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カオスタワー  作者: 冬ノ木目


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5.試練、再び

〜クノッサ平原〜


というわけで再びやって来ましたクノッサ平原。開始位置がランダムな上、地図という概念がないのでここがどこだかさっぱりだが、どうせどこへ行こうと草原が広がっているだけだ、気にするだけ無駄だな。

そして早速獲物を見つけたぞ。アレは…牛か?相変わらずぱっと見トピアリーだし、背中が花畑みたいになっちゃいるが。



“ガーデンバッファローLv20”



Lv20。俺の〔権能(マスタースキル)〕、〔神片:試練(ハーキュリーピース)〕に強化されてあのレベルって事は、本来はLv5なのか。

昨日の馬(権能持ちは覗く)もLv1桁だったし、本来ここはその程度の難易度なのかもな。

狩場を変えるべきだったか?…いや、薬草と魔薬草をほぼ使い切ったし、もうちょっと集めておくべきだな。


それに今日ここに来たのは検証の為だ。まずは魔導書を使ってみよう。ヘルプでの説明はこんな感じだった。


・魔導書

複数の魔法を放つ事を可能とする武器。魔導書ごとに決められた数の魔法をセットし、その合計コストを払う事で魔法の同時発動を可能とする。


初心者の魔導書にセットできる魔法は2種類。現在セットしているのは〔放火(ファイア)〕2つだ。

別種の魔法を放てるのが魔導書の強みだが、正直ここの敵に限って言えば〔放火(ファイア)〕をぶっ放した方が強い気がする。

だってLv30の個体にLv1(俺)の〔放火(ファイア)〕が効いたんだぞ?まず間違いなくこのトピアリーアニマル共は火属性に極端に弱いと見ていい。


手帳サイズの魔導書を右手に持ち、向こうが気付いてない内に〔放火(ファイア)〕を発動させる。すると、2発の火球が現れ、花牛に向かって飛んでいく。のだが…なんか…遅(・)く(・)ね(・)?長杖はもっとこう、メジャーリーガーの全力投球って感じだったが…魔導書はなんと言うか、親子のキャッチボールみたいな速度だ。

最初からこれを使ってたら昨日は負けていたかもしれない。


そして…これはついさっき知った事だが、コストも問題だ。今俺は〔放火(ファイア)〕を2発撃ったのだから、消費は20のはず。だが俺の消費したMPは…30。


これは長杖のヘルプを見ていて知った事だが、実は長杖には消費MPが三分の一減少する特性がある。そしてこれに加え、魔法効果を1.5倍にする特性もあるらしい。


両手装備だから盾が使えないとはいえ、全部長杖でいいんじゃないか?でも他2つは悪(・)さ(・)ができそうな香りがプンプンする。


この魔導書にしても、高コスト高火力な魔法を大量にセットしておけば瞬間火力の神になれるし、バフ・デバフ・回復を同時に掛けたりなんかもできるだろう。長杖と違って盾も使えるしな。


攻撃される前に適当に牛を焼いて牛肉をいくつか回収した後、次の獲物を探す。


正直また何十分も歩くのを覚悟していたのだが、踊り食いならぬ踊り焼肉をしている最中に別の牛が寄ってきた。昨日も連続で馬の相手をしたし、同じ種族で固まっているのかもしれない。


戦闘状態が解けないと装備を変えられないので、寄ってきた牛を順次ウェルダンにしていく。

ウェルダンどころかダークマターな個体もいるが、落とす肉はなぜか生なのはツッコまないようにしよう。


Lv20〜30程度の牛たちを丸焼きにし終えたところで姿が見えなくなったので、装備を魔晶に変える。

装備するとバスケットボールサイズのガラス玉のような球体がふわふわと俺の周りに浮かび始めた。

無重力空間に放り出したみたいな挙動だ。つついたら少し離れるもののすぐにこちらに引き寄せられ、また周囲を漂い始める。ちゃんとプレイヤーに追従する設定らしい。

ヘルプ説明は以下の通り。


・魔晶

魔法と魔力を込める事で装備者の思念で自在に動き、魔法を放つ。込めた魔法は自身では使用できない。魔力が切れると落下する。一定ダメージを受けると爆発し、消失する。



なんだか最後に不穏な事が書かれているが、とにかく試し撃ちだ。

魔晶をふよふよと飛ばし、操作距離の限界を測ってみる。

…だいたい100mってとこか?意外と遠いな。遮蔽物があったら下手すりゃ一方的に殴れるじゃないか。

自分は魔法を使えないので離れすぎると自衛ができない上、迎撃される可能性が高いんだけどな。


魔法自体は思ったより速い。威力補正はないが、魔導書よりは速めかな?だが魔導書にしろ魔晶にしろ、ソロ向けではない気がする。

威力、弾速、燃費のよさ、どれをとっても長杖が安定して強い。他2つはパーティ戦闘やレイド戦みたいなコンテンツで輝きそうだ。

特に魔晶の「一定ダメージで爆発する」とかいう文言。これ絶対悪用する奴いるだろ。爆発したら消失するとはいえ、武器1つを丸ごとロストさせるんだ、相当な火力が出るに違いない。物は試しだ、やってみよう。


魔晶に〔放火(ファイア)〕と全MPを込め、全力でぶん殴ってみた。…何も起こらない。

足元まで持ってきて全力で蹴りつけてみる。…何も起こらない。



「普通に戦ってたら爆発なんてしないんじゃねえか…?」



少なくともLv15程度では初心の魔晶すら壊せないらしい。初心の魔晶は破壊不可という可能性も考えたが、武器説明にそんな事は書いてないので、壊れるものだと思いたい。

芝馬の攻撃なら壊れるかな?それに牛の攻撃パターンも結局見ていないので、牛を見かけたら確認ついでにやってみよう。


数分歩いていたら馬を見つけた。



“プレーリーホースLv33”



「ヒュウ!いいねえ昨日より強い!」



Lv15になった今どこまでやれるのか、試すには絶好の相手だ。こちらに気付いてないという事は、奴は権能持ちではないんだろう。もしそうならとっくに襲われている。


俺はその場にうつ伏せになり、少しでも草に身を隠す。材料のせいか、クノッサローブが緑っぽいので保護色になっているはずだ。髪の色は…草に隠れていると信じたい。


魔晶を操作限界まで飛ばし、馬の近くまで持ってくる。不意討ち〔放火(ファイア)〕、とくと味わえ。


「ヒヒイインッッ!?」


真後ろから火球を食らった芝馬は大きく仰け反り、たたらを踏む。このまま畳み掛けてもいいが、今回は検証なのでな。さあ突進でも蹴りでもいいから攻撃を寄越せ。お前の目の前にあんのは空中機雷も同然の代物だ…!



「ブルルッ!」



芝馬が魔晶に背を向け、思い切り蹴り上げを放つ。それは見事に魔晶を捉え、蹄がガラス玉を叩き割った。

さあどうな―――ッ!?






ドッッゴオオオオオオォォォン!!!






……え?


え?何が起きた?いきなり目の前が炎で埋め尽くされた。花火を10発くらいまとめて目の前で爆発させられたような気分だ。



「ええ…」



顔を上げてみると、さっきまで芝馬がいた場所には何も残って居らず、奴がいた場所から俺がいたと思われる地点の手前くらいまで草原が消し飛んでおり、地表が剥き出しになっている。

ところどころ炎上しているのでおそらく魔晶の爆発のせいだと思うのだが、これは…


「気軽に使えねえなこれ…」


魔晶は今のでロストしたが、もはや些細な問題だ。「魔晶を大量生産して魔力を込めた端から投擲」みたいな戦法を考えていたんだが、投げて届く位置にこんなもん放り込んだらどうあがいても自爆にしかならない。


あと多分隙がデカすぎる。推定半径60mくらいを爆炎で焼き尽くす空中機雷…初期装備でこれほどの効果を出せるんだ、どうにかして悪用したい気持ちはあるがしばらくは長杖だな。


焼け跡からドロップを回収しようと思ったが、中心まで行ってみても何もない。

もしかして肉片に触れなきゃドロップしないのか?だとしたら相当面倒だぞこれ。

コイツに関しては諦めた方がいいな、別の獲物を探した方が早い。装備を長杖に変えてっと…


さらに1時間ほど歩いてみたが、素材はそれなりに手にはいるものの権能所持個体にも高Lvモンスターにも出会わない。途中でLv34の牛にも出会ったが、馬に比べれば遅い突進しかしてこないのでものすごく簡単なお仕事だった。避けて〔放火(ファイア)〕でだいたい終わるんだもん。

全員もっと火に強くなって出直してこい。


せっかくなので〔放火(ファイア)〕以外の魔法も練習しとくか。[魔法(マジック)]で取得できるスキルは全部で5つ。〔放火(ファイア)〕〔散水(スプラッシュ)〕〔微風(ウィンド)〕〔盛土(ソイル)〕〔粒癒(ヒール)〕だ。〔放火(ファイア)〕、〔散水(スプラッシュ)〕、〔微風(ウィンド)〕は属性魔法攻撃。

〔盛土(ソイル)〕は土壁の生成、〔粒癒(ヒール)〕は回復だ。

馬との戦いで土壁と回復を使わなかった理由だが、単純にコストの問題だ。〔盛土(ソイル)〕は1発30、〔粒癒(ヒール)〕に至っては50ものMP消費がある。体力も50回復するからバランスは取れているのだが、ぶっちゃけあの馬の攻撃力を考えるとあまり今がない気がする。

土壁も多分突破されるだろう。結局火球連打作戦の方が効果が高かったのだ。


周りに気をつけつつ、長杖で残り4種の魔法を順に放ってみる。〔散水(スプラッシュ)〕は水のレーザーのような攻撃が放たれ、目の前の草むらの上半分を両断した。

ウォーターカッターか、いいな!水が効く相手ってなんだろな?火山マップに沢山いそうな気がする。


〔微風(ウィンド)〕は風で地面を僅かに抉る空気弾だった。…ふと思ったんだが、さっきは〔放火(ファイア)〕を込めたからあんなことになったんじゃないだろうか。

例えば〔粒癒(ヒール)〕とかならむしろ広範囲の回復になるんじゃないか?風や水はちょっと場所を選ぶな。場合によっては火より酷いことになる。

試してみたいが、魔晶がロストしちまったから帰ってからだな。楽しみがまた増えた。



〜カオスシティ第4区画中央広場〜


さらに2時間後。俺は広場に戻って来ていた。なぜかといえば普通に死に戻ってきたから。

なんで死んだかって?回復が尽きた後も死ぬまで狩りに勤しんでたからだよ。30体までは行けたんだがな…爆薬による自爆が多過ぎた。

下位爆薬でも俺の体力を3割削る力はあるらしい。というか、爆薬投擲戦法自体あまり効果がない。


高校時代に培った制球力のおかげで狙いは完璧なんだが、如何せん遅すぎる。明らかに見てから避けられてたからな。

不意討ちか自爆特攻なら通じるが基本的に自分よりLvが上の相手に、しかも雑魚モンスター相手に、いちいち自爆なんてしてられない。

なにかこう、ダイナマイトを射出するクロスボウでもないものか。


だがそのおかげで俺のLvは相当上がっている。同じだけ敵のLvも上がるから恩恵は感じないんだけどな。


-ハヤ-

1.[魔法(マジック)]Lv32

2.[戦闘(バトル)]Lv32

0z

初心の長杖

クノッサローブ


HP  355

MP  355

ATK 82

DEF 97(+15)

AGI 46

DEX 46

MATK 335

MDEF 355(+20)

LUC  52


魔法関連の伸びが凄まじい。物理武器の人権あるのかと思うが、コストを必要とする魔法に比べ、物理スキルはノーコストで短いリキャストがあるのでそこでバランスを取ってるんだろう。属性相性もあるしな。魔法と違い、物理武器は誰にでも効く。



そんな事を考えながら俺が向かったのは、塔入口から中央広場を挟んだ向かいに続く巨大な道。案内板には「カオスストリート」と書いてあった。

他にもカオス工房通り、カオスイートエリア、カオスシティ住宅街…カオス好きだなこのゲーム。


中世風の通りを歩いていると、目的の店が見えてきた。


サッケンが「あそこなら素材多めに渡せば装備作ってくれるよ!」と言っていた店。

自分で作ってもいいが、手に入れた素材の中に俺じゃ扱えない物があったためここに来た。




〜【武具屋 スミス】〜


店名が彫られただけの金属板を外壁に打ち付けたレンガ造りの外観。

店内には武器や鎧が並べられている。武具も店内も装飾と呼べるものが一切ない。

極限まで機能性のみを追求したような代物だ。ゴテゴテしてるのが好きではないので、なんだか落ち着く。

店番をしている筋骨隆々のオッサンに魔晶があるか聞いてみる。



「あのー、すみません。ここ魔晶って置いてます?」


「いくら出せる」


「素材と交換でお願いします」


「見せろ、それ次第だ」



3時間以上塔に潜って集めてきた素材の中からいくつかを机に置く。1番数が少ないから多分レア素材だろうとアタリを付けた物だ。


・プレーリーホースの鬣×5

・プレーリーホースの蹄×18

・ガーデンバッファローの角×4

・上質火草×35

・上質鋼草×32

・土のピース・小×10

・水のピース×8


こんだけあれば武器の1つや2つ作れるだろう。そしてそれは当たっていた。



「上鋼20、上火30、角と鬣が2ずつ」


「へ?」


「それで魔晶を作る」



あのガラス玉をこの材料でどう作る気だ?見当もつかないが、作れるというのなら任せよう。



「あ、じゃあ頼みます」



オッサンは何も言わずに素材を持って奥に引っ込んでしまった。どうすんだこれ、ここにいればいい?


数分後、オッサンが赤い幾何学模様の入った金属の8面体を持って出てきた。

なにそれ、ホントに魔「晶」?


・七転八起(魔晶)

〔七転び八起き〕

これが自爆を起こした時、消失を8回まで防ぐ。



「自爆による消失を八度防ぐ。それだけのモノだ」



サラッと神装備をお出しされた。マジで言ってる?確かにLv20どころか狩り後半はLv30超え、Lv40や50もチラホラいたから相応のドロップにはなるだろうが…そんな破格の効果まで付けられるのか。

魔晶のデメリットを回数制限付きとはいえ踏み倒せるのは相当デカい。


しかも自爆を防ぐんじゃなく、それによる消失を防ぐと来たもんだ。それつまり9回まで使える爆弾じゃねえか。

より強力な素材があれば完全な踏み倒しもできるんじゃないか?夢が広がるねえ!



〜クノッサ平原〜


オッサンに礼を言い、ビギナーズハウスでアイテムを補充した後、俺は平原での狩りを再開した。

出会う敵は当然Lv33以上の強モブ達。だが俺だって強化されているんだ、もう苦戦なんかせんよ?権能持ちでもない限りはな!



10分後。




“ベリーディアLv80”



「フリじゃねえわ!!」


俺は推定権能所持個体と思われる、果実を連射する鹿に追いかけ回されていたのだった。地の果てから俺目掛けて一直線に向かってきた辺り、〔神片:試練(ハーキュリーピース)〕の効果範囲は思っているより広いのかも知れん。


うおお絶対討伐したらァ!!

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