仕組んだ策を片付けに
「よし、成功だ」
小声でハジェイトンははつぶやく。
「これであの近くにいるものは危険。あの小僧は封印符をもってはにいない。となればもう半ば事故のようなもの。あの呪符の布をとったということは事故というよりも一種の自殺か」
ぶつぶつと小声でつぶやく。
そもそも、ハジェイトンとしては、メルティウスは見ているだけでなぜかいらいらしてしまい、どうしても感情の制御ができないところがあったが、迷宮よりかのゴブリンを手に入れてからは一層それに拍車がかかっていた。
教師が生徒を殺す。
何をばかなことをと第三者からは思うだろうが、一個の人間としてどう思い定めるやそれが絶対とハジェイトンは数多に画策して今の答えに至った。
要は自分が手をくださないようにすればいい。
でなくば、合法的な事故となれば良い、と。
さて、今、目の前にはキングになりそうなロードがいる。
今まで出てきたものの比ではないほどのまものである。
とりあえず、メルティウスが死んだあとの始末については生徒の封印ではまず危ないのでここで教師が登場。
というよりもハジェイトンと含む教師陣が登場し、圧倒的な火力でもってあの恐ろしき魔物を屠る。
もし、メルティウスが虫の息でも、ゴブリンとともに誤爆で死することができる。
ハジェイトンの頭には完璧と映るものであった。
生徒の安全は完備されなければならないが至近でいるものはしょうがない。守れるものを守るのみなのだから。
そして、さぁ、ゴブリンどもに惨殺されろ、わざわざ制御のきかないような魔物を選んだのだからと期待をこめて見つめ続けた・・・・・・
が
「な、なぜだ?!」
その次に起こる展開に目を見張ってしまった。
ゴブリンロードは手にいつの間に持ったか錫杖をもち、メルティウスをそれで打ち付けるのかと思いきや、立たせて頭をなでるや、生徒に向き直ってまるで守るように威嚇し始めた。
瀕死になりつつあったゴブリンがそれに呼応するように吠え・・・・・
緑の体表が何やら黒く染まっていく。
そして・・・・・
「「ガアァァァァーーーー!!!」」
二匹のゴブリンが共鳴するように吠えたかと思いきや、黒くなったゴブリンが近くにいた生徒の三人をまとめて蹴り飛ばした。
ゴブリンロードはそれを魔法で援護する。
「くそ、これは」
魔物の異常行動に驚愕するも、思い直し、それならそれで激戦となるならそれはそれで誤爆としていけるとハジェイトンは想定外の事態を思い、大声で叫ぶ。
「みな、生徒を守れ!想定外の異常事態だ。教師陣は出るぞ」
もっとも、大きな非常事態というほどでもない。
毎年行われる新風祭でもこの演習に関して事故が全く起こらないということはなくもないが、無論起こることはある。
魔物の暴走や生徒の魔法の暴走。
いろいろあるもので、今回に関しては魔物の暴走ということでこういうときのために教師が補助でいるわけである。
年若い生徒でも充分戦えると示せれば、今度は現役魔法使いというものがいかに強力なものかを示す機会でもあったりする。
ハジェイトンの激に教師は答え、控えていた教師たちはめいめい生徒を下がらせて自分たちがゴブリンたちへと向かう。
その間もゴブリンはなぜかメルティウスを守るかのように行動し始めていた。
もっともその行動により、メルティウス自身がその場から動こうにも動けない状態になっていたが、それも好都合であった。
「さて、ゴブリンども、暴れるのもこれまでだ!」
ハジェイトンが叫ぶ。
まるで正義の味方のように。
だが、ちらと視線を転じたときについにまっと笑ってしまう。
「そう、これまでだ。炎の・・・・」
詠唱を移動しつつ行い、火矢を放ちながらへたりこみ様子をみるメルティウスへゴブリンを近づけるように攻撃を調整しはじめた。
無論、他の教師陣はこれ幸いと数人の攻撃班をのぞき支援を行う。
凄まじい、方向。
ゴブリンにあるまじき魔法。
そしておそらく進化したとおぼしきゴブリンの膂力。
確かにおそろしいものである。
地を砕き、光が舞い、怒号が散る。
しかし、多勢に無勢、ゴブリンは徐々に押されていった。
なにやらゴブリンロードが叫ぶ。
メルティウスも、何やら逃げようとしているがそれはこちらがうまい具合にそうはさせないよう魔法で地を攻撃。
よし、うまくいっている。
そして、一つの転機。
「ぐご・・・がぁぁ・・・・」
黒くなったゴブリンが近接に切り替えた教師の一人の刃にかかってついに倒れた。
これでゴブリンロードのみとなる。
確かに厄介な存在だが、10人を超える教師の集中砲火にあえばひとたまりもなかろう。
「おい、生徒をこれで逃せるのでは」、
というものもいるが、ゴブリンはメルティウスを相変わらず守るかのように動いている。
「あの魔物は何やら異常だ。もし野に放てば大変なことになる。苦渋の決断だが・・・・致し方あるまい」
大火力でもって屠る宣言を出す。
教師としてまずいやもしれないが、全員非情になり、牽制している教師を残し、全員攻撃魔法へと移行しはじめた。
そして、会場中がかたずを飲んで見守る中・・・・・
教師陣がひとつ大きく唱和した。
『滅びを!』
その瞬間会場中がまばゆい光に満ち、巨大な爆発がゴブリンロードを中心に巻き起こった。
無論、メルティウスも巻き込んでの形で。
やがて、煙は晴れ、まずそこに転がるゴブリンロードが現れる。
死んだかと思うものの、錫杖を握り締めつつ、未だ手足がぴくぴくと動いている。
そして、メルティウスはというと、何やら膜のようなもので守られてへたりこんだままである。
くそ、命冥加な。
おそらくあのゴブリンロードが守ったのか。あんな最下位者を。
馬鹿なことを。
そう思い、密かにあの膜に凄まじい煙に紛れて素早く解呪の魔法を叩き込む。
そして、それと同時にゴブリンロードにとどめを、メルティウスを巻き込むために爆発魔法を唱え、
「止めだ!」
一声小さく叫ぶや魔法を放ち、二人に到達する・・・・・
かに思えたが。
いきなり何者かの手に魔法の塊が払われた。
「なっ」
いつの間に現れたのか白い手が払う。
そして、一瞬で消え、煙が一気に払われた。
「何も・・・・の?」
煙が払われた瞬間、自分の魔法を阻止したものの姿を見る。
そして、目が点になった。
いや、ハジェイトンだけではなかった。
会場中がそのものに注視した。
白いローブをはためかせる青年。
男神のように美しい相貌。
それが凛々しく両手を腰にあてて毅然と胸を張って立っている。
だが、
「きゃあ!」
「え、ちょ」
「ねぇ、あれ」
「こら、見ちゃ」
その男、白ローブ以外何も来ていなかった。
全裸で教師陣に向かって、メルティウスたちの前に立ちはだかっていた。
「だ、だれ?」
そんな中一人メルティウスがつぶやく。
「おぅ、儂じゃよ」
ちょろっと後ろをむいてぐっと親指をあげてにかっと笑った。
「えっと、サン?」
きょとんとした顔で、メルティウスは全裸の青年を呆然と見ていた。
風になにやらぶらぶらしているしっぽ?も一緒に。
さて、あとは気楽に書くぞ。シリアスはお休みしよ




