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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第五十六話 中層


「……人だと?この層にか…?」


ブラッド達は目の前の集団と対峙していた。

しかし、それは不思議なことでは無い。むしろ、今の今まで遭遇しなかった方が不思議である。


「……そうだ。我々は、迷宮(ダンジョン)攻略部隊、その中層担当にあたる。持っているそれら剣を、我々に差し出し給え」


「……?武器を出す必要があるのか?モンスターがいるというのに」


「自衛のためだ」


「……?」


「もしかすると、お前たちが今ここで我々に襲ってくるやもしれん」


「……はぁ?お前──」


ディアが講義しようとしたその瞬間、ディアの喉元に目にも止まらぬ速さで、槍先が到達した。


「………ッ!?」


「ごちゃごちゃうるせーなー。男なら、そんくらい捨てろよ……」


『なるほどなぁ……』


『ん?どうしたんです、ブラッド様』


『いや、コイツらに乗るのもあり、か。しかし、面白い事を考えるな』


ブラッドは持っていた剣を捨てた。

草の生えた地面へと落ちる。剣の銀色に、月の灯りがほんのりとぼやけて反射していた。


「……ぶ、ブラッド…!?」


「まぁ、いいから。とりあえず、拠点(・・)に案内して貰おう」


「……」


渋々であるが、ディアもラリもヨーネも保有していた武器を破棄する。


「ボディチェックだ」


──。執拗にブラッド達を触るものたち。



「ッいやっ」


「あ、ちょ」


ヨーネが声を上げる。


「……」


「……にひ、あー、すいません」


卑屈そうな顔をした男である。


「………」



「ほら、とっとと歩け」


ドン、と女に尻を蹴られるブラッド。


「……」


「何だその目は?」


「…いや、何でもない」


「…黙って歩け」


先頭の、リーダー格の男に言われるまま、ブラッド達は黙った。


「…よし、着いたぞ」


長くはかからなかった。

そこは、迷宮(ダンジョン)の中層付近であるというのに、まるで、──まるでそれは──


「………迷宮(ダンジョン)内に街だと……!?」


ブラッド達は驚愕すると共に、それが実現不可能では無いことに即座に気がついた。


『なるほど、外との時間の差異が有り得ないほどあるせいで、ここで新たに【街】を作成できたのか』


『にゃるほど〜』


「さて、では私は役目があるのでここで」


「……?」


リーダー格の男は何処(いずこ)へ行った。


「……──!」


ブラッドは勢い良く来た蹴りを掴む。


「不意をつく一撃とは意地が悪いな…?」


「…試しただけだ──では、これからは私についてこい」


「…」


女は意表を付いてブラッドへ攻撃を仕掛けた。ブラッドは警戒の念を解かず、歩き出した。



「なんだここは」


「黙って入れ」


そこは、大きな灰色の建物。学校のような構造をしていた。


ブラッド達がその中へ入ると、まず女に告げられた。


「……まずは男女にわかれろ。男はあっち、女はこっちだ」


案内をしていた女はヨーネと共に、壁に【女】と書かれた方へと分かれた。

内部は灰色をしており、暗い印象を受ける。中は狭い道が多くあった。壁ばかりである。

女の指示のまま、ブラッド達は歩く。


そして──ディアが扉を開けた瞬間。


「ごっはぁ!?」


ディアの腹部に拳が入った。直撃である。


「…ギャハハッ、この時が一番、おもしれぇぇええええぜぇえええええぇええ!!」


ブラッドの目の前に現れたのは赤い長髪の女で、鋭い目に八重歯、それから見たことの無い灰色の服…


「……気味の悪い女だ」


「…あぁん!?誰だてめー!」


その女は何の前触れもなく、ブラッドへ拳を振りかざした。


『なるほどこれは、確かにディアでは防げないか』


ブラッドはその一撃を躱した、が尋常ではない速さである。

女の拳が宙を切った。そして、女はキョトンとした顔をする。


「…これを受けたディアも、よく無事だな…内臓が傷ついていなければいいが…」


「躱した…だと……!?」


「だったらこれで──!!」


女の周りにオーラのような物が纏わり始めた時、


「こら、イザーグ」


背後から別の女性の声がする。


「……!」


「あまり、暴力を振るってはいけません。ねぇ?」


女はにこやかな笑みをブラッドへ向ける。


「私はディナンシア。こちらはイザーグ。お二人共困惑されていると思いますが、後ほど説明させていただきます…」


ディナンシアと名乗る女は金髪で、そしてイザーグと同様灰色の服を着ていた。


「ぐ、はぁ、後ほど……?」


ディアがその身を起こし始めた時──


再びディアは転倒する。


「?」


絶対気絶(アブソリュートスタン)


「……」


『Lv7以上の魔法だと……?』


『コイツは、人じゃないのですかね〜?』


ブラッドがよく見ればその女、ディナンシアは、人と若干違う点がある。


「なるほど、限りなく人に近い森妖精(エルフ)か」


「……どうやって、それを…?」


魔力視(ビューオブマナ)…魔力の色を見れば分かる」


「なるほど、そんなに初歩的な事でしたか。しかし、何故ですかね?」


「……?どうした、ディナンシア」


「私は既に、九十回(・・・)以上絶対気絶(アブソリュートスタン)を放っていますが、何故気絶してくれないのですか?」


「…さぁな?」


「単純な抵抗力…だとしたら貴方も人では無いはず…」


「……お前の技が弱すぎたんじゃねーの?」


『釣れるか……?』


『いえ、恐らくは』


「そうですね。では貴方は特例ということで、私に着いてきてください」


『なるほど、あくまで冷静に、か』


「何を止まっているんですか?はい、急いで下さい…」


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