第1話 証明する歴史と今
ウィスパー大陸。
かつて、その大陸は炎竜の加護により、【アルラント】という王家が治めていた。
国内は魔術や剣、銃に至るまで英知なる繁栄を極め、争いも無く平和であった。
しかし、泰平の世は長くは続かなかった。
「無能な王に鉄槌を!!」
「今こそ伝統派の時代だっ! 誉ある炎竜様に栄光あれ!! 民衆よ、今こそ立ち上がるのだぁ!!」
今から3000年前。
権力闘争の火種が国を二分する内紛へと発展したのだ。
この『革新派』と『伝統派』の戦争は多くの死傷者を出して開戦から10年もの時を経て、伝統派を掲げる指導者たちが一方的に『ボフェムルト帝国』を建国。
その後、ポフェムルト帝国はアルラント王国との境界線を引いて半ば強引に終戦へと持ち込み、王国もこれ以上の犠牲は出せないと目を瞑るように終戦を承諾した。
ここまでは紛争地としては良くある話だった。
しかし、この混沌と化した戦争が残したモノは『国民の疲弊』や『派閥の決裂』、『帝国の建国』という歴史だけではなかった。
――そう、この頃から各地に魔物が跋扈する異変が起こったのだ。
噂によれば『炎竜様の加護が弱まったせいで魔物が現れ、世界が乱れ始めた』と謡われているが、今の現代においても魔物出現の謎は解明されていない。
それでも、人類は化け物たる魔物を野放しにしておく訳にはいかなかった。
放っておけば作物は荒らされ、人間をも食い殺してしまう。
そんな危険を排除し、未然に抑止するために結成されたのが『冒険者』である。
「よしっ! 依頼通りの大狼を倒したぞ! それにこいつ、魔石持ちだ!」
「こいつは凄いっ! 売れば50000ゴールドはくだらないぞ!」
彼らは『ギルド』という組織に加盟し、依頼をこなした成功報酬や狩った魔物の素材を売却してゴールドというお金に変換し、生計を立てていく職だ。
人の役に立ちながら商売ができる冒険者という仕事はやりがいとロマンを感じさせるものだろう。
――だが、既に歴史が証明しているように人は闘争に塗れている。
世の中はそんなに甘くはない。喜ぶ二人に鋭い眼光を向ける女が居た。
「――背中がお留守じゃない?」
一人の少女が『M92F』――通称『ベレッタ』と呼ばれる銃の狙いを彼らに定め、引き金を絞った。その瞬間、周囲には銃声とうめき声、硝煙の香りが漂うのだった。




