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カオスタワー  作者: 冬ノ木目


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14/16

14.頽理世界・3

〜????(???????)・内部〜


階段を10周分ほど下に降った頃。

俺達は最初と同じ構造の部屋にたどり着いた。

一瞬元の場所に戻されたのかと思ったが、下に続く階段は無く、念のため上まで戻ってみてもちゃんと最初の部屋に出た。

他の場所に続くような通路もないので、ここがゴールだと考えるのが自然だが…



「…何もないな」


「…ですねぇ」



マジで何もない。何か見落としたか?だが階段は1本道だ、ギミックらしいギミックもなければアイテムもない。ノーヒントの謎解きを要求されていて、2つの部屋のどこかにそれを解く鍵がある、ということだろうか?

だとしたらお手上げだぞ?どういう謎かも解らないのに何をしろと?



「シフォン、そっちはどうだ?」


「ダメですぅ、どこもかしこもおんなじで、怪しいものなんてありませんよぅ。そっちは何か見つけましたかぁ?」


「怪しいといえば何もかも怪しいんだよな…うーん、根本的に前提が何か抜けてるのか…?」



そもそもの始まりからして突然過ぎた。カオスタワーに入る前にもおかしな事は起こらなかった。このミニカオスタワーだって存在そのものがもうおかしいくらいで、入るときにも…うん?そういえば…



「なあシフォン、この塔の入口ってどうやって開けたんだ?何か呟いてたけど…」


「へ?どうにかして開けられないか探していたらぁ、いきなり文章が見えましてぇ」


「文章?」


「はぁい。それを読み上げたら扉が開いたんですぅ。んーとぉ、なんて書いてましたっけぇ…?思い出すのでちょっと待っててくださぁい」



シフォンの前に現れた謎の文章。そこにヒントがあるのか?入口まで戻ったら俺にも見えたりしないか?



…あ、そうだ。壁や天井を破壊できるかどうかも一応試しとこう。入口がダメだったからといって他もそうとは限らない。


特定の箇所だけ壊せます、なんてありふれた解き方だしな。



「〔放火(ファイア)〕〔散水(スプラッシュ)〕…無傷。そりゃそうか」



一発目は〔放火(ファイア)〕と〔微風(ウィンド)〕、次に〔散水(スプラッシュ)〕と〔盛土(ソイル)〕を七転八起に込めて放つが、壁も天井も床も無傷。

ダメ元で〔粒癒(ヒール)〕も撃ってみたがダメだった。うーんしゃーない、こうなったら投擲も試すか。鋼草玉を手元に呼び出し、振りかぶって――



「…あん?」



結構な衝撃が来ると思ったからシフォンから離れてやったんだが、ごく普通に「ゴッ」と鈍い音を立て、鋼草玉は床に落ちて転がった。

おかしい、〔神片:投擲(ダビデピース)〕は自動発動だ、今のモーションが投擲扱いでない訳がない。


どうなってんだ?スキル使用不可?だが魔法は使えた、魔法もスキルの1つだからスキルが使えないならさっき魔法が使えたのはおかしい。



「思い出しましたぁ!!」


「うおびっくりした」


「【これなるは頽理の楔、神は歪み、人は正す】ですぅ!!」


「たいり…?神が歪んで、人が正す…?」


「頽廃の頽に理解の理で頽理ですぅ!」


「【これなるは頽理の楔、神は歪み、人は正す】…どういう意味だ?」


「分かんないですぅ」



よし、ちょっと考えよう。【これなるは頽理の楔、神は歪み、人は正す】。文言的にこの塔の名前がおそらく頽理の楔。


楔は2つの物を強く結び付ける働きがある。字面をそのまま受け取るならこの夜を起こしている原因はこの塔と考えていいだろう。


ならその破壊がクリア条件?


そうだとすれば、普通の攻撃が通じないからやはり何かしらのギミックがあるに違いない。


やっぱそこなんだよな。ならヒントは【神は歪み、人は正す】の部分。


【人】は多分俺達の事。外にいるあの化け物を人間扱いしてるとは流石に考えにくい。


つまり俺達のやるべき事は、「歪んだ神を正す」事。


歪んだ神ってなんだ?


神…開発者の名前がド直球で『神』だが、これは除外してもいいだろう。だって名前しか分かんないし。


まあ未だ外で蠢いてるであろう、悪夢から抜け出たような怪物共を考えた奴は確かに歪んでるだろうが。


…あ、そういえばさっき〔神片:投擲(ダビデピース)〕がなぜか機能しなかったな、もしかしてこれもヒントに…いや待てスキル名!!



急いでスキルを確認する。そこにはこう書かれていた。





〔逾樒援:謚墓憧(繝?ン繝?ヴ繝シ繧ケ)〕

・謚墓憧譎り?蜍慕匱蜍?

・謚墓憧蜍穂ス應クュ閾ェ蟾ア譎る俣蜉??






「なんだこりゃ!?」



いつからだ?いちいちスキルの確認なんてする必要無いから全く気が付かなかった。塔の外では使えたから、この中に入った瞬間にバグったって事か?



「どうかしましたぁ?」


「…スキルが文字化けしてる。他のスキルは無事だから、〔権能(マスタースキル)〕だけがおかしくなってるんだ」


「【神は歪み】に関係あるんですかねぇ?権能、なんていかにも神様の力ってイメージですしぃ」


「〔権能(マスタースキル)〕には神片ってワードが付いてる。まさかそれか?」


「じゃあ、スキル名を正せって事ですかぁ?でもそんなのどうすればいいんですかねぇ?どこかに正しいスキル名を入力せよ、とかぁ?」


「そんなUIどこにもないんだよな…塔のどこかに入力スペースでもあんのか?」



そんな分かりやすい物があったら見逃さない。バグったスキルを元に戻せ、なんて通知も特にない。何すればいいんだ?



「発声してみたらどうですぅ?効果内容も含めてぇ」



発声?正しいスキル名とその内容を正確に言え、そういうギミック…ありそうだな、試してみよう。



「…神片、投擲。ダビデピース。投擲時自動発動。投擲動作中自己時間加速。」



確かこうだったはず。漢字が多いが、内容はシンプルだから覚えやすい。俺がスキルの情報を声に出した瞬間、変化が起きた。

バグり散らかしていたスキル表示が、突如ピントが急速に合わなくなったようにぼやける。


何かが書かれているのかどうかすら分からなくなった頃、今度は先程の逆再生の要領でピントが合い、元の〔神片:投擲(ダビデピース)〕の説明に変化していた。



「おおー…戻った。サンキューシフォン、ドンピシャだ。最初の文言の事といい、助かった」


「いえいえお礼なんていいですよぅ。ハヤさんが守ってくれたおかげですぅ」



思えば、道中では前衛であるが故に怪物のヘイトを引き付けるので、俺の攻撃が通りやすかった。

移動中もトラップ地形に頻繁に引っ掛かるおかげで俺は殆どダメージを受けていない。

さらにその機動力は塔までたどり着く突破口となり、塔内では謎を解く鍵を見つけていた。


殺人ピッチングと魔法連打しかできない俺よりよほど優秀な子である。俺もうこの子に足向けて寝らんないな?


〔神片:試練(ハーキュリーピース)〕も同じようにバグっていたので元に戻し、確認のためにシフォンから離れて壁に鋼草玉を投げつける。



ガアァン!!



文字通り金属同士を全力でぶつける大音量が響き、タングステンにぶつけられたライフル弾の如く鋼草玉が爆散した。

離れててよかったわ、クレイモア地雷と変わんねえよこれ。

だがこれを攻撃に応用できれば戦法の幅が広がるな。


こう、両手から空中で交差する軌道で投擲すれば、爆散した鋼草玉の破片が前方に散弾の如く…


破片の一部が自分にも飛んできたら1発アウトだから、少し考える必要があるな、今度練習しよう。

自滅なら〔権能(マスタースキル)〕が奪われる事もないだろうし。



「ギミックは多分解いたと思うが、なんか変わったか?」



何かしら変化が起こるものと思っていたんだが、部屋の中に変わった所はない。上から下へ移動したのだから、ここから次の部屋へ向かうのが自然な流れだが…



「うーん…無駄に広くて探すのめんどいですぅ。もっと主張して欲しいですねぇ」


「すげえ分かる。まあここに無いようなら階段か上の階のどっちかだろうが…根本的に俺達はここで何をさせられてるんだろうな?この夜がどういうコンテンツなのかイマイチ掴めない。モンスターはいるが、経験値もドロップも貰えない。この塔をクリアすれば何か貰えるのか?」


「きっと隠しステージって奴ですよぅ。死ぬまで戦えとかそんな感じのチャレンジステージですぅ。腕がなりますねぇ」



思い出したように戦闘狂の片鱗を見せるシフォンはともかく、この狂った夜に放り込まれてから目的が見えて来ない。「巻き込まれ感」が強いんだよな。偶然居合わせたとか、そういうの。そんな雑談をしながら戻って来ると、上の階に変化が起きていた。



「あそこ、塔への入口があった場所だよな?」


「そのはずですぅ。なぜか部(・)屋(・)の入口になってますけどぉ」



塔内に入った時に消失した筈の扉が復活していた。

普通に考えれば外だが、扉のデザインが変わっており、一部が灰色の硝子になっている。

そしてその奥は外ではない。この部屋と同じ材質で出来た広間のようだった。



「行くしかないか。シフォン、準備はいいか?」


「いつでもぉ!」



俺達は武器を構え、部屋の中へと足を踏み入れた。

今日は2話更新です。

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