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第16話 ソーマの人騒がせ③

 霧が晴れるとソーマの体があった。だがその頭にはルシファーと同じ角が生えていた。その角を見てまさか…、と思う3人だったがその不安は現実になる。


「…あれ?失敗したかな?でも姿は戻ってるよね?」


 目を覚ましてそんなことを呟いたのは声はソーマだが口調、声のトーンからすぐにルシファーのものだと察しがついた。と同時にソーマが戻ってこれなかったという事実を叩きつけられたように3人とも膝から崩れ落ちる。


「そんな…ソーマさんですよね…ルシファー様の声を真似してるだけですよね…?」

「嘘だ…我は認めぬぞ…マスターー!」

「ソーマ。いるんでしょ?返事して?」


 そんな3人の心配を受けて少し申し訳なさそうにルシファーは謝る。


「…申し訳ない。本当に申し訳ない。今回は僕の不手際だった」

「…ソーマさんはどこですか?」

「おそらくまだ体の修復が終わっていない時に戻ったのだろう…ソーマ君は…もう…」


 ルシファーの考えを理解しているのにも関わらず認められないシェンはルシファーの胸倉をつかむ。


「貴様!マスターはどこだ…マスターを…我らのマスターを返せぇー!」


 シェンの体から真っ白だが先ほどよりどこか暗い殺気が立ち上る。怒りの頂点間際であるとともに竜化する寸前である。シエラもルシファーに向けて殺気を放ち、ミラは放心状態になっている。ルシファーは何を思ったのかシェンの手を振りほどきミラの元へと近よる。手を振りほどかれたシェンは無視されたと思い、激昂している。


「貴様!我を無視するか!」


 あとわずかで竜化してしまうシェンに聞きなれた声が独り言のようにしかし全員に聞こえる大きさで届く。


「ルシファー、そのくらいにしておいたらいいと思うぞ?シェンが竜化したら収めるのは少々骨が折れる」

「そう?僕としてはもう少し遊びたかったけどさすがにここで竜王に暴れられたら住民を無傷では守れない」

「分かってもらえたようで何より。それと…俺が精神の世界に居るときにずいぶんと喋ってくれようだな…どうやって仕返ししてやろうか…」

「ああ!ごめん。ちょっと口が滑ったんだ。でも君の事を嫌いにはなってないみたいだからいいじゃないか!それに僕とまた話がしたいって言ったのはミラなんだよ?ここで切り離したら意味がないじゃないか」

「そうか…ならしょうがない。今回は水に流そう」


 傍から見たらコントのように見えるが()()はいたって真面目だ。誰と誰が会話しているのに気が付いたようでシェンとシエラの殺気が静まっていく。


「マスター?マスターなのか?」

「ああ?そうだが…何かあったか?」

「…本当にソーマ?」

「だからそうだって言ってるだろ?それよりもミラ、そんなに悲しむなよ。俺は決していなくなったりはしない」


 いつもの聞きなれた声が聞こえてミラが頭をあげる。そこにはいつものように笑顔を見せるソーマの顔があり、安心したのか泣き崩れる。そしてそれにつられたようにシエラとシェンも泣き崩れてしまった。(シェンは泣き崩れたというよりは安心して膝をついた感じだ)


「うわー!ソーマさん!私、私心配したんですよ!?」

「我は危うく勘違いでマスターに手をかけるところじゃった」

「私も…危なかった」

「いつもこんな感じで心配かけさせてごめんな?いっつも泣いてたら疲れるだろうからもう眠ってくれ」


 ソーマは3人に魔王の力を使った睡眠魔法をかけて強制的に眠らせる。布団に寝かせる前にシェンにはもちろん薄着を着させてあげた。


 一段落したところでソーマがルシファーに聞く。


「なあ、どうやってこの状況説明したらいいと思う?」

「どうと言われてもそのまんまでいいんじゃない?あらかたの事はもう伝わってるだろうしね。それよりも僕はもう寝たいかな」

「そうか。じゃあそろそろ戻っていいぞ」

「分かったよ。お疲れさまー」


 するとソーマの頭にあった角が消えた。ソーマの頭にあった角はソーマの肉体にルシファーの精神も入っているというサインである。


 ルシファーが戻った後ソーマは再び裏庭に戻り、後片付けや2人に頼まれていた物を作った。


「さすがに今回ばかりは久々に一緒に寝るか」


 そしてまた部屋に戻り3人の寝ていない布団に潜る。だいぶ疲れていたようだ。ソーマの意識はすぐに落ちて行った…。


 ▼


 朝目が覚めるとまだ3人は寝ていた。


 起きるまで何かしようかと思ったのだがまだしっかりと事情を説明できていないので静かに起きるのを待つことにした。


 最初に起きたのはシエラだった。シエラは起きて俺が部屋にいることを確認すると泣きながら抱きついてきた。


「うお!?」

「…良かった。生きててくれてありがとう」

「…すまなかった。トラウマを解くためにやったんだが意外とややこしくなったようだな。苦労をかけた。それより本当にお前らは涙もろいな。俺が悪いんだけど」

「もう大丈夫…。ソーマが私を信じてくれるなら私のソーマを信じて剣を振るう」

「そうか。いきなりはまだ無理かもしれんが少しづつ治していこうな。それと色々説明しなきゃいけないことはあるが2人が起きるまでちょっと待っててくれ。それまでリミッターの調節でもしよう」

「うん」


 シエラの成長は著しく、何もしないでいるだけでも強くなるのだ。だから頻繁にリミッターの調整を行う必要がある。


 調整の結果俺は1つ200kg、シエラは100kgが今の限界というところだ。その重さで普段の半分まで抑えられるといったところだろうか。そこまで抑えても俺たちの強さが世界最強クラスなのは変わらないが。


 調整を終え、しばらく2人で雑談をしていると2人が起きた。ミラはシエラと同様俺を視認すると抱きついてきた。


「生きてる…ソーマさんが生きてる。うわー!夢じゃなかったー!」

「よく生きてておった、マスターよ。せかすようで申し訳ないとおもっておるが昨日の件について詳しい説明が欲しい」

「分かった。2人ともそんな力で抱きつかないでもらえるかな?骨が折れそうなんだけど…」


 ミラが慌てて抱きつくのを止めると、一応回復魔法を使って落ち着いたので昨日の事の詳しい説明を始める。


「どこまで知ってたっけ?確か俺が戻るところまでは分かってるな」

「はい。ですがあの角は何ですか!?あれはルシファー様の角じゃないですか」

「そうだよ。っていうか実際に見てもらう方が早いか」


 そう言うと目を閉じ、精神を集中させる。すると頭からルシファーの角が生えてきた…と思う。実際には生えてきた感覚なんて分からないから触らないと実感しないんだけど。


「ねぇソーマ君?僕しばらく寝たいって言わなかったっけ?」

「仕方ないだろ?説明し終わるまでもうちょい頑張ってくれ」


 1人で喋っているようだが3人には喋っているのが2人いて俺とルシファーだとすぐに分かったようだ。


「ルシファー様!?」

「やあミラ、おはよう。というか様つけて呼ぶのやめてもらっていいかな?」

「ですが…」

「君の本性は知ってるからソーマ君と同じ感じで気軽に話してくれるとうれしいな」

「…分かりました。それで、これはいったいどういう事ですか?」


 3人ともなんとなくわかっているが説明を受けないと納得できないのだろう。同じ肉体に2つの精神が共存するというこの世の理から外れるような状態があるなど。


「多分みんなの思ってる通りだ。精神を集中させることで精神の奥深くにいるルシファーの魂をこの体と結びつけるんだ。代償としてそれをしている間は角が生えるけどな」

「もう完全にこの世界の理から外れかねない行動だけどそもそもソーマ君はこっち世界の人じゃないからね。問題は無いと思う」

「いやいや…そういう問題じゃないと思うんじゃが…」

「…シェンに同意。大事なのはそれをしている場合何が出来て何が出来なくなるか」


 そこが大事なのだ。そこを確認しておかなければこの状態の時に緊急事態が起きた時の対処が遅れる可能性がある。だがそんな心配事をする必要はない。


「そうだな…出来ることは今やってるルシファーとの会話だな。体の所有権は俺にあるから完全にルシファーと話せるだけの機能だな。…いらない」

「ちょ、ソーマ君!?最後の方いらないとか聞こえたと思うんだけど!というか僕とのおしゃべり機能とか説明ひどくない?」

「そうだな。出来ることがもう1つあった。スキルの制限を解除してもらう時にわざわざ死ななくてもいいって事だな」


 ルシファーがずっと「酷くない!?合ってるんだけどさ…なんかこうもっと違う言い方で言って欲しかった」とか嘆いていたがそういうのは無視するに限る。


「という事はこれからはソーマさんが死ななくてもルシファーさんとまた話せるって事ですか?」

「そうだよ。これはソーマ君に感謝しなくちゃね。彼ずっと精神の部屋でどうやったらこれが出来るか考えてたらしいんだ。まったく人前では強がるのにみんなの事が本当にだいす…」


 ルシファーの言葉が途切れ、角が無くなる。強制的に精神を戻したのだ。まったく…ベラベラとお喋りな魔王だ。


「まったくあいつは喋り過ぎだな。眠たそうにしてたから寝させてやったぜ」

「ソーマさん、ルシファーさんはどこですか?」

「俺の精神の奥に帰ってもらった。だから角消えてるだろ?」


 俺は分からないから額を触るが角らしきものは無い。


「確かに消えておる。が、また呼び出せるのか?」

「出来るけどあいついきなりこっちの世界に来たから疲れてるんだって。だからしばらくは呼ばないつもりだ」

「なるほど理解した。それでじゃが…もし良ければ我らにもシエラに言った助言とやらを教えてはくれんだろうか?」


 俺はしばらく考える。溜め息を付き疲れたように装いながらシエラのトラウマとそれについての俺が死なない事と、勇者と魔王のしがらみが消えた事を話すことにした。


 2人は黙って聞いてくれていたが俺が死なないことを聞くと呆れたような顔で見ていた。


「という事はソーマさんは完全な不老不死を手に入れたわけですか…」

「本当に化け物じゃな…」

「あのーさらに不安にさせるようで申し訳ないが、みんなも不老不死なら手に入れられるぞ?」


 3人は何を言っているのか分からなかったようだ。首を傾げていて、頭には?マークが浮かんでいるように見える。


「…どういうこと?」

「なんて言ったらいいんだろうな。魔王のエクストラスキルに〈魔王の加護〉ってのがあってな。それはその言葉通り、魔王の加護を任意の対象に授けるってものなんだけど、俺がやろうと思ったら不老不死はもちろん今のステータスを数段上げることができるらしい。だから3人がいいのであれば加護を受けてもらいたい。…どうだろうか?」

「私はソーマに命を救ってもらった。だから私は一生ソーマの傍にいる。これから何があっても……だから加護を受ける」


 提案にいち早く答えたのはシエラだった。しかも相当本気らしい。それが2人にも伝わったようでやる気が溢れている。


「わ、私もソーマさんの傍に居させてください!私では満足至らない点もあると思いますがお願いします!加護を受けさせてください」

「我も一応寿命はあるのでな。使い魔である我がマスターよりも先に死ぬわけにはいかん。我も加護を受けさせてもらおう」

「そうか…みんなの気持ちは受け取った。じゃあ今のところは不老不死だけかけておく。必要に応じてステータス上昇とかはかけていくことにする。それでいいかな?」


 3人とも頷いたところで〈魔王の加護〉を発動し、3人にかける。すると3人の周りに黒や白など様々な色に変わる霧がまとわりつく。しばらくすると霧が晴れたが、3人はぐったりしている。


「…ソーマさん、なんか体が重いんですがどういうことですか…?」

「悪い。どうやらこのスキル、対象とリンクするために対象の魔力を何割か持っていくらしい。でもリンクしたことで俺の魔力を渡せるようになったから1人ずつ来て」


 渡す相手の持てる魔力の上限を超える量の魔力を渡すと渡された対象は魔力の取り込み過ぎで体調不良などを起こすのだが、3人とリンクしたことでそれぞれの保持できる魔力上限から今の残量魔力まで分かるようになっていた。それにより適切な量の魔力を渡すことが出来るようになったのだ。


 早速順番に適量の魔力を渡す。


「なんだか力が溢れてきます!ソーマさんの魔力はすごいですね!」

「うむ。マスターの魔力は濃度が濃くて非常にうまかったぞ」

「なんかいきなり元気になった」

「シエラはさっきの無茶も含めてほとんど魔力が回復してなかったからな。リンクの効果が弱くて結構魔力を消費したみたいだな。俺には関係ないが…」


 結構気に入ってもらえたようで良かった。


 そろそろ迷宮へ行く馬車が来る時間だ。3人に注意すべきことを伝える。


「これから冒険区の門へ転移するけど注意することがいくつかある。まず服装だけど鎧は迷宮についてから装備する事。竜の装備はあまり周囲に晒していい防具じゃないからな。

 次は今回同行する先輩冒険者には最低限敬う気持ちを持つこと。俺らがEランクだからって見下すパーティがいてもその時は我慢しろ。その場合は迷宮に入って助けを求めても助けるかどうかは各員に任せる。逆に最初から優しく接してくれる先輩方には全力で対処しろ!

 最後に俺たちは他のパーティとはなるべく別行動をとる。これは俺らの実力があまり知られないためだ。何か質問はある?」


 するとミラとシェンが手を挙げた。


「あの、武器は装備してもいいんですか?」

「さすがに武器が無いと冒険者としての示しがつかないからな」

「分かりました」

「シェンはどうした?」

「我とミラが頼んだ物はいつ支給してくれるのだ?」

「その件だが…迷宮について別行動をとってから話す。でも作ってあるから安心してくれ」

「承知した」


 他に質問はなさそうなので〈ワープ〉の準備をする。


「よし!みんな行くぞ!」

「「「はい!(うむ。)(うん)」」」


 そして俺たちはそれぞれの武器に鎧を着るための服という軽装で待ち合わせ場所へと転移するのだった。

多分この辺でソーマの人騒がせシリーズは一旦終わります。後々また出てくるかもしれませんがそれはお楽しみということで!

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