10.ガールイズ■■■■■■
〜クノッサ平原〜
転移先はいつもの如く草原。俺とシフォンは周囲を警戒しつつ、草探しを始めた。
「ハヤさんってぇ、プレイしてどのくらいですかぁ?」
プレイ時間?1日目に芝馬倒して、次の日…というか今日毒鹿倒して、街に戻ってアイテム作って、〔神片:投擲〕の練習してたから…
「2日目だね、うん」
「ふつかめぇ!?」
まあそういう反応になるよな、うん。
冷静に考えて頭おかしいもん、始めて2日でLv68って。これも〔神片:試練〕って奴のせいなんだ。
Q.Lvを早く上げたいです
A.自分より高Lvのモンスターをたくさん倒しましょう(強制)
を実行させる馬鹿力技なんだもの。
馬と鹿の力で実行できちゃってんだけど。
「えぇ、だってLv68って…実はこの世界に住んでる方だったりしませんかぁ…?」
「ちゃんと現実の住人だよ。色々あってね、こうなった」
「廃人さんだったんですねぇ」
「…そのようなものだね」
ゲームに人生捧げてるやべー奴扱いされたが、〔権能〕の事を話せない以上、「リアルを削ってゲームに没頭する廃人」だと思われても仕方ないのかもしれない。
「シフォンさんはどれくらい前から?」
「2週間前ですねぇ。口コミで噂になってましてぇ」
2週間か。普通はそんなもんなのかもな。そんな事を考えていたら、シフォンが怪訝な顔をした。
「それにしても、今日は塔内が変じゃありませんかぁ?」
「変?」
いつもと変わった事はないが…?
「いつもはもっとモンスターが多いんですよぅ。2人だけとはいえ、Lv50以上のプレイヤーでパーティを組んでるのにこんなに少ないなんてぇ…」
少ない…?改めて周りを見渡すが、おかしな所は何もない。いつも通り遠くにポツポツと草を食む馬や鹿、牛なんかがいるだけで、別にいつぞやのようにあるけどあるけどモンスターに出会わないという事もない。
「俺、このゲームの事ほとんど調べてないんだ、Lvが高いと変わるもんなのか?」
「モンスターのLvにあまり変化はないんですけどぉ、プレイヤーのLvに応じて、数がどんどん増えるんですぅ」
「数が増える…?そんな事、1度も…」
「それならきっとハヤさんに理由があると思いますぅ。モンスターのLvが上がる装備やスキルを持ってたりしませんかぁ?」
「…持って、る」
「ならきっとそれですねぇ。Lvが高いモンスターがいるとぉ、なぜか数が減るんですぅ」
…そんな仕様があったのか。
「ちなみに、普段のモンスターの数はどの程度なんだ?」
「わたしたちのLvならぁ、基本的に遭遇する時は30頭以上の群れですぅ。Lv10以上のモンスターが現れるのが稀なのでぇ、数でバランスを取っているんでしょうねぇ」
「さんじゅう!?」
なんだそのバカみたいな規模は!?ベリーディア10頭ちょいに囲まれただけで結構ヤバかったぞ!?え、じゃあ待て、毎回そんな規模で戦闘に入っていたら、採取は…
「わたし1人だと薬草採取なんてとてもじゃありませんがやってられませんからねぇ。ハヤさんがモンスターのLvを上げるスキルを持ってるならぁ、鋼草無限採取、なんて無茶ができるのも納得ですぅ」
「…思ってたより神スキルだったんだな、これ…」
「もしかしてドロップスキルですかぁ?上位ロールならそんなスキルもあるかもですけどぉ、ハヤさんは下位ロールですしぃ」
「始めたての頃に手に入れたスキルでね。そんなメリットがあるとは思わなかった」
「羨ましいですねぇ。わたしもドロップスキル2つ持ってるんですけどぉ、狙ったみたいに物理攻撃系でしてぇ」
権能所持個体とのエンカウントがメリットだと思ったが、不要な戦いを避けられる効果もあったようだ。
「あ、モンスターいましたよぉ。…Lv…70?勝てるんですかねぇ、あれぇ…」
「どうする?まずお互いの戦い方を把握してから連係取りたかったんだけど、いきなり2人でやってみる?」
ビルドの方向性は理解したが、具体的な戦い方を知りたい。だが1人で勝つ自信がないなら、援護しようと思ったのだが…
「いえ、大丈夫ですよぅ。これでもわたしぃ、新人のなかでは強い方って言われてるらしいのでぇ」
「以前もパーティを組んだ事があるのか?」
「今日みたいに募集掛けてる方のとこにぃ、時々お邪魔してるんですぅ。人手があれば採取と戦闘で役割分担できますからねぇ」
なるほどな。つまりパーティ戦闘にも慣れた大先輩だった訳だ。
そんな話をしているとモンスターがこっちに気付いた。あれは馬か。Lvが近いせいか、やっぱり遅く感じるな。シフォンはそれなりにLv差があるけど大丈夫だろうか?
「ではいきますぅ!アハハハハァ!」
シフォンは赤黒い刃を備えた2m程の戦斧を手元に呼び出し、真正面から突っ込んでいった。おいおいホントに大丈夫か?[戦闘]2つ分の物理ステータスとはいえ、あの馬の突進は脅威だぞ?
「うふふっえーいっ!〔回撃斧〕!」
「ヒヒイッ――」
そう思っていると、シフォンが跳び上がり、走り高跳びのように空中で体を横向きに。そのまま斧を構えて回転し、馬の頭を脳天から真っ二つに叩き割った。
…いや結構容赦ないね君。あとなんか駆け出した時笑ってなかった?そういう感じのキャラなの君。
「ふー…なんとかやれましたぁ。意外と戦えるものですねぇ、」
「おー、ナイスファイト。んじゃ次は俺の番だな」
「はぁい」
ちょうどもう1頭の馬が向こうに見えたのでそちらに向かう。よしこの距離なら〔放火〕を…?え?シフォン?なんで君がダッシュしてんの?
「アハハハハハッ!〔突撃斧〕ぉ!!」
「ヒヒイイン!?」
今度は途中で急加速し、斧をフルスイング。馬は胴体を横に両断され、絶命した。
「…あの、シフォンさん?」
「ふぅー…はっ!ごめんなさぁい!?」
「いやまあ俺後衛だし、前衛の君が真っ先に突撃するのは間違ってないんだけどさ」
「すみませぇん、頑張って抑えますぅ!」
抑えるってなんだよ、パーティ戦闘の常識でつい前に出ちゃったとかそういうアレだよな?内なる殺戮本能とかそういうんじゃないよな?
「モンスターを見るとつい真っ二つにしたくなっちゃうんですぅ。そのせいであんまり採取が上手くいかなくてぇ」
内なる殺戮本能だったわ。装備の製作者、絶対シフォンの事知ってて作ったろ。
「斧型凶器・死式」とかこの子にピッタリじゃねえか。
「とりあえず、次は俺にやらせてくれな。君はそこに生えてる草の採取をお願い」
「さいしゅ…?あぁ、そういえばそのために来たんでしたねぇ」
忘れてんなよ!?むしろ戦闘は二の次だよ!?
「〔放火〕!」
七転八起から2発の火球が飛んでいき、こちらに迫ってきていた鹿に直撃する。鹿はそのまま炎に包まれて黒焦げになった。
…それはいいが、シフォンの方から視線を感じる。ふと顔を向けると、チラチラとこっちを誕生日ケーキを前にした子供のような顔で見ていた。それだけならキラキラした可愛い顔なのに、手が武器に伸びかけている。とても怖い。
「お、終わったんですねぇ。次は参加してもいいですかぁ?いいですよねぇ、狩りに行ってきますねぇ!」
「〔散水〕!」
「わぷっ!?」
モンスターを見ると無限に殺意のアクセルを踏み続けるドラッグカー少女を外付けのブレーキで止めつつ、行動方針を改めて説明する。気分は助手席の教官だ。
「今日の主目的は鋼草と薬草の採取。戦闘は極力避けて、向こうから襲ってきた場合だけ対処。オーケー?」
「オーケーですぅ。くさむしりしますぅ。もぐもぐ」
〔散水〕で8割吹っ飛んだ体力を回復させるためなのか、初めて見る緑色の団子を頬張りながらビッシャビシャの姿でシフォンは言う。
…ホントに大丈夫だろうか。周りにモンスターいないのになんで武器を出してるんだ、正直滅茶苦茶怖いんだが。
〜15分後〜
「ふんふーんふふーん♪やっと気分が落ち着いてきましたぁ」
「ようやく鎮まってくれたようで何より」
鼻歌を歌いながら鋼草を毟るシフォンがそんな事を言う。
全く、とんだバーサーカーだよ。
勝てるんですかねぇ(戦っていいかなぁ、ウキウキ)
パーティがいると理性がいつもより頑張ります。ソロだと理性は有給を取ります。
彼女の口調はロールプレイの一環です。




