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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第五十七話 五十一層

「それで、俺は何をすればいいんだ?」


ブラッドがディナンシアへと言った。高圧的に。いや、寧ろ自分の方が上であるように。


「では、ここへ、入ってください」


ディナンシアが指したのは──


「冗談を言うならもっとマシなものを言え……などと使い回された表現はやめて、なるほど本気か?」


「もちろんです」


それは、牢屋。鉄格子に囲まれた狭い空間。


「……なるほどな」


ブラッドは他の牢の中を見て合点がいった。


「この迷宮(ダンジョン)というものは、攻略難易度そのものは実際のところ、あまり高くは無かった、がしかし最上層の全線しか帰還報告がないということは、他のチームや探検者は皆どこかでおっ死んじまったか、或いは、その層から何らかの理由(・・・・・・)があって動けないのか、ということになる」


「まぁ、人は人を騙し、利用するので…ね?それ込みでの難易度では?」


「そうかもな」


ブラッドが見たものは、牢に閉じ込められた多くの人々。廊下は延々と続き、また牢屋も延々と続く。


「一体、何人収容してるんだか」


「さぁ、それは私にも分かりかねますが……」


「そして、何故こんなことをする?」


「……さあ?」


「ハナから答える気がないな」


「バレてしまいましたか」


「……あぁ」


「…ッチ、なぁ、ディナンシア、コイツ殴っていい?」


「ダメですよ、イザーグ。貴方が殴っては、死んでしまいます」


「……くそがよ…ッ」


「…」


ブラッドは廊下を延々と歩かされ続ける。

気絶しているディアはイザーグに担がれている。


「着きました」


「……ここか」


まだ人の入っていない、牢屋であった。

薄暗く、また埃っぽい。


「人の入っていない、いや、入っていたであろう牢屋か」


「ご明察。残念ですが、貴方たちには拒否権はありません。入ってください」


「俺が抵抗したら?」


「殺すまでです」


「仲間もなぁ!」


「……そうか」


ブラッドは黙って牢の中へ入る。


「そして、ここからは出られないと思った方がいいです。この鉄格子は、鉄では出来ておりません」


「なるほど。見たところ、黒色魔竜石ブラックドラゴンストーンで出来ているようだが?」


「……………」


「ん?どーした。間違ってるのか」


「……テメェ、ぺらぺらぺらぺらと、ウルッせぇんだよ、人質のくせしてよォ!オラぁ!オラオラオラオラぁ!」


幾度も格子を蹴るディナンシア(・・・・・・)


「それがお前の本当の性格か?」


「その、見透かしたぜ俺〜、みたいな態度が一番イラつくんだよ!死ね死ね死ね!」


「…いや、俺が牢屋に入るとこうなるのか」


「…はぁ、はぁ…私は一度事務室へ帰りますので、イザーグ。こいつを見ておきなさい。不測の事態を避けるためです」


「分かったよ」


そうしてブラッドの前に立つイザーグ。


そのまま五時間が経過した。



「ん、ぅ、ぉ?」


半目になっているディアが目を覚ます。

そこは、牢の中。


「!?なんだこりゃあ……?」


「静かにしろ」


イザーグがディアの入っている牢を叩き、カン、と高音が鳴る。


「……一体?」


「俺らは閉じ込められちまったみたいだ」


「ブラッド……!」


「だからまぁ──」


ブラッドの目が怪しく鋭く光る。


「──暫くはここにいよう」



──迷宮五十一層が元来どんなものであったかと言えば、それはそれは普通の階層であった。


普通、と言うとやはり語弊が生まれるかもしれないので、補足説明を付け足すと、しかしやはり特殊な層であったかもしれない。


もともとは空に建築物が浮かぶ層だったのだ。

下は森で、湖のある層。


特筆すべきは空中に浮かぶ建築物たちであろう。


時たまそれが落ちてきて、地面へと突き刺さるのだ。

そんな迷宮五十一層だが、迷宮攻略最前線を任されなかった、一部の落ちたもの達が派遣される場所となった。


目的は迷宮五十一層にての素材回収。


実際彼らはこれを達成している。


迷宮五十一層における素材は豊富であり、また容易に補えるものでも無いので、定期的に外へと運んでいる。


モンスターの強さ自体はそこまで強くはない、がしかし、弱くもない程度で、中層攻略者にとっては比較的倒しやすい部類であったためだ。


が、しかし、外の迷宮攻略の連合は、彼らが他の探検者達を監禁していることを知らない。



「……ブラッド…?」


「……」


「寝てる…のか…」


ディアは冷たい地面に対して俯く。


「そりゃ、そうだよな。俺はお前のことを頼りすぎだ…誰だって疲れるよな…」


ディアは自分が今までどれだけブラッドに頼っていたのだろうか、と自分のことを戒めつつ、牢の中を見る。


「…」


硬いベッドに、冷たい灰色の地面。灰色の壁。

便器。よく分からない四角い穴。


「……これから、どうしたものか…」



──ブラッドは静かに胡座をかいて、魔力を練り始めた。


「……」


周囲の魔力を己の元へと集めていく。

周囲を取り巻くように魔力が渦巻く。


──魔力の基本的性質のひとつとして、魔力が多い場所に魔力は集まりやすいという性質がある。


ブラッドは女神を吸収し、王都ラディアの人々の魔力も吸収したブラッドのその莫大な魔力をもってすれば、魔力を集めることは容易かった。


「…」


──直感(イントゥイジョン)

ブラッドのもつ魔法の中でも比較的位が付け難い魔法のひとつである。

効果は、今後起きるであろう一定の出来事を予知し、それに対策する対策法がなんとなく(・・・・・)分かること。


明確に分かるわけでなく、なんとなく、である。


それがたまたま、魔力を練ること、だったまでである。


「……」


(おそらく、SSS(トリプルエス)の侵略が始まるだろうな…)


故の、準備──


(──間に合うか…?)



敵側はどうしても魅力的に感じてしまいます。

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