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暗殺少女、フルメタルジャケットの融解  作者: LAST STAR


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第10話 深堀りした先で

「調べ直すとか思ったけど……? よく考えりゃ、もう更地になってんだよなぁ~ココ……。まぁ、そうだよねぇ~わざわざ証拠を残す義理も無いだろうし」


まっさらなになった土地には草が生え、建物の影も事件の痕すらどこにもない。

でも、それがかえってミーシャの気を引く。


「ん~……でも、逆に完璧すぎるんだよなぁ……。『惨殺の現場』だから普通、頼まれても業者が入りたがらない。しかも、この時代の建築解体作業の効率を考えると、6か月経った土地にしては時が立ち過ぎている気がするし」


事実、事件現場の屋敷は綺麗さっぱり消えているが、両隣の土地は更地にはなっているものの、外塀や家の枠組みといった残留物は残ったままだ。その光景を訝しみながら腰を下ろして土に触れる。


「あぁ、やっぱりねぇ? 比較すると人の手が入った痕跡があるのが分かる。土もわざわざ新しいのに変えている。ふっ、こんなことが出来るのは――余程の人材とお金を動かせるところだけ、だね」


確かな違和感を得たミーシャは夕暮れの街を暗黒の森に向け、セーフハウスへひき返す。こういった表面化しない情報を探すには『裏』に潜り込むしかない。


「――うぃ、シャノン! ゴメンだけど今日は外せない仕事があるの。だから寝ててくれる?」

「夜に仕事、ですか? 本当に?」

「え? えぇぇ~なに疑ってるの? 別にシャノンを騙そうとか、人を殺すとかそんな野暮なものじゃなくてね? まぁ……そのぉ? 人助けみたいな感じの――」

「なら私が付いて行っても良いですよね? 私を騙さないとは限らないじゃないですか、それにヒトも殺さない、そんな仕事なんですよね? どんな仕事か見せてくださいよ。私も参考にするので」

「いや……ぁ……あはは……参ったなぁ~……言わなきゃ良かったかなぁ」

「今、何か言いました?」

「ん? いやぁ??」


とてつもない勉強熱心さ――というか、真面目なシャノンを前にシドロモドロになった私は渋々、折れることにした。ある意味、良い部分だけ見せ過ぎたのが問題だったのかも、と今更ながらに後悔する。


「ま、いっか! なんとかなるっしょ!」

「何が、なんとかなるんですか? そ、そんなことよりも!! この馬車は一体、何ですか!?」

「うーん? ごめーん、聞こえなーい!」


仕方なくシャノンをバギーに乗せたミーシャは速度をみるみる上げていく。そして、目的地周辺に着くと冷静にシャノンへ告げる。


「ココからは何があっても声を出しちゃ駄目だからね? 命に関わることだから」

「命に? しかも、こんな人気のない場所で仕事なんて何を――」

「いいからっ! シーッ!!」


私たちが居る場所。それは暗黒の森の正反対。

つまり、帝国と王国の国境境だ。


「もう、待って随分と経ちますよ? 本当に仕事相手が来るんですか?」

「来るから心配なさんなって! ほら、きた」

「あれって……ランタンの光? でも……チカチカって」

「フン、静かにしてて」


闇夜に紛れるように荷馬車が静かに接近してくる。

そう、酒場で話が出ていた例の密輸だ。


「これって……明らかに違法な、取引ですよね?」

「うん、違法以外の何物でもないけど、私たちにとっては何もしなくても、勝手に美味しいご飯の種になる」

「は? どういうことです?」


ミーシャは鼻を鳴らして静かにそのタネを明かす。


「今の帝国は内政がギクシャクしているでしょ? だからまぁ、要は『他人を蹴落とす情報には高値が付く』ってこと。さーて、お馬鹿さんは誰なんだかぁ~? まぁ、知らないけど。のほぉ~! 良い映りだぁ! いいぞ、いいぞ♪」


望遠カメラでパシャリ、パシャリと撮る中でシャノンが不意に口を開く。


「うそ……なんでお父様が、ここに……?」

「は? へ? おとう――えぇ!? シャノンの、ってウィルソン家の当主!?」

「わたしのこと……調べたんですか?」

「あ~……あはは。……うん、まぁね。一様は」


シャノンが呆然としているうちに彼女の父、レオナルドは着々と交渉を進めるため、少し開けた細道に出る。


「はぁ~ん? 娘を追い出した鉱石連合会の組合会長様が密輸ねぇ? 世も末って感じだわなぁ」


そんな心無い言葉にシャノンはグッと握りこぶしを作る。

本当に馬鹿な子だ。自分を捨てた親なんて見て見ぬふりをすればいいものを――。


「はぁ、ったく……シャノン? どうしたい?」

「えっ? それは……どういう意味、ですか?」

「今ならまだ何とか、取引を妨害できるかもしれないけど?」

「……それがもしも……もしも、叶うのなら」

「ふん、私を誰だと思ってんの? 札無しだよ」


切望の目で見つめるシャノンを前にミーシャは銃の先端にサイレンサーを付ける。


「じゃあ、イッチョかき乱しに――あばっ!」


踏み込もうとした瞬間、目の前に見知らぬ兵の気配を感じたミーシャはシャノンを慌てて木の影へ隠す。


「ひ~……。今のヤバかったぁ~」

「あの兵士、何者ですか!?」

「まともな奴らじゃないだろうね、うん」


シャノンには見えていなかったのだろうが、あれはウィルソン家の兵士だ。

兵士の腕には家紋を示す『軍馬』の紋章が付いていた。


「あ~……うん、それより……シャノン、もう手遅れかも」

「え?」

「あぁん、取引が成立したんだよ。それにさっきの妙な奴らが動いている」


シャノンの言葉に生返事を返しながらミーシャは遠方を見つめる。

そこには金品と鉱石を受け取り、離れるレオナルドの姿と森の中で潜む兵士たちが動く様子が見える。


「何かが起こるかも。いや、起こらない方がおかし――っ!」


その瞬間、レオナルドが銃を抜いて交渉を相手を撃ち貫く。

一発の銃声を皮切りに森の中は戦場へと変わる。取り引き相手もレオナルドたちを殲滅するために容赦ない撃ち合いがその場を支配する。


「シャノンはとにかく姿勢を低く!」

「こんなこと……お父様が、密輸なんて」

「信じていたモノが崩れ去るなんてあるあるだし、世の中なんてそんなもんで溢れかえってるんだよ、シャノン」

「でも……お父様がそんなことするわけ――! お願い、お父様のところに私を、わたしを連れて行って!!」


その言葉に思わず、数秒黙りこくってしまう。

シャノンが父親と会ったところで、残酷な結末しかならないだろう。

それでも、彼女のためには苦難と鉢合わせさせるのも手だ。


「わかった……でも、命の保証もできないよ?」

「それでも……」

「……。絶対に肩を離さないで、離れずに付いてきて」

「えっ……今のは!?」

「いいから! 離れたら死ぬよ」


ミーシャは何もない所から大盾を取り出してシャノンと共に動き出す。距離にしてわずか数百メーターではあるが、厳しい弾幕に晒される。


「はぁ……ったく、弾もタダじゃないってのに、こいつ等と来たら!」


その隙を縫うように反撃を絡ませてシャノンの父親の元に近づく。その最中、レオナルドは精密な射撃で、何人もの敵を華麗に撃ち倒す。


「アンタの父ちゃん、軍人? 銃の扱いがうますぎでしょう!?」

「違うっ……! お父様はいつも優しくて銃を使うなんて見たことも――」

「あちゃぁ~……急に静かになった。あっはは、これ、アンタの親父さんが全員、っちゃったっぽい?」


シャノンが「黙れ」と言わんばかりにミーシャを睨む中、レオナルドの銃口がこちらを向くのだった。



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