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暗殺少女、フルメタルジャケットの融解  作者: LAST STAR


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第5話 ダウト

「おっはよー! シャノンっ!」

「おは……ようございます」


翌日の朝、ミーシャはベッドで眠るシャノンを叩き起こした。

結局、昨夜は私のお金でたくさん料理を食べ、酒をかっ食らった結果、シャノンは酔いつぶれたのだ。


「私……確か、酒場でお酒を飲んで――」

「うん、それで潰れたってわけ。んで、ここは私の部屋ってわけ。オーケー?」

「えっ……ええっと……」


私が解説をするとシャノンの顔色がみるみる悪くなる。

見ず知らずの人に助けられ、あまつさえご飯や酒、寝床すらも施しを受けたのだ。

青ざめてもらわなきゃ割に合わない。


「ご、ごめんなさいっ! 悪気があったわけじゃなくて……あの、えっと……」

「あ、いやいや! いいの、いいの! 私、多少はお金に余裕があるから!」

「いや、でも……」


暗い顔をするシャノンの横にミーシャは腰かけながら少し表情を緩め、落ち着いた声で問いただす。


「三日三晩ご飯を食べれないくらいの訳があったんでしょう? 詳しくは聞かないけどさ? シャノンにはシャノンなりの事情がある。なら手を差し伸べない訳にはいかないよ。だから、ここにしばらくは泊って行きな?」

「えっ……いいんですか!?」

「うんっ! もちろん、シャノンが嫌なら無理強いはしないけどね?」


紳士すぎる態度を前にシャノンは青い瞳をキラキラさせて私の手を取る。


「うぅ……ありがとうございます、ミーシャさんっ!」

「おぅん! って、そんなことで泣かないの。いい女の子が台無しだよ?」

「でも、うれしくてぇ……!」

「そっか、そっかぁ……んまぁ、嫌な気持ちはしないけどさ? うーん、なんか照れ臭いなぁ?」


私は頭を掻きながらも優しくシャノンの頭を撫でるが、気付いたように声を上げる。


「あっ、そぉ~だ! シャノンが泊まるってなるとぉ……色々と必要だよね!?」

「いや、私は泊らせてもらえれば――」

「そういう訳にはいかないでしょう~女の子なんだからさぁ? それに安価なお店は私が知ってるから任せて! よし、シャノンっ! 買い物に行くよ!」

「ほぇ? 今から……ですか!?」

「そうっ! たくさん買う物があるんだから急いでいそいでっ!」


バタバタとミーシャに振り回されるような形で街へと連れ出されたシャノンは薄暗い路地裏へと入り込んでいく。明らかに気味が悪いエリアだが、ミーシャはその中の店舗に堂々と入って行く。


「はーい! 到着っ! どうよ!? さすがに裏路地とは思えないお店でしょう?」

「す、すごい洋服の数……それにどれもキレイ……」

「でしょう? こんな場所は滅多にないからね。あ~私はちょっと店主さんと話してくるね? きっとシャノンに似合う服があるはずだから――!」


そう言ってミーシャは店主の元へと駆けていく。

シャノンはその光景を横目に販売されている洋服の一つ、ひとつを手に取ってさっきのミーシャの表情を思い出す。


――ミーシャさん、どうして私にそこまで良くしてくれるんだろう。

――ま、まさか『私のことを知っている』……とか?

――いや、それだったら泊って行ってなんて言わないよね?


独りでに思いが駆け巡って行く。

そんな中、ミーシャと店主が2人揃って親しげな様子で私の所へ戻ってきた。

本当に彼女は人を巻き込む引力みたいな力がある人だなとシャノンは感じつつ、笑顔で二人を見た。


「お待たせ~シャノンっ!」

「いえ! ここって本当にいろんな服があって素敵で――」

「うん、そうだよね~。ふふっ、シャノン……ごめんね?」


突然、冷たく硬い感覚が手に走って何が起こったのか分からなかったが、すぐに自分の手が動かないことに気付いた。


「っ――手錠!? これはいったい、どういう――!」

「シャノンは鈍いなぁ~。ココは奴隷商館だよ?」

「ど、奴隷!? まさか私を騙して――そんな、いやっ」


シャノンは必死に逃げようと抵抗するが、手の自由を奪われた彼女が手練れのミーシャから逃げる術などある訳がない。


「はいはーい。暴れない、暴れない~! 大切な体に傷がついたら事なんだから。あ、あとうるさいお口も黙ってね? まぁ、黙らせるんだけどっ!」

「っ……んんんっ!!」


あっという間に制圧をしたミーシャは奴隷商館の男に笑みを浮かべる。


「オーナー、見て分かるでしょうけど、この通り。純潔も散らしたこともない、汚されることも知らない箱入り娘――こんな逸材はなかなかのものでしょう?」

「確かに。それはミーシャの言う通りだな。それに肌も白くて銀髪、青の瞳のコントラストは最高だ! 客の反応次第だが、まぁ――15~20はくだらないだろうな。――ほれ、手付金だっ!」

「おっほぉ~毎度、どうも!」


商館の男は交渉成立を宣言するかのように巾着袋をミーシャへ放り投げる。

中身を確認した彼女は笑顔を零し、私を置いて出口へと去って行く。


「さようなら、シャノンっ! あなたの新たなる旅路に幸多からんことを~」


楽し気に去って行こうとするミーシャの声に自分がいかに浅はかだったのか、深く後悔をした。どう考えたってご飯も寝床も無償なんて虫の良すぎる話だったんだ。

起きた時点で違和感に気付ければ逃げれた。思慮の足りなさに腹立たしくなる。


「ううぅ……」

「――可哀そうになぁ? でも、心配すんな。仇は俺が取ってやる」


悲しみに暮れている最中、商館の男はくすくすと笑いながらそっと胸ポケットから拳銃を取り出し、出口へ歩くミーシャに照準を向ける。


――あぁ、馬鹿め。因果応報だ。あのクソ女なんて死んじゃえ。


そんな思いが駆け巡った。しかし、シャノンの意志はこれから待つであろう絶望が頭を掠め、考えが変わった。


『このまま売り物のとして汚されて死ぬくらいならこの命を捨ててやる』――と。


奴隷商のコイツも売り物である私が死ねば損。

あのクソ女も手付金を貰ったとはいえ、商品である私が死ねば取引金は無効だ。


どうであれ、タダで死んでやるつもりはない。


シャノンは静かに息を吐いて、足に力を入れてミーシャを狙う射線上へと体を乗り出した。それとほぼ同時のタイミングで商館の男が引き金を引いたのだった。



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