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カオスタワー  作者: 冬ノ木目


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13/16

13.頽理世界・2

〜探索開始から30分後〜



“■れーリー□□簀Lv??”



「来たぞ!馬モドキだ!」


「先手必勝ですぅ!〔突撃斧(アックスアサルト)〕ぉ!」



3つの馬頭を生やした尻を引きずる、前脚2足歩行の首無し馬をシフォンが両断する。



「hI、HIhiyy…■□■」


「まだ動くか!行くぜ乾坤一擲!オラァ!!」



半分になって動きの止まった馬モドキに鋼草玉が直撃し、残った肉体を粉砕した。そこまでやってようやく、馬モドキは動かなくなった。


30分この平原を探索して分かった事がいくつかある。



その1。怪物の名前と姿は一定じゃない。今倒した致命的に何かを間違えてるケルベロス馬モドキの他にも、肉塊から大量の馬の上顎だ(・)け(・)が生えた奴(プれ■痢■■ースLv??)とか、牛の蹄(胴体と同じサイズ)から表面に眼球のついた角が生えてるだけの奴(ガー殿バッ■■ろーLv??)とか、そりゃもういろんな化け物がいた。

何度見ても見慣れない異形さだが、とりあえず粉々にすればヨシ。つーかそうしないとまた「あの感覚」に呑まれそうになる。



その2。この異形の怪物達は不(・)死(・)身(・)だということ。粉々にした後で肉片に触れてもアイテム化しない上、ネーム表示が残っている。

肉片が「ピクッ」ってなった時はシフォンが悲鳴を上げていた。俺もビビった。



幸い再生能力の類は持っていないため、脚を粉々にすれば移動は封じられる。行動パターンも、ベースになっているモンスターを元にするため読みやすい。

読みやすいだけで何してくるか分からんから用心するに越した事はないんだがな。さっきの馬モドキは白黒マーブルの血のような何かを首から噴射してきた。

当たりはしなかったが、無害だとしても絶対に触れたくない。



モンスターについては以上だ。次、最も危険な環(・)境(・)について。

ここの環境は変化する。それも、超突発的に。地面がいきなり海みたいに流動して地形が変わる、なんてのはまだ優しい方。鋼草が突然異常成長して串刺しトラップみたいになったり、普通の薬草が火草に変化して燃え上がる、なんて事もあった。

基本的に食らうのがDEFが高くて突撃しがちなシフォンで良かったよ、マジで。



そうして悪夢の中に迷い込んだような気分を味わいながらモンスター(ガチ)を粉々にしつつ、草を毟ってみたりもした。見た目も中身も普通の、いつものアイテムだ。生え方がおかしいだけか。



そうして探索を開始してからさらに30分後。



―ズズゥウウゥゥン―



「あ?」


「なんでしょうあれぇ…?塔(・)?ですかねぇ?」


「あの見た目…カオスタワーにそっくりだな」


「多分本物よりずっと小さいですけどぉ、シルエットは似てますねぇ」



ちょうど1時間経過したからなのか、はたまたそれ以外に条件があったのか。俺達からそう遠くない場所に、カオスタワーそっくりの「塔」が地面から生えるようにして出現した。

とりあえず向かってみよう、という事になったのだが…



「潰しても潰しても湧いてきやがる!やっぱなんかあんだろあのミニカオスタワー!!ええい寄るんじゃねえ気分最悪なんだよ〔放火(ファイア)〕ァ!!シフォン後ろ!〔盛土(ソイル)〕!」


「気持ち悪いですぅ!!〔全撃斧(アックスオールアウト)〕ぉ!!っぴゃ!?ありがとうございますぅ!!」



多い。近づけば近づくほどに、奴らの数が増していく。

最初は数分に1体出会えば多い方だったのが、ほんの数十m先に塔がある距離になった今は全方位から怪物が押し寄せてくる。

固まって互いの背後を常にカバーしなけりゃとっくに群れに呑み込まれているところだ。



「シフォン!このままじゃジリ貧だ!〔突撃斧(アックスアサルト)〕あるだろ!あれで俺を引っ張って、塔まで突っ切れるか!?」


「ダメージ判定は斧にしかないのでぇ!行けるかとぉ!ふへへっ!」


「戦闘狂メンタルが復活する余裕が出てきたようで何より!!今から〔放火(ファイア)〕で焼き払うから、その瞬間に作戦決行だ!!」



鋼草玉は使わない。数は用意したが、あんな塔が出てきた以上、あの中にいるであろうボス級の相手に使いたい。

あと敵に囲まれてるこの状況なら範囲攻撃、つまり魔法の方が優秀だ。

投擲攻撃は1体1体俺が手動で狙う必要があるからな…



「〔放火(ファイア)〕!今だシフォン!!」


「〔突撃斧(アックスアサルト)〕ぉ!」



シフォンが俺の腕を掴み、スキルを使用。怪物共を両断しながら一瞬で10m近くを移動する。

魔法と違い物理攻撃スキルにはリキャストがあるため、再使用可能になるまで俺が周囲を焼き払い、リキャストが明けたらに再びスキル使用。

これを繰り返して塔まで向かう。



「見えましたぁ!入口ですぅ!」


「本家と違ってこっちは入口があるみてェだな!よっしゃ俺がブチ破る!オラァ!!」



鋼草玉が金属製の扉に飛翔し、直撃。

しかし破れない。そう都合よくは行かねえか。

押し寄せる怪物を避けて潰してぶった斬って焼き払って…だから多い!!

だがあと数m、次で行ける。



「〔突撃斧(アックスアサルト)〕ぉ!!入口に着きましたぁ!周りの対処お願いしますぅ!」


「任された!どっかに開ける鍵とかないか!?奴らに追いつかれる前になんとかしてくれ!」



シフォンが後ろで何かやってる間に目の前の怪物の群れを焼き払う。まだかなりの余裕があるとはいえ、ここに来るまでにタブレットを使いまくってしまった。

こいつらは粉々にしても死なないから経験値もドロップもない。旨味ゼロの戦いを繰り返して終わりなんてことはないだろうし、絶対この塔の中に何(・)か(・)がある。

ていうかそうであってくれ!!



「…?なんですかぁこれぇ?…へ?読むんですかぁ?ええと…【これなるは頽理の楔。神は歪み、人は正す】…?……ひゃっ!?」


「開いたのか!ナイスシフォン!よし撤退!塔に逃げ込む!」


「この中まで追ってきませんよねぇ!?」


「分かんねぇ!けど逃げ道はここしかねぇ!」



ゴゴン、と重い音が鳴り、扉が高速で開いた。大急ぎで2人で中に逃げ込むと塔全体が黒く発光し、扉のあった場所が消(・)失(・)した。まるで元々壁だったかのように、きれいさっぱり消えている。

どうやら窓も他の扉もないようで、怪物共は入ってこれず、声が聞こえる事もない。…どうやら逃げ切れたらしい。


ひとまず腰を下ろしてタブレットを呷る。MPを全快にした後、シフォンと作戦会議をする。



「死ぬかと思った…とりあえずどうしようか?この塔、下(・)が(・)あ(・)る(・)みたいだけど」


「上に登ってくのかと思ったのにぃ、天井しかないですもんねぇ。入口らしきものもないですぅ」



そう、外からは天まで突き抜けるような威容を誇っていた癖に、中には上に続く通路や階段は何もなく、3m程上に天井があるだけだ。

空間の広さは体育館程。カオスタワーと同じ一面真っ黒な金属のような材質で、「とりあえず空間を用意しました」みたいな場所だ。例えるなら引っ越し直後の部屋。

天井に何か入口でも空いてないかと目を凝らして見るも、微妙に薄暗いせいか何も見つけられなかった。


代わりに見つけたのは、下(・)へ(・)続(・)く(・)階(・)段(・)。推定幅2mとかなり広く、螺旋状に伸びている。



「降ってる途中でモンスターに出くわしたらおしまいだが…他に道もないしな。シフォンさんもそれでいいかな?」


「…………」


「…?…シフォンさん?」



なぜかジト目でこっちを見てくるシフォン。機嫌を損ねている、のか?だが全く心当たりがない。



「さん付け、嫌ですぅ」


「へ?」


「さん付けじゃなくて、普通に名前で呼んでくださぁい。さっきまで素で会話してくれてたじゃないですかぁ」



…言われてみればそうである。必死だったから気が付かなかった。



「わたしのこれ(口調)はロールプレイ(キャラ作り)ですけどぉ、ハヤさんはなんだかよそよそしくて距離を感じちゃうのでぇ、普通に話したいですぅ」


「あー……分かった、ちょい他人行儀過ぎたか。んじゃ普通にしてるわ、改めてよろしくな、シフォン」


「むふふ、はいですぅ」


「…ところで、戦闘狂なのもロールプレイ?」


「違いますよぅ?戦うのはちゃんと大好きですぅ。あの怪物達は斬り甲斐があって愉しいですぅ。いざ目の前にするとあの嫌な感覚が来ちゃって素直に愉しめないんですけどねぇ」


「そっかぁ…」



ナチュラルボーンバーサーカーとも打ち解け、俺達は真っ黒な螺旋階段を降りていった。

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