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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第五十二話 傭兵たち

迷宮、五十層までブラッド、ディア、ラリ、ヨーネの四人組は到達した。

経過年数は迷宮内にて、凡そ二十年近い。いや、更にあるだろうか。

だがかなり進んだ事に違いはなかった。


「しかし、凄いなぁ。ここをもっと前に開拓して、進んだ人達がいるんだろう?」


「まぁ、最上位攻略者なんてのは大概そんなものだ。速さから思考から全てそれ一色に染っているからな」


「ふぅん。知ったように言うわね」


「俺の見てきた中ではそうだったと言うだけだがな」


「……って、ブラッドさん。層のキリもいいですし、一旦外に出ません?」


「そうするか」


ブラッドは転移用の円盤を取り出す。


そして転移を発動させた。



スタッ、とそれは降り立つ。


肉食獣のような鋭い黒い瞳に、動物のような白黒の髪。

服は重厚な黒で、腰にはベルトが巻き付けてある。


「ここは暑いからな。半袖の方が生活しやすいだろう。まぁ俺は暑さは感じないんだが、雰囲気作りには良いだろう?」


「そうですね。私も同感です」


「人を捨てて得られるものなど、たいしてありはしない。むしろ失う方が大きいというものじゃないかね。なぁ、ザックくん」


「……は、はぁ」


ザックはその男──世界最強の傭兵を見て驚いた。

髪の色以外、普通だ。

あまりにも普通。なのに何故かは分からないがザックは鳥肌が止まらないでいた。


「ん?あぁ、君が粟立って仕方がないのは、俺のせいだと思う。なんでも、魔力量や剣技、それから術力というものは、一定レベルを超えると感知することが不可能になるらしい。というより、同じ領域に立たねば感知出来ないとでも言おうか。俺としてはそれはそれで嫌なんだが、君がそれでも俺をみて何か感じるということは、余程勘がいいんだろう」


「……と、と言うより、いいか、質問しても」


「……ん?俺の答えられる範囲ならば可能だが」


「なぜ俺たちを集めた?世界中の最高クラスの傭兵達を?」


「ふぅ」


──SSS(トリプルエス)は席に着くと、無の空間(・・・・)から一瓶のワインを出す。


そしてまたどこからか出したコップにワインを注ぎ入れる。


「スぅぅぅ──」


香りを堪能したのち、SSS(トリプルエス)はくい、とワインを一口噛む。


舌で転がし、味を噛み締め、舌鼓を打つ。


「酒というのは、やはり適度に取るべきものだとは思わないか。俺はそう思う。一部の国家ではこれを法で禁止する国もあるらしいのだが、馬鹿馬鹿しくはないか。酒は、百薬の長、なんて言うくらいだ。俺としては最高の飲料の一つなんだがな。さて、では話の本筋に入るか。ザール」


「はい。私から皆様に、お願いがあります」


その発言、言葉の調子には、お願いと言うよりかは、命令という意が多く込められていた。


「ある一人の男の殺害。以上です」


「…………」


「……?」


「は?」


全員、ぽかんとした。


「ただ一人の殺害?」


傭兵として、戦争の前線で戦っていた彼らからしたら馬鹿馬鹿しい話だった。


何万人も殺した傭兵もいる。


基本、傭兵ランクというのは殺害者数、それからその残虐性に依存して作られる、査定されるものであるのだが。

そんな彼らのランクと言えば──殆どがランクS。

分かりやすい基準がある。


ランクE 0〜5人の殺害、またはそれに等しい犯罪行為。

ランクD 5〜100人の殺害。または戦争、戦地での大きな戦果。

ランクC 100〜1000人の殺害、またはそれに等しい犯罪行為。

ランク B 1000〜10000人の殺害、または一国に大きな影響を与える。

ランクA 10000〜50000人の殺害。または極悪行為。

ランクS 100000〜1000000人の殺害。または一師団を個人で殲滅。

ランクSS 戦争を個人で八割以上終わらせる。

ランクSSS 単騎で戦争を終わらせる。


「……ただ一人を殺すために、ここまでの精鋭を集める必要があるだと。それは何だ。【最強液状生物】並か?」


「そこまででは無いと思いますが……どうでしょう。かなり近くはあるでしょう」



「今回俺たち、まぁ一部都合により来てはいないが、俺が招集したSランク傭兵たち。お前たちの総力をもってしてやる。狙いは一人。だが向こうも俺たちを狙っている」


「……まさか、アイツか?」


「……アイツ?」


円卓の席で、Sランクの傭兵が静かに語り出す。


「あぁ、噂には聞いたことがあるが、確かSSS(トリプルエス)、アンタは帝国から目が付けられていたはず。ということは帝国の……最強の騎士、天上人ヴァイス……?」


「いえ違います。今回の相手は名は知られておらぬ者です」


「……誰だよ」


「天上人ヴァイスでも、地底王センヌリウスでも、熾天使王でも冥府の王でもありません。神でもない。それは、たった一人の女子(おなご)の娘」


「俺も見た中で最も美しく強かった女。姫騎士アラエル。その子だ」


「名を──」


「……」


「──ブラッドと申し上げるそうです」



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