしている。城塞都市アレンなどの魔大陸の都市がそれにあたるらしい。
「いつも魔王と勇者が戦ってたけど今回は仲間だからだろ?」
「そうじゃ。しかし魔王になってから経っても1年じゃろう?それなのにわしの正体が分かったり、そこまで詳しいのはなぜじゃ?」
「その辺はお得意の魔法で解決できないのか?」
「いくら魔導王じゃからといってなんでもできるわけじゃ無いんじゃよ」
「知ってた。答えを言うならば俺の体の中に前魔王の精神がくっついてるからかな?だから前魔王の知ってることは大体俺も分かるってわけ」
前魔王が完全に死んでいないという俺の問題発言にディランは驚いている。
「なんと!前魔王が生きているのか!?十王の中で魔王の歴史史上最も優しいと言われた魔王がか!」
「そんなに高評価するほどの者とは思えなかったけどそうだ。そうそう確認し忘れてたけどギルドって何するの?」
「おお、そうじゃった。すっかり忘れておった。そうじゃな、特にすることは無いのう。あるとすればクランの傘下に入った者たちはクランマスターの奴隷のようなものじゃからどう扱おうと自由ということかの?それとクランの証となるエンブレムも作らなければいけないのう」
奴隷という表現よりお金のかからない働き手が増えたという方が正しそうだ。もちろん命に関わらない範囲でだが。それにしてもエンブレムとかまた面倒くさいな。王会議が終わったら少しづつ進めるか。
「そんなに大事な選択だったの?クランに入るって。ねぇアイシャ?」
俺の疑問にアイシャが恥ずかしそうにしながら答える。
「は、はい私たちの命を救ってもらったので私たちの命はソーマさんたちの物です」
「そうか…ならみんなのために住む場所とかも確保した方がいいかな?」
「そこら辺は大丈夫です。衣食住には今のところ困っていないので」
「そうか…じゃあクラン命令するわ。「1月1日までに暇な奴魔王城に集まって」」
「「「「「「はい!」」」」」」
王会議の手伝いをしてもらうために暇な奴だけでいいんだが、なんか全員が来そうな雰囲気が出ているのは気のせいだろうか?とか思いながらも魔導王と聞いて自分の世界に閉じこもっているミラたちにこっちの世界に戻ってきてもらう。
「おーい、3人とも、そろそろ帰るぞ。明日から魔王城の改築作業やら、今泊まってる宿に別れの挨拶やらをしなきゃいけないからな。じゃあ「瞬光」とディランの爺さん、俺らはそろそろ帰るから」
「いつでも暇なときに遊びに来ていいぞ。あと帰る前にしっかりとランク更新をしていくようにな」
「あいあい、じゃあまた今度」
俺たちはギルドマスター室から出てすぐに受付に行く。受付嬢にギルドカードを提示する。
「なんかギルドマスターからSランクになれるって聞いたんだけど」
「はい、ソーマ様、ミラ様、シェン様。シエラ様の4名を正式にSランク冒険者として認めるようギルドマスターから伝えられております」
ギルドカードを作ったときと同じ機械に乗せると青白い光に包まれたギルドカードは光が止んだ時、銀色のカードから金色のカードになっていた。ゴールドカードだぜ!別に何色でもいいんだけど。
「これで「カオス」はSランク冒険者パーティになりました。おめでとうございます。詳しい特典などはギルドカードの裏をご確認ください」
「ありがとう。じゃあ帰るわ」
そのまま転移で自室に帰ろうかと思ったがせっかくなので少し商店区で食べ物を買ってから帰った。
和み亭の部屋に着くと布団を敷いて寝っ転がる。
「ふー、疲れたー。久々の布団は気持ちいいなー」
「そうですねー。これは人をダメにしてしまいます」
「我は飯に行ってくる」
「私も」
「ならそろそろ行くか。ほらミラ行くぞ」
起き上がった俺は寝ているミラの手を引っ張り起こそうとしたところで一気に起こし頭の後ろに手を回し、口と口でキスをする。
「んん!?」
ご褒美なので1分ほどキスを続けているとミラが気絶した。どうやら精神が耐えられなかったようだ。自分から言っておいて情けない奴だな。俺は初めてだったんだぞ!
「ありゃ?おーいミラ大丈夫か?」
「…」
「こりゃダメだ。しばらく放っておくとして次はシェンだぞ」
「い、いや我は良い。さすがにミラが気絶しておるし…我も腹が減ったしの」
シェンが部屋から逃げ出そうとしたところをシエラが捕まえる。そこにすかさずキスをする。逃がすわけないだろ。ファーストキスが無くなった以上やらたい放題だぜ!相手の了承は必要だしいつでもどこでもやるわけじゃ無いが。
「シエラ!離せ!むぐっ!?」
中々耐えられるようで5分ぐらいたった頃ついに切り札を発動し、シェンの口の中へ舌を侵入させる。15ながらにして自分でも何やってるんだろ、と思ってしまった。
「んん!?んんーー!ん……」
さすがのシェンでもディープキスには耐えられなかったようだ。
シェンも気絶したところで残るはシエラのみ。
「さあシエラ!この少しづつ罰ゲームのようになっているキスもお前で最後だ」
「うん。最後だからいっぱい楽しもう」
「…お、おう」
シエラの言葉通り最後は普通にキスをして終わった。
ミラとシェンもシエラとのキスが終わったぐらいに目を覚ました。
「おはよう2人とも、どうだった?」
「どうだったって…何というか…嬉しかったのといきなりでビックリしたのとごっちゃになってよく分からなかったです」
「我のは罰ゲームの様な感じがしたがマスターとのキスは良かったぞ」
「なら良かった。そんじゃご飯に行きますか」
この後ご飯を食べ、寝たのだがその間ずっとミラとシェンがそわそわしていた理由は言うまでもなく俺とのキスが原因だろう。まあ俺が望んだわけじゃ無いがいい結果に終わったのではないだろうか?




