第五十三話 SS
「では、本作戦、ブラッド討滅作戦の事項をお伝えします」
「ちょちょちょちょちょ!ちょーっとそれないっしょ、ザールちゃん!ねぇ?なーんも聞いてないよ。あーしたち」
「せやせや。ワイらはなんも聞いてへんで」
「……何故、彼を殺すか、ということについてですか?」
「そそ」
「……まぁ、あなた方はSランクなので多少調子の自由は、あまり咎めはしませんが、あなたのその言葉遣い、改善を検討しては?」
ザールは落ち着いた口調で尚且つ重厚に言った。
「え?あーしにいってんの?無理無理〜だってそんなんしたくないし。ってかなんであんたなんかに従わないといけないわけ?あーしはまだまだ人間殺し足りねーんだけど!キャハハハハハ!」
「……。そうですか。まぁ確かに気になっている方もいるでしょう。では私から、話させていただきます」
そうしてザールは話し出す。
手を広げ、仰々しく、
「──まず、事の発端はかなり過去のことになります。ので、ここはかなり省いて語りますが、彼ブラッドの母親をSSSは狙っていました。しかし、何者かに殺された。故に怒り、悲しみそして、考えた。どうしたはアレを得られるのか、そしてその考えの行き着いた先が、彼ブラッドです。彼女の息子である彼を捕縛し殺せば、最強の子を殺したというえもいわれぬ良い心地がするでしょうから」
するとまた別の男が反応した。そいつもSランク傭兵としてSSSに招集されたのだろう。
「……?それだけの為に、集められたのか、何かすごい宝が手に入るなどでもなく?金でも女でもない?地位でも名誉でもない…?はん、馬鹿馬鹿しい」
「一定以上の強さを獲得すると達観したような気に浸ります。がしかし、さらにその強さを越えると、自分よりも強者と戦いたいと思うようになります。あなた方は布石。いえ、出汁です」
「……は?出汁?」
「そうです。メインデッシュを美味しく頂くには前菜が必要でしょう?あなた達は、それです。引き立て役。まぁ、一言で言えば──」
「……」
「ただの部品に過ぎません」
「んだと……てめぇ…ッ!」
「あぁ、一ついいことを教えておいてあげましょう。この場にいるSSSを除いた人員ならば、私一人で殲滅可能です。くれぐれもお忘れのないように」
「……じゃあなんで俺たちを集めたんだよっ」
「だから言っているでしょう。あなた方を集めたのは余興に過ぎないと。すべてはSSSが決めたことでしょう?」
「……世界最強の傭兵が俺を呼ぶからと、何があるか期待していたんだがな……!ただ一人のガキを殺すだけとは。情けのない…!」
「……?はぁ。じゃ降りますか?」
「そうさせてもらう」
「ならば、お疲れ様でした」
「あ?」
「さようなら」
殺気。
男は飛び退く。
戦場でも感じたことのない程の。
粟立つほどの──
「……ッッ!」
「おっと、後ろを向いて咄嗟にジャンプ、逃げに関しては速いじゃないですか」
「……」
「……」
男はその時、違和感を感じた。
そして、周りの反応を見て、自分が違和感を感じたことを後悔した。
「あ」
首から下が、ない。
自分が飛び退いた思っていたが、体を回すところまでしか出来なかった。
ザールがあまりにも速すぎたのだ。
飛んだ首は地面に落ちて、血を撒き散らす。
「うげっ、汚ねー」
「まぁ、こんなものでしょう」
ザールは取り出した純白のハンカチを、その返り血に当て拭き取る。
「すごいでしょう、このハンカチは。ただのハンカチではありませんよ。ただのハンカチでは血は完全に拭き取れませんから。これは、決して染まることの無い、不染布で生成された特殊なものです。またその液体吸収能力は優れたものです。このように」
ザールがハンカチを握りしめる。
すると、純白のハンカチから鮮血が溢れ出てきた。
「素晴らしいでしょう?あぁ、素晴らしい」
「……」
その場のSランク傭兵で話せるものはいなかった。
彼、あの男傭兵も相当強かった。弱くはなかった。
だがしかし。
死んだ。瞬く間に。それを誰も観測出来ぬほどの速さで。
「では、作戦立案、プランについて話しましょうか。まず、彼ブラッドは現在、迷宮にいます。そこで、まずは私が彼らをここ地上へと出しましょう。そうすれば、あなた方で包囲して殺せるはずです。それでも無理なら私が。私が死ねば、SSSが。そうして殺していきます。あぁ、現在仲間と同行しているらしいのですが、勿論殺しますのでご安心を」
「……まぁ、俺もそれでいいぞ」
「……」
ザールはSSSの言葉を聞いてニィ、と口が裂けそうな程の笑みをみせる。
「では、次彼らが出てきて、そしてさらに次迷宮内に入る時私がついて行きましょう。あぁ、何故迷宮から出てすぐの彼らを襲わないか、って?」
「……」
SSSは、静かにワインを口に含む。
そして、ザールの方を見た。
ザールは口角を上げて言う。
「そりゃあ、つまらないでしょう?簡単に死んでしまわれたら……!」
喜悦に満ちた、百人の女が居れば九十人は惚れるであろう美男顔であった。




