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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第七十九話 対傭兵 終幕

「さて、皆さん…を復活させたいところですが、今私は魔力が無くてですねぇ…ブラッドさん、貴方なら、出来るでしょう…?」


「……隠してたみたいだが、この領域に達してようやく気がついた…何が魔力が無い…だよ」

「……おやおや、よもや、気が付かれてしまいましたか…」

「あんた最初から俺を殺す気は無かったのか」

「いやいや。それなりに弱かったら殺すつもりでしたが、案外強かったのでね…さて、それでは治癒魔法お願いできますかね?」

「……まぁ、いいか。今は治神の力もあるしな…今のうちに…」


ブラッドは右手をかざす。目の前には約五十名近い戦闘死者及び負傷者がいた。


集団神・治癒(マスゴッドヒール)


負傷者の傷がいえていく。


集団蘇生(マスリザレクション)


そして、死者の復活。

死体がそれなりに健常体であるという条件と、術者の術力によって、死者の復活は決まる。


「さて…全員復活したか」

「…ふふ、さてこれからどう説得したものか…」

「…まぁ、いきなりSSSが倒れたって言ってもな」


そこでブラッドは違和感をかんじとる。


「……あ」


倦怠感と酷い眠気、頭痛が突然ブラッドを襲う。


「う、うお、お」


自分の身体がやけに重くなるのを感じながら、力が抜けていくのを感じた。

おそらく女神の貸してくれた力が終わりを告げようとしているのだ。


「……」


消えゆく意識の中、ブラッドは横目にザールを捉えた。その顔は、仮面で覆われており、表情は読み取れなかった。


しかしブラッドは、微睡みの中、確かに聞いた。


「皆さん、おはようございます。そして、終戦です」





目が覚めると、ブラッドの目の前には三人が座っていた。


「………どこだここ」

「……!ブラッド!目が覚めたか」


目の前にいたのは、ラリ、ヨーネ、ディアだった。


「お前たち……って!」


ブラッドは肩を脱臼してるのか、否、そういうレベルではなく、全身が傷んだ。


「…良かった。起きてくれて」

「……ラリ…ってか、傭兵達は?」

「もう用はないって、そう言ってどこかへ……」


去り際は実に傭兵らしいものだった。依頼主の消滅によって去っていく。ただそれだけ。そこには私怨も何もない。


「……そうか。ようやく終わったか」


随分と長く、戦っていたような気がする。そんな戦を終えて、ブラッドは少し物思いにふけていた。


「それで、お前たちはこれからどうするんだ」

「……俺たち…は」

「決めたんだブラッド、俺たち、明日にもこの街を出るよ」


「……そうか」

「ええ。きっと世界に認められるような冒険者になるわ!」

「あぁ、俺たちの活躍をまっとけ!」

「そ、そうです!僕はなんたって、貴方に魔法を教えてもらったんですから!」


……


「……いや」


──俺の方こそ…お前たちから。


「…じゃあ、そうか。今日はお別れ会だな」

「……大団円、宴ですかね!!」

「今日は飲むぞー!」

「やるわよ〜」



治癒魔法で身体の傷を一通り完治させ、四人で飯屋に行く。


「しかし、迷宮で飯を共に食ったことはあれど、こう、店に行くのは初めてだな」

「そうね」


少しの雑談の後、店に着く。


店はかなり落ち着いた店だが、鼻につくいい香りがした。

何か、懐かしい香りがした。


「ここのオススメは?」

「……んー、ろこもこって商品だそうよ」

「へー……あ、店員さーん…」


ブラッドたちは四人でろこもこを食うことになった。


「それじゃ、いただきまーす!」


ディアが元気よく飯を食いだしたのをきっかけに、みんな食べ出す。


「…ん」


あ。


「これ、あれだな」


小さい頃、ブラッドが一番好きだった、母親がよく作ってくれた料理、それにそっくりだった。


「……これが、どうかしたの?」

「……」


ブラッドは無言で口に運ぶ。その勢いは、かなりいいものだった。


「…………!?ブラッドくん!?泣いてるの?」

「…………」


ブラッドは無言だったが、ただ一言、口をいっぱいにして言うのだった。




「…………うめぇ」






翌朝。

四人組を見送りに森の前まで行く。


「ブラッドさん、今までどうも、ありがとうございました」

「よせよ、今生の別れでもない。またいつか会うかもしれんだろ。その時は」

「ええ!」


よろしくな。という言葉を飲み込んで、ブラッドはラリと拳を合わせる。


「ディアも、ヨーネも、達者でな」

「無論…最高の術使いになるわ!あの等級(ランク)SSの術使いを超えてね!」

「はは、そいつは厄介だな」


ブラッドはヨーネと瞳を交わした。


「ま、俺ら、そうやって頑張ってくから、応援よろしく!」

「……期待してる」

「期待してろ!」


ディアが、かっとわらった。ブラッドはそれに合わせてはにかむ。


「……」


別れの言葉はそれ以上無かった。餞別の土産もない。しかし、彼らは確かに得たはずだ。かけがえの無い経験と、一人の友人を。




何日か経って、アルペに要求されていた素材を集め終わった。


精霊召喚(サモンエレメント)


精霊ツァリを召喚する。


「あ、ブラッド様ー、久しぶりー…」

「おう、今回はお前に見てもらいたい相手がいてな」

「誰ー」

「目の前にいるんだが」

「…あ、この人か」


ブラッドの目の前にいたのは、浅葱。忍浅葱だった。


「ふむぅ、なるほどね。うん、いい人なんじゃない」

「そうか、良かった」

「……はぁ、何除け者にして話を進めているんだか」

「……浅葱、お前は本当に迷宮(ダンジョン)攻略者として、生きていくんだな」

「……ええ。まぁでもそうね。他の転移者を発見したら、私に報告して…って、これ前も言ったわよね…そう。そして見つけたら、私をそこに連れて行って欲しいの」

「……それはまた、なんで?」

「なんで…って、友達を助けるのに理由はいらないでしょ」

「…それも。そうか。なら、もう用はない。ありがとうな」

「ええ。まぁ、通信石があれば何とかなるし、よっぽど大丈夫だと思うけど」

「そうだな。それじゃ」


浅葱と別れ、ブラッドは南国を出ることにした。


ありがとう、南国フィリア、と。





ブラッドは王国へ帰ってきて、まず、母親の墓へといった。花束を抱えて、墓に置く。


「………母さん、色々。ごめんかった。でもこれから俺、母さんの為に、いや、俺のためにも頑張るよ。まだまだ、あんたがくれた愛情には劣るけど…」


そこでブラッドは、墓の前に座って、少しの小話を続けた。


「あぁ。そうそう、帝国の試合でさ──……酒が飲めるように……──友達もさ……──」








こうして、傭兵達との長い長い戦いが終幕した。

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