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暗殺少女、フルメタルジャケットの融解  作者: LAST STAR


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第9話 探った先に見える雲

「さてと……魔物狩りと参りますか~」


私は家の半径から距離3キロ圏内を定時の『警戒ルート』にしている。

それ以上、魔物が自分のエリアに入りこまれると非常に厄介なのだ。


「正直、この距離を見て回るのも辛い――だからこそのバギー(こいつ)、なんだけど、高かったなぁ……」


異世界には似合わないのは承知の上で、武器庫からバギーを取り出して颯爽と走り抜ける。暗黒の森は人が出入りしない分、こういう乗り物を乗り回すにはもってこいの場所でもあり、索敵も楽ちんで助かっている。


「ふむふむ、今日も魔物さんはあまり居ないねぇ……。もしかしてこのエンジン音が魔除けになってたりしてね? まぁ、んな事はないかぁ……」


ブゥン、ブゥンとエンジンを吹かして私は街の方角を目指す。

街へ行ったところで札無しの私は歓迎されないのだが、それでも行かざるを終えない訳があった。


「どうも~おひさだね、マスター?」

「札無しっ……。二度と来るなと言ったはずだぞ!?」


街の大通りから一本入った小洒落たバーへ入ると罵声がすぐ飛んできたが、堂々とカウンターへと腰かける。その大胆すぎる行動に店主である男は睨みつけてくる。


「お前なんぞに売る情報なんて無い! こっちはお前が来るたびに変な噂を流されるんだ。商売あがったりだ! 早く出ていけ!!」

「ちょい、ちょいマスター? それはヒドいんじゃないかな?」


ドサリと金の入った巾着をカウンターに置くと『裏の情報屋』である彼の声は細くなり、袋へ手を伸ばす。


「はぁ……な、なるほどなぁ? そういうことなら――」

「おっと……! 袋に手を出すのは返事をしてからにしてもらおうかな?」

「せ、成功報酬とかぁ……あるのか?」

「それはアンタ次第かねぇ?」

「ま、まぁ、受けるかは依頼内容次第だな、うん」

「……別にそこまで難しいことを要求しようってわけじゃないんだけどねぇ?」


ミーシャは懐から1枚の写真を取り出し、マスターの方へ差し出す。


「私が求めるのはこの子の身辺情報」

「へぇ? 別嬪さんじゃないか。銀髪に青の瞳――結構な上物じゃねぇか」

「そうでしょう? なんでもここ、1ヶ月以内に家を追い出されたらしくてね?」

「あ? まさかお前、オレに誘拐の片棒を担がせようとしているんじゃ――」

「アホか、違うわぁぁ! 私は彼女が家を追い出された理由が知りたいだけ!!」


前屈みになる私をよそにマスターは顎に手を置く。


「なんだよ……そういうことか。まぁ、そういう類の話は街でよく聞く。情報収集なら苦も無く出来るだろう。だが、それしきの事にこれだけの大金を積む必要があるのか?」

「それくらい私にとっては大切なことなの」

「そうかよ……分かった、ここまで金払いが良い依頼だ。受けてやろうじゃねぇか。どうせ、ぼったくろうにも足元はみえているしな」

「なっ……。はぁ……よろしく」

「あぁ、良心的にやらしてもらうさ」


マスターは私との条件を飲んで契約を結ぶ。

調査の結果は明日中には出るはずだ。


「まぁ、シャノンが変なことに巻きこれていなければいいけれど――」


店を出たミーシャは鋭い視線を空に投げる。

こういった手合いの種類は2つしかない。


「真実か、それとも被害妄想的な嘘か」


シャノンの純粋な気持ちが垣間見えたのは間違いはないし、私を庇ったという事実は揺るがない。


「けど……慢心はできない」


信頼したい気持ちはあれど、それが嘘である可能性も見越さないといけない。

特に『裏の仕事』に身を置いている以上、尚更だ。


そうして、一日が経過した頃になって伝書鳩が私の元へやってきた。


「結果は……『シロ』か。それは良かったような、悪かったような……ふぅ」


「何か手伝わせてください」と言い出したシャノンに家の清掃を依頼した私はその姿を横目に続きの報告書を見つめる。


「彼女の名前はシャノン・R・ウィルソン。魔鉱石連合組合会長を務める『ウィルソン家』の当主直系の一人娘。家族仲も良好で社交界の場でも評判が良かった。常に礼儀正しく、気品のある女性として知られていた――と。うん、それは間違いない」


彼女を見ていればそれは自ずと分かる。

普通、銃創を負ったら痛みで動きたくないし、動けないのが普通だ。それでも、体に鞭を打って生き抜くための情報を得ようとしている。仮にそれが、私から一刻も離れたいという意志が混在していたとしても簡単に出来ることではない。


「だが? 鉱石連合組合の会長に父であるレオナルド・R・ウィルソンが選出された時期を機に家族内の関係が悪化。使用人によれば事あるごとに父親や母親が「あれができない、これができない」と強く娘に当たり、勘当を言い渡した」


ミーシャは思わず、目を細める。

シャノンは心を許せるはずの両親から裏切りを受け、必死に認められようと努力したのだろう。そうでなければ令嬢である彼女が掃除など出来る訳が無い。


そうして、最後には情報屋のマスターから核心的な事が書いてあった。


「しかし、引っかかる点が多い。今どき珍しい溺愛ぶりだったにも関わらず、娘を追い出すなんてことがあり得ると思うか? 俺の読みだが、封筒の中に入れた事件が絡んでいるはずだ。俺はここでこの件から手を引くが、それ以上を追うなら身の回りに気を付けろ……か」


茶封筒の中身を見るとそこには6か月前に発生した事件の切れ端が入っていた。


「これって……鉱石商の一家惨殺事件? あのドン引くくらいに惨かったやつか」


そう言ってしまうのも無理はない。

建物は全焼し、一家は子ども含めて惨殺。燃え盛る門の柵には全員の生首がぶら下げられていた。犯人は未だに不明で狂気的な人物の仕業と考えられている事件だ。


「実際、現場には証拠もなし。手口は明らかなプロだった。……調べ直しかな」


鋭い目線を空に投げながら紙に火をつけて耐熱皿へ入れる。アングラな世界に生きるミーシャにはこの事件がシャノンの勘当が絡んでいる気がしてならないのだった。

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