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暗殺少女、フルメタルジャケットの融解  作者: LAST STAR


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第3話 ベレッタを握る女

ボフェムルト帝国。


この地は炎竜様への信仰を大切にし続ける伝統派が統治する国家だ。

アルラント王国と比べれば文化や文明のレベルは幾段か劣るが、悪人が住み着くには随分と居心地がいい場所だ。そんな悪人たちが屯する裏街の一角で彼女は担いできた少女を降ろした。


「ういしょっと! 結構、あなた軽いね? ……なーんてそんなこと言っている場合じゃないかぁ……。体の方は大丈夫?」

「……はい。危ない所をありがとうございました」

「いいえ~別に大したことはしてないし、気にしないでよ! ここまで来れば問題もないだろうし、あとは気を付けて帰んなよ?」

「あ、あのっ……! 実は私……帰るところが無くて――」


紳士的な対応で立ち去ろうとした彼女の手を少女は藁にも縋る表情でグッと掴む。

軽装だったことから考えても家出とかの類だろう。歳頃の子にはよくあることだ。

その気持ちも分からなくはない。だから、彼女はにっこりと微笑む。


「それならぁ……これから戦利品を換金してご飯に行くんだけど、来る?」

「い、いきます! いえ、お願いしますっ!」

「ふーん? ご飯と聞いた途端、食いつきすぎじゃない?」

「うっ……ここ数日、何も食べてなくて……つい……」

「冗談。大丈夫だよ。ご飯ぐらい奢るって! でもぉ……そっかそっかぁ! そんな身の内とはね? まぁ、立ち話もなんだしチャチャッとギルドで換金してくるから少し待ってて」


戦利品を持った彼女は素早くギルドと書かれた看板の建物に入っていた。そこは冒険者と依頼書の巣窟であり、素材を買い取ってくれる換金所も存在する複合施設だ。


「どぉ~も? これ、換金でお願いします」

「……また札無しの小娘か」

「いい加減、魔物狩りに貢献している私をコケ堕としにするの、やめてもらえません? たとえ『ライセンスなし』だったとしてもね」


彼女はギルドの受付ボーイに冷ややかな視線を送る。

ギルドでは冒険者のランクと名前を識別するためにプラチナ、コールド、シルバー、プロンズなどの5種のドッグタグが個人に付与されている。彼が言った『札無し』とは何らかの問題を起こし、そのライセンスをはく奪された人を指す言葉だ。


「事実だろう? "ミーシャ"が札無しなのはよぉ?」

「嫌味を言う暇があるなら取引するのか、しないのか答えて。でなけりゃこっちにも考えがある」


私、ミーシャがホルスターに手を掛ける。


「おいおい、怖えなぁ? ったく、ちょっとしたブラックジョークじゃないか。短期に走るんじゃねぇよ! 鑑定はしてやるから!」


現在の帝国内のギルドは王国への人材流出を止められず、私のような人間の手も借りざる終えない状況というのが実情になっている。


「ほぉ……待て、これは大狼の魔石――しかも上物だな? お前がやったのか?」

「まぁね。結果的には……だけどね」

「……? 魔物との戦闘で何かあったのか?」

「いや……なに大したこと、でもないか……」


あえて、視線を誘導するように思い悩むような《《フリ》》をする。

そんな反応にボーイはまんまと食いつく。

私はここぞとばかりに吐露する。


「実はさ……飛び入りで大狼を狩る二人とタッグを組んで魔石ソレを――でも、撤退するときに群れに囲まれて……二人は……」


そう言って殺した二人の冒険者のドッグタグをカウンターに置く。

するとボーイの顔色は大きく変わった。


「……そうか。札無しに面倒をかけるとは情けない奴らだ。ほらこれが報酬だ。受け取ってくれ」

「ありがと。ん……? でも、待った! これ、売却レートよりも――」

「いいんだ。受け取ってくれ、遺品を持ち帰ってくれたギルドからの謝礼だ」


報酬を悲し気な表情で受け取ったミーシャは出口で少しだけ笑みを浮かべ、ギルドを後にする。これもミーシャの作戦勝ちだ。


「おっ待たせ! さぁ~て! ご飯にいこっか! ――あ、そういえば……あなた、名前は?」

「あ、私は“シャノン”です」

「シャノンっ! いい名前っ! じゃあ、こっちこっち!」


ミーシャは手持ちのお金を確認しつつ、シャノンと共に夜の街に溶け込むように歩き始めた。彼女が先導して向かった先は情報のたまり場であり、ストレスの流し場。


――そう、『酒場』に他ならなかった。

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