決意
「ふぅ」
一息つく。
けっこう、いや、かなり訓練が身になっていたんだなと実感できる次第である。
今まで僕を馬鹿にしていたクラスメイトを複数相手取ってまともに相手できている。
魔力も同じくらいになっていて、それに加えて、ナイルナ先輩との対人戦用訓練がかなり効果がでている。
「な、なんで、訓練もしてねーのに、そんなに強くなってんだよ!」
一人のクラスメイトがわめく。
「そーよそーよ。なにかずるしてるんじゃないの?」
ずるって魔力強化しているそっちはどうなんだろ?
「別にずるしてないのに」
そう言いつつ、更に光球を放ち、それと同時にバレットを放つ。
バレットもはじめのそよ風のような攻撃から随分と力が跳ね上がっている。
今ならジャブ程度の力はあるようでまともにぶつかれば後ろへとはねる。
でも
「おい、援軍きたぞ」
「よっしゃかこめかこめ」
「なんで倒しきれないの?」
「魔道具?いい魔道具なんて聞いてないよ」
次々とプチゴブリンの群れを突破してきている生徒相手に戦わされているので、けっこう息が上がってきている。
だけど、けっこう踏ん張れる。
それというのも
「ガーー!」
「きゃあ!」
「うわっ、ほんとなんだこのゴブリン。捕獲係間違えて連れてきただろ?!」
思いのほか連れてこられたゴブリンが頑張ってくれている。
なんか普通のゴブリンとは何かが違う。
時折こっちと幕のほうをちらちらと見ているけど、なんか意志を感じる。
迷宮の魔物って意志なんかないってきいてるけど、どうなんだろ?
ともあれ、この調子なら無様な負け方はしなくて済みそう。
僕でもけっこう戦えるんだってしっかり思える。
「くそ、全員、こうなったら一斉射撃であいつを打て。ゴブリンが邪魔でしょうがない」
「おい、ガレット、それじゃ、同士打ちに」
「このままじゃ、どうにもならん。やれ!」
「あーもう、評価に響いても知らねぇぞ。お前の責任だからな」
「うるせー。女子もしっかり働け!」
「なによ。スケベ男のボスが」
「何まだ根に持ってやがる」
「高貴な私の下着を覗き見したんですのよ。あたり前でしょ」
「そーだそーだ。男子が特攻して、一斉射撃は女子でやるのは」
「賛成ー!」
「いやだ」「反対」「くそが」「女子に・・・いいかも」
「おい、変態がいるぞ」
わいわいがやがやと会話しながら戦ってきている。
向こうはまだ余裕があるか・・・・・
けっこう頑張っているけど如何せん、一人と一匹じゃどうにもならないか。
それにその一匹もゴブリンだし、頑張ってくれてはいるけど・・・・
サン、どこにいったんだよ。
もう、こうなったら、呪符の危険承知で幕をとる?
あの幕、全然動いてないけど・・・・・・触るとびりびりして幕を外せなかったけど・・・・・
いいよね。
なんか、向こう、面白半分で嬲っているような感じもあるし・・・・・
もう、いいよね。
危険そうだけど、
「うがー!」
「よっしゃ、ゴブリンが弱ってきたぞ。ナイフ持ちはかかれ!」
そういえば、魔物に対しては刃物も許可されているこの試合。
次々と、クラスメイトに刺されていくゴブリンは苦悶の表情を浮かべる。
だけど、それでもこっちをちらちらと見ては、前に出る。
なんだろ、どっちがどっちなのかわからなくなる光景である。
それでも会場の熱気は高まっている。
そうして思う。
あー、自分はやられ役なのかなと。
そう思えば思うほど、腹が立つよりも悲しくなってきた。
どんどん無視されたり、罵声を浴びせかけられたり、痛みにすら悶えたことも思い出してくる。
負の感情が止まらない。
もう一度、呪符の幕をみる。
もう、開けよう。
確か、進行においては勇者役の生徒があれをあけてすかさず封印呪で動きをとめて止めを指す。
その魔物の経験値が勇者役のMVPの賞品となるといった仕様だったっけ。
・・・・・すかさずということは間があれば?
ふと黒い考えが浮かんできた。
「おら!」
死角からケリが飛んできた。
まともにあたってぐらっとくる。
考えているうちにここまでこられたか。
・・・・・あー、もう、開けよう。
どうせ、僕は道化役っぽい役回りだけど、魔王役。魔王なら魔王らしく、毅然と、暴挙に出てやる!
バックステップで幕まで下がり。
そして・・・・・
「あ、おい!何やって」
「進行と違う!」
「あいつ、やけになったぞ」
クラスメイトが口々に言う。
まぁ、ね、制御できない魔物だろう。
けど、関係ない。
思いっきりやっちゃえ!
ばっと、幕をひっぺがした。
びりびりっと自分に電流が走るように鈍い痛みがくる。
勇者役はこれがないように仕掛けられているけど、自分にはそれはない。
でも、関係ない。
関係なんかないんだから。
そして、幕から出てきた魔物を凝視した。
「え?僕?」
そこにいたのは、僕と同じような装束をきた魔物であった。
緑と黒を混ぜたような肌。ごてごてした衣装。装飾品。
そして、赤い瞳には強い意志。
ぎろっとそれがこっちを見た。
それは、ゴブリン。
しかも先のゴブリンとは比べ物にならないゴブリンに見える。
「ゴブリン、キング?」
ぼそっと僕は呟いた。
次はキング?の話。




