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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第六十ニ話 対傭兵 一

「……何者ですか?」


ラリシアは、己の刃が止められると同時にブラッドの方へと向いた。


「私の刃を止めた?……確かに私は剣士ではありませんが…その辺りにいる自称剣士では遠く及ばない程という自負があります…しかも……」


ラリシアはその刃に目を流す。漆黒に染まったドス黒い刃は、ブラッドの人差し指と中指の間に摘まれていた。


「俺は、ブラッドという。一応、旅人だ。さて、自己紹介はこれでいいか?」


「ふざけないで下さい。私は聞きました。貴方は、何者か、と。それに、ブラッド…ブラッドだと?」


ラリシアはそこで何かに気づく。

それは、ラリシアにとって重大なことであった。


「まさか……」

「とりあえず、この人をどうするんだ?」


ブラッドは両腕を失いもがく男を指さした。


「…」


ラリシアは渋々止血処置を施す。


止血(ストップブロード)

絶対気絶(アブソリュートスタン)


ラリシアとブラッドの魔法が同時にロズヴィアへと襲った。

止血により両腕から溢れ出る血が止まった。また、絶対気絶(アブソリュートスタン)によってロズヴィアは気を失った。


「さて、こいつは運ぶか」


ブラッドはロズヴィアに手をかざす。


集団転移(マステレポート)


「……!?」


ロズヴィアだけではない。ラリシアもその魔法へと巻き込まれていることが分かった。


「貴方、何を!?」

「…見ての通り転移さ」

「私を巻き込む必要はないのでは?」


ラリシアは若干の怒りを含めて言った。


「…」


だがブラッドは何も言わず、転移する際に発生する光によってその会話は遮られた。



「ここは…?」

「地下だよ。あー、ほら。確かこの五十一層は収容所があるだろ」

「…なるほど。その、『地下』ですか」

「そういうことだ。さて」


どさっ、と音をたててロズヴィアは地下の冷たい地面へと転がった。

ブラッドが抱えていたロズヴィアを地面へと落としたのだ。


「コイツは後でいいとして、アンタ、『俺』に用があるんだろ?」

「…貴方…わかっていますか?貴方の立場が」

「立場?」

「──四十一名」

「んぁ?」

「今回、貴方の殺害に動員される、等級(ランク)Sの傭兵達です」

「……ほぉー、それはすごいのか?」

「すごい?…凄いなどという言葉には当てはまりません。普通、等級(ランク)Sの傭兵は、どれだけ運が良くとも三人…そう、三人しか動員されません。つまり、貴方一人に対して四十一名というのは、破格。とどのつまり──」


ラリシアはその鋭い瞳をブラッドへ向けた。


「貴方は傭兵団の、大戦力をもってして叩き潰すという総意があるのです」


無論、今回駆けつけていないSランク傭兵も数多く、五十を越えるだろう。しかし、これほどまでの戦力を集めることは、やはり滅多に無いことである。


「なるほど、それは厄介だな。だが、不思議だな。傭兵ということは雇われだろ?誰に雇われたんだ?」

「雇われではありません。SSS(トリプルエス)様の総意です」


ブラッドはラリシアの方へと向かう。


「なぁ、来ないのか?」

「もちろん私も傭兵の端くれ。S等級(ランク)傭兵…貴方を、全力をもって殺させていただきます」


「うん」


ブラッドは頷く。

それとほぼ同時に地下の地面が崩壊した。



ラリシアは若干怯んでいた。

何せ、己を超える魔力量を持つ者を見るのが久しかったからだ。

更にそれだけでない。その魔力量の差が、圧巻。大人と赤子、それだけでは埋まらないであろう差がある。

地下に送られたラリシアは、まずブラッドに攻撃を仕掛ける事にした。

足を踏み込み、地面が割れた。

一足駆け出せば、彼女を止められる者あらず。

神速で駆けたラリシアがまず取った行動は、殴打、であった。


──魔力包容。

自分の肉体の一部に魔力を纏わせる事で、一時的にその部位を強化する能力。

高度な技術と多くの魔力を必要とする高等技術だが、ラリシアはそれを息をするように行うことが出来る。


「ふ──」 


ブラッドの眼前まで迫った拳は、ブラッドを撃ち抜いた。暴風と、破壊と、圧倒的な威力をもって、ブラッドの顔面はラリシアに破壊されるはずであった。


「──んッ!」


だが、しかし。


「──!?」


反撃(カウンター)


ラリシアは己の胸、鳩尾部分に深く突き刺さる拳を見て驚愕する。

それと同時にまずは退かねば、という意志の元、ラリシアはブラッドから離れる。


「私に、ごフッ、打撃技を打ち返す…?」


ダメージは大きくは無かったが、ラリシアは多少体力が削られた。だが問題ない。そもそもラリシア、彼女の本職は回復役(ヒーラー)である。


しかし、その他の戦闘面が出来ない訳では無い。

だが、この場合、彼我の戦力差が大きすぎたのだ。


「…」


ラリシアは若干の反省をした。自分から相手の挑発に乗りすぎていた事に気づく。


そして相手の行動をよく見ようと、今度は警戒して、ブラッドを常にとらえ続ける。


地雷(ランドマイン)、起動」


「っ!?」


ラリシアは爆破直前に地面の魔力の変化を察し、紙一重で避ける。


「なるほど、遠のけば魔法、近接では私は全く敵わない……ですか」


「なぁ、戦闘で独り言は隙だらけって言われないか?」


「──っ!?」


ラリシアの背後にブラッドが周り混む。


「しかも、プロの傭兵が」


ブラッドはラリシアを蹴り上げた。


地下室の天井へとラリシアがぶつかる。途轍もない衝撃音と粉塵とともに天井は崩れていく。


「く、ぅっ!」


ラリシアの戦い方は、ブラッドに比べてやや防御に寄ったものが多い。いや、寄らざるを得ない。なぜなら彼女は、回復役(ヒーラー)だからだ。


一方ブラッドは基本体術はあまり得意としていない、がしかし、魔法と魔力量、武器の扱いに関しては長けている。どちらかと言えば攻撃よりだろう。


ブラッドが攻撃し、ラリシアが耐え回復するという流れ。


当然、ラリシアのほうが負担は大きい。


「クソっ‥」


ラリシアは空中で防御しながら呟いた。

防戦必死であった。彼女にとって、苦境であった。

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