甘い考え
俺はガリバー。ちょっと人生にいろいろ考えなくてはと思っている12歳。
学園に入るまでの俺の人生はそれは順風満帆だった。
親には期待されている子爵家だし、出来の悪い弟妹はおれに従順だ。
成績も優秀で、耳目に優れ、どんなものも怖くなかった。
だが、そう、だが、ちょっと面接のときにとちっただけで俺の評価は最悪に近いものとなった。
そう、ちょっと前夜に華やかに歓送会を行ったときに酒を飲んで、ちょっと面接官の前でゲロっただけだ。
ただ、それだけで俺の評価はガタ落ち。
寮の質は最悪の部屋。
日あたりも悪い上にその場所まで行くのにどれだけ苦労することか
それ以上に、同室の奴が史上最悪だった。
あの落ちこぼれで有名な家柄のガキだった。
俺と同じ年だがあんなのガキで充分。
頭の中にお花畑でも咲いてやがるんじゃないのか?
いくら俺がよってくるなといってもついてきやがるし、泥なり水なり、転ばしてやったりしてもへらへらとつきまとう。
おかげで俺は次期の公爵様なり侯爵様なりのところの方々と繋がりをもちたかったのに、あの駄メルティのせいでどうにもならず、むしろ俺まで馬鹿にされたような態度をとられてしまった。
これではいくらなんでもまずい。
そう思い、それなら何かコイツとは違う決定的なものが欲しいとおもっていて、そういう思いで使い魔召喚で使えるやつを召喚して俺の有能さを知らせしめようと思ったら・・・・
猫が出やがった。
書物なりで俺も勉強して知っていたが、戦闘では何の役にも立たんし、むしろその勘の鋭さからか敵が来たら魔術のように逃走するしか能のない使えんやつだ。
おまけにそれでも猫を育てていくとこいつ、契約を解除して襲ってくるとか言われている。
しかもほかの使い魔にも類を及ぼすその能力。
これで一生に一度しかできない使い魔召喚の儀式で俺は何もかもを失った。
もうやけくそだとこんなところにいても意味がないと俺は学園を飛び出したが・・・・・
適当に足を向けた酒場、そこで俺は天啓を知った。
男どもは俺を羨ましそうに、そして素晴らしく褒め称え、女どもは俺にしなだれかかって媚を売ってくる。
そうか、冒険者というものはなんと素晴らしいことか。
ただ魔法使いであるというだけでこれほどもてはやされるのか。これは素晴らしすぎる。
どうして書物なりなんなりに、やれ「冒険者は汚い」「冒険者は品格の低いもの」「貴族たる魔法使いは冒険者に身をやつすな」などと言われているのに実際に目で見て置くに越したことはないということだな。
そして、周りのやつの一人から
「是非そのすごい魔力を見せて欲しい」
とこわれてにやりと笑ったあと、こうして迷宮にやってきたわけだ。
道中の魔物どもはこれも書物で訓練の迷宮とは違い、獰猛さが大きいと言われていたがそんなことはなく、冒険者の仲間たちが露払いにと俺の出る幕もなくやられていく。
また、習い覚えたばかりの補助の魔法を使うと目に見えて彼らは戦いやすそうにし、小さいながらも火球を出して援護するややんやの喝采。
俺はこの学園のある都市に来て一番の爽快感を味わっている。
女どもも俺を見る目が一段と輝いている。
ふっ、ここを出たら思いっきり楽しませてもらうとしよう。
学園に通える歳から俺は大人なんだからな。
しっかし、どこまで歩くんだ?
「えっと、随分奥へと行くんですね」
おっと、少し声が震えてしまった。
いや、別に怖くないぞ。
年上の魔法使い先輩から迷宮探索をするというに俺はもう行っているのだからすごいことをしているんだ。
だから、これは今後のことにたいする武者震いだし、慎重に行くのは大切なことだからな。
だが、本当に奥まで行くが、そろそろ引き返してもいいんじゃないのか?
俺の力を見たいのならもう十分のはず。
「ああ、そうだな、奥へ行くんだよ」
その時このパーティのリーダーの剣士、ドウェルクがにやりと笑った。
「そうそう、もうちょっと奥にちょうどいい広さのところがあるから、ね」
またこのパーティーの副リーダーの舞踊士のラバラもにっと笑みを浮かべる。
「いいところ・・・・もしかして隠し部屋とかいうたから部屋のことですか?」
そう迷宮にはそういう突発的な隠し部屋がある。
そしてそこには魔物が出ないエリアというのがあっておそらくそこを根城にしているのかもしれない。
一流の冒険者はそうしてるってあったから。
それを見せてくれるんだな。
「よし」
俺をなかまとして迎えてくれるんだから手札は全て見せてくれるということなんだろうな。
俺の力は有用だもんな。
にこにことして俺は心浮き立つままに彼らについていった。
ガリバーは何も気がついてはいなかった。
一番うしろの斥候色の男が誰も近くにいないかを常に確認しつつ歩いていることを。
そして、少年には気がつかれないよう、どんどん距離を狭め、懐に隠し持つ短剣を確認していたことを。
そして周りの仲間たちも目配せしていたことを。
それは第三者が見れば一目瞭然の光景だった。
(いつ殺る?)
(もう少し)
(貴族の持ち物は高く売れる)
(要り用なら使えるし)
(世間知らずの馬鹿だな)
小声でそれぞれひそひそと話し合っていた。
そして、彼らが目的の場所についた。
そこはひとつの袋小路の行き止まり。
ゴツゴツした岩肌であちこちに穴があいている。
なんだろうときょろきょろとしているガリバー少年の後ろから。
さぁ、殺るぞ。ばかなやつ
と襲いかかろうとした。
そのときだった。
「お、おい、なんか、物凄い勢いでこっちに何かが来るぞ?!」
斥候職の男がギョッとした顔で後ろを振り返りその奥を見た。
釣られて全員もそれを見た。
「猫?」
まず飛び出してきたのはそれだった。
火が付いたように慌てて飛び出してきた。
その後ろから冒険者の一団が。
そして
巨大な虎の顔を持った人型の魔物が5体
手には凶悪な狂気を持ってこちらに、猛るように狂っているように吠えながら迫ってきていた。




