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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第六十五話 対傭兵 四

精霊、ツァリは元の場所へと返される(・・・・)

精霊にとって、返される、とはどういう意味を持つのか。

普通、精霊は森や精霊の国にいる。だから、本来は召喚されるということは有り得ないことだ。


召喚されるという概念は基本、どの生き物にもない。しかし、特定の種族は、契約(・・)さえ結べば、召喚することができる、という性質を保有している。


さらに、召喚者は自由な時間に自分と契約を結んだ者を召喚出来る。


そうして契約は結ばれ、精霊は召喚される訳だが、ブラッドがツァリと契約を結んだのは、殆ど幸運の賜物でしかなかった。

ブラッドがツァリと契約を結んだのは、彼が比較的今より若い、十五歳の時である。



その日、ブラッドはデスベルの森へと出かけていた。デスベルの森はその地に住む熊からとられた名前で、ブラッドにとっては親しみがある森であった。


ブラッドは歩いていると、発行する飛行物体を目撃する。


『……なんだ、これは?この森に長くいるが、こんな神聖なやつは初めて見た…』


光るそれを見てブラッドが呟くと──


『これ、じゃなくて、ツァリ。私はツァリっていう精霊よー』


ブラッドは少し驚いた後、怪訝な顔をして言う。


『精霊か。初めて見た…しかし、なんでこんな森にいるんだ?』


精霊は基本、魔力濃度の高い地域に住む。だが、デスベルの森はこれと言って高い魔力濃度がある地ではない。


『貴方には関係ないでしょ』


ツァリは関心なさそうに、どこかへ行く。


『おい、待て!』


『……?何?』


苛立ち、迷惑気な顔をしたツァリはブラッドを見下ろす。


『…お前、精霊なんだよな?だったら、俺と契約を結べ』


『はぁ?』


ツァリは目を開き、そして言う。


『馬鹿なの?阿呆なの?死ぬの?貴方、もう少し足りない脳みそを働かせて考えなさいよ。契約の意味、分かってるの?』


『いや、特には』


『…私を騙そうったって、引っかからないわよ…って、え?』


『だけど、精霊を使役していれば楽そうだと思ってな…』


『コイツ……!』


ツァリはあからさまに怒った態度をとる。


『来いよ?』


ブラッドは挑発のポーズをとる。そこでツァリの顔が歪んだ。


『ぶっ殺してやる!』


『──ははっ!』


ブラッドは笑う。

そして、ツァリはブラッドへ突撃した。



その後、どうなったかは語るまでもない。


ツァリに勝った後、ブラッドは精霊契約人数は一人につき一体であること、精霊によって様々な能力があることを教えてもらった。


『てか、こんなことも知らなかったの?アンタは』


『アンタ、じゃない。ブラッドだ』


『……人の名前なんていちいち覚えるのも面倒くさいのよね…』


『頼むよ、ツァリ』


『……ったく…分かったわよ。契約を結べばいいんでしょ、ブラッド(・・・・)


ブラッドとツァリは契約を結ぶ。

契約。

五ヶ条からなるその条約は人間さえ奴隷にする事が可能な、言わば犯罪紛いの行為である。


一条、契約者は主従関係を結ぶこと。また主の命令は絶対であること。

二条、主は無条件に下僕を召喚出来る。

三条、下僕は生命に危機が迫っている場合、契約を一時的に解除出来る。

四条、契約を解除することは原則不可能である。

五条、主の生命に危機が迫っている場合、契約を一時的に解除出来る。



契約を結んだ精霊は、召喚された後、その召喚が解除されると、契約者が生きている場合、特別な空間に飛ばされる。


その名も、【安全領域(セーフティエリア)】。


青い空間で取り囲まれたそこは、召喚される者が快適に暮らせるように設計してある。


トイレに風呂、はたまた本やゲーム、医療用具にベッドなど、あらゆる施設が整った非常に便利な場所なのである。


また、他者からの干渉は不可能である。


ツァリは、そこへと返された。


「ブラッドさま……」



「……」


ブラッドはザールの連鎖爆発チェインエクスプロードによって破壊された穴付近に立つ。


そこから、他の傭兵が出るのを待った。


「……!?」


そこで、ブラッドは地下から穴にかけて、吹き抜けるような炎が上昇しているのを感知した。


ブラッドは辛うじて炎を躱す。


「……」


そして、その隙をついて傭兵達は次々と抜け出し、上空から地上へと、四十人が降り立つ。


「おい…ブラッドとやら」


「……?」


そして、そこの一人がブラッドに問う。


「やつは…アリアはどうした?」


「あの、【再生】の能力とやらのか?」


「あぁ」


「殺したが」


「……なるほど。死んだか」


ブラッドへと質問した男は特に何かを感じた訳も無さそうに、次いで言った。


「【言霊】」


「……!?」


「俺の固有能力は【言霊】……喋らせた相手を完全支配する能力。お前は、まんまと罠に引っかかったわけだ」


「…が、あん、あ?」


「…?」


「う、あ、ぁぁあ、あっ!うぁっ!」


ブラッドの体が震え出す。


「……嘘だろ…この、術も完全には効かない…だと?」


術者が若干絶望する刹那、傭兵の一人が言った。


「お前たち、今のうちに攻撃を叩き込め!」


ラリシア含め、傭兵四十人はブラッドに対して総攻撃を行う。


が、居たはずのブラッドは消えていた(・・・・・)


「あばふっ!?」


すると、突然一人の首が飛んだ。


「──?」



傭兵の殆どが呆然とするなか、即座に対応したのはたったの五人。


世界で二番目に強い傭兵ザール。

ブラッドに強い警戒心をもつ、回復傭兵ラリシア。

世界三番目の黒衣を纏う傭兵、ラビア。

世界四番目の赤髪の男傭兵、ザック。

術を主に使う、世界七番目の傭兵、リンダ。


この五人は、その瞬間にブラッドを捉えどうするか判断した。


そして、五人とも空中へ飛んだ(・・・・・・)


「ふ」


「あ?」


その五人以外は──皆上半身と下半身が乖離した。




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