檻の中
ボン ボン ボン
空に白い煙の花火が上がる。
そして今日限りは学園にも数多の人がごった返す日でもある。
教師陣とともにその使い魔も厳重な警備にあたっている。
それというのもこの国の王族も来るのでかなり厳重にせねばならないということである。
また一般客用の席の確保もあれば、それように空間を歪曲させ広げる作業もまた前日までに急ピッチで進められて今に至る。
毎年、この式祭はある意味、日が一定しないということでも定評のある式でもある。
極端な場合、使い魔を得た次の日に式祭をやるという暴挙ともとれることもあったそうだが、さすがにまずかったという反省とともに調整期間は最低でも一月は必要と結論付け、今に至るわけである。
あちらこちらでは商魂たくましく屋台もまであるし、一般的に娯楽の少ないこの世界ではこういう催し物は大々的に行う風習があった。
とくに一般客にとって『魔法』というものは馴染み薄いものであり、とりわけ実践的なものは特に伝聞としてしか知らないためにどんなものなのかより一層興味をかきたてるものでもあった。
それゆえの人の多さでもあった。
その中、危険な魔王種を倒すためと興奮が高まっている祭りの後半のトリでメルはどきまきしながら出番をまっていた。
今のメルは服装からしてとても派手な格好をしていた。
ゴブリンとはいえ、魔王種ゆえ、観客への見栄えも必要であるし、そのうえ、魔物への慣れも必要ということで、それ用の場所に彼はいるわけだったが・・・・・
今の彼は生徒用の観客席でなく、特別席といえば特別席だが、会場で何が行われているか全くうかがい知ることのできない、せいぜい賑やかな音が漏れ聞こえるだけのそんな場所にいた。
ぶっちゃけ、檻の中にいた。
鉄で作られた巨大な格子檻に、その中にはまた魔物の入った小型の檻があり、その中を漫然とぐるぐると彼は巨大な檻の中を歩いていた。
「・・・・・先輩、がんばっているのかなぁ」
テトラとナイルナ先輩は武舞をお互い代表選手のようで剣と拳を重ね合わせて観客たちに魅せているはずである。
まぁ、訓練中に何回も手合わせしているのを見かけているし、メルもそれに付き合っていた口なのでどんな動きをしているかわかっていた。
「はぁ」
とはいえ、華々しい晴れ舞台でその勇姿をみたかったという気持ちは強いが。
なお、ロクマ先輩は研究発表会で何かの論文を出すとかでそちらに出席中。
そもそもこの式祭は魔法使いたちがどのようなことをしてどのようなことを成すかを一般に周知させるための場であり、かつ王族も来るということである種の自分の売り込みの場でもあったりした。
というのをテトラ先輩からメルは聞いた次第だが・・・・・
今の自分の境遇にため息しか出ない。
それに
「グォオ」
「ゲガゲギャ」
「グルルルルル・・・・・」
出せとでも叫んでいるのか檻を噛む慌ただしいプチゴブリン。
我関せず眠るウルフ。
ばたばたと狭い檻の中を飛び回るバット。
そしてその中でも一番強そうなのは腰みの一つしかないゴブリン一匹。
こいつはおとなしくじっとしている。
いや、その向こうにほろをかぶせた檻がひとつあったが中に何があるのかは禍々しさが漂っており、呪符も貼り付けられてるのでどうにも覗きに行きようがなかった。
それをのぞけばどれも最低級の魔物である。
一年次が相対するにはちょうど良い相手として競技時が教師陣よりさらに弱化の魔法もかけられる。
それをして自分の役回りはせいぜい派手に抵抗して大観衆の中やられる役。
魔物が請け負っても良いのではとも思ったが、旗持ちが無秩序に動かれても困るのでこうしているというわけだが・・・・
「檻の中はいただけないなぁ」
そうぼそっというと
「ふん、ダメルティにはお似合いだろ」
そう返事があった。
ふと振り向くと、そこにはクラスメイトの男子たちがガレットを先頭にして入ってきた。




