第2話 ハイエナ
「ぬわぁ……く、撃たれたっ! ど、どこからだぁ!?」
「だ、大丈夫か!? 今、止血をっ!」
「そんなことより、襲撃者の位置を――!」
慌てる冒険者たちを前に襲撃者である少女は死角から最短距離を駆け、判断が遅い冒険者の後頭部へ1発。胴体に3発撃ちこむ。
「くそっ! やられてたまっ――!」
「はいはい~? やめときなぁ? こっちの方が速いから。あの状況から立て直そうとしたアンタならわかるっしょ? それでもやるぅ? う~ん~?」
「くっ……」
負傷した冒険者が銃を抜くモーションに入った時には少女の銃口は彼の顔前にあった。負傷した冒険者は死を覚悟し、冷や汗を流す。しかし、彼の予想に反して少女は短く切りそろえられた黒髪を揺らし、にっこりと笑みを浮かべる。
「ふふ、別にさぁ~君まで殺そうなんて思っちゃいないよ? そんな怖がらずにリラックスしてよ。んまぁ~言うことは聞いてもらうけどね?」
「お前は一体、何者――!」
「はいはい、動かない! 抵抗もなーし! ったく、一様は撃たれてんだし、この状況だし? 抵抗は良くないと思うんだよねぇ?」
少女は軽快に口を飛ばしながら負傷した冒険者の懐から銃を抜いて撃てないように遠くへ投げ捨てる。その上で既に亡骸となった冒険者の懐から魔石や金品、銃を回収し始める。
「うんうん、潤沢にもってんなぁ~旨すぎっ……あ、そうそう! そういえばさ、息してるアンタの方はなんかあんの? ……って言っても答える訳ないかぁ」
「や……やめろっ……げほっ……」
「はいはい、無理しない、無理しないの! いくら距離があったとはいえ、撃たれて3分以上経ってんのにその威勢は大したもんだよ。ブラザー?」
ついでにと言わんばかりにゴソゴソと懐を漁っては金品になるモノを回収していく。そして、一通りの回収を終えると彼女は大きなため息を吐いた。視線の先には大きな木に手と胴体を一括りに縛られ、意識を失った少女が吊るされていた。
「にしても……よく考えたもんだねぇ? 人を、ましてや女の子を魔物の餌にして待ち伏せするなんて――よっと!」
少女を吊っていた縄を切ると長い銀髪の髪を靡かせながら、勢いよく地面へと落下し、その衝撃で目覚めたのか少女はうめき声を上げる。
「あんたにだって……わかんだろぉ……? カネを稼ぐには……手段なんて……」
「まぁ~ね? 私もアンタもほぼ同類。『選んでられない』ってのはその通りだと思う。そういう意味じゃこの子は運がなかった。たださぁ、勘違いしないで――」
突きつけていた銃をホルスターに仕舞い込み、吊るされていた少女をファイヤーマンズキャリーの姿勢で担ぎ上げてニヤリと笑みを零す。
「私とアンタは違う。最悪の状況でも自分のケツは自分で拭ける。じゃあ、私たちはそろそろタイムオーバーだから、じゃあねぇ~また来世で」
「いったい……何を言って――っ……!?」
素早く逃げるように走り去っていた彼女たちの音に交じって息遣いが聞こえ始める。それも遥かに息遣いが荒く、人のモノではない。
「まさか――魔物ッ! うわあああああ!!」
その場には血だまりと僅かな骨だけが残り、凄惨な現場に誰が居たのか知る者は最早、誰一人として居なかったのだった。




