第四十七話 対階層主
魔法障壁。
魔力の量により硬度が変化するそれだが、突破法は幾つかある。
最も単純なのはそれを攻撃によって破壊することだ。
次いで簡単なのが──
「それを越える硬度の魔法障壁を展開すること」
ブラッドは魔法障壁を展開する。
それは、階層ボスの魔法障壁とぶつかり、相殺する。
「……」
階層ボスの魔法障壁は破壊された。
『割れた!』
「さて、追撃といくか」
ブラッドはそこへ魔法を幾つか打ち込む。
魔法障壁が割られたのが初めてなのか、驚いた階層ボスに不意打ちする形だ。
黄金炎、闇水鉄砲、雷聖槍などの高等魔術を同時展開し、同時に発動させる。
そして、発射。
直撃する。
身を焦がす黄金の炎が、身体を刻む黒き水が、身体を貫く白き稲妻が。
全て当たった。
「まぁ、耐えるか」
ブラッドは対して驚かない。相手の魔力量を知っているからこその反応だ。
ブラッドは最近、常時で魔力視を発動させている。
故に全ての魔力を見ることが可能だ。
「最近はやりごたえの無い戦いばかりで少し退屈していたんだ」
階層ボスが喋りだす。
「お前は少し違いそうだな」
「はん」
ブラッドは鼻で笑い、そして走り出し、駆ける。
手から剣を出す。
それは、武器召喚。
その武器の名は──天上の剣。
かつて、女神、治神が使用していたものだ。
ブラッドからするとかなりの大剣で、一振りするのも相当な努力がいる。
が、ブラッドはそれを目いっぱいに振るう。
袈裟斬り、逆袈裟斬り、回し斬り、上へと振り上げ、突き、切って切って切る。
「かすれば御の字だ」
「!!?」
階層ボスは警戒していなかった。
なぜなら己の耐久力、防御力には自信があったからだからだ。
だがしかし、──
「くっ!?」
少しでも掠っただけで、もっていかれる。
とてもじゃないが近づけないと悟る。
「いい判断だ。だがお前には遠距離しかなくなるぞ」
「はん。お前、俺が魔法を使えないとでも?」
「そんなこと思ってないさ」
「ならば、死ね──ッッ!」
「……」
「空間斬!」
空間を裂く刃がブラッドへ飛んでくる。
それをブラッドは──
「魔法破滅」
「……」
圧倒的魔力量だからこそなせる技。魔法破滅を使用。
使用された魔法は消える。
「なるほど、貴様は魔法では俺より上にいるのか」
「そうだ。察せ、貴様に勝機はないと」
「ではこういうのでどうだ?」
階層ボスは手を結び出す。
指をうねらせ、組み換え、素早く、印を結ぶ。
「……ッ?」
『ブラッド様!あれは!』
「雷閃」
ブラッドは己の持つ魔法の中で最も早い魔法を使用する。
時間停止などは莫大な魔力を使用する割に相手によって効く、効かないがあるので不利だ。そもそも魔法発動まで時間が少しかかるので論外。
その点、雷閃は魔法詠唱から魔力の伝達、魔法の発現、相手への到達、どれをとっても全て速い。
転移拒否矢なども速いが、それは発動までに時間がかかりすぎる。
全体的に見て雷閃は汎用性が高すぎる。
「…」
だが、その程度の魔法は魔法障壁に弾かれた。
いつの間にか、魔法障壁を発動させていたようだ。
そして、ブラッドはそれを喰らう。
「妖艶回廊」
それは、術。
魔法とも剣術とも体術とも違った進化体系をとったものだ。
他国には機械なるものがあるらしいが、ブラッドは見た事がない。それと同じような感覚。
枠外の存在。レア。貴重。
ブラッドは術対策をそこまでしていない。
そして、それに嵌る。
「……厄介な!」
直接的な攻撃でないぶん、余計に厄介である。
そこは、長い道。
回廊のようにブラッドを取り囲うように細い道がいくつもにわかれている。
それは突如現れた。
幾つもの道が分かれているが、それぞれの先に必ず階層ボスがいる。
小さな点のようなそれはだんだん大きくなる。
「まさか、全て俺の方にくるなんてないよな」
『まさか〜』
「……」
「おいおい嘘だろ。なんでだよ」
ブラッドは若干怒りの口調で言う。
「全部相手かよ……!」
階層ボスが大量に増え、ブラッドを襲う。
それぞれが同時に魔法を発動させる。
それ全てに魔法破滅をかけるのは不可能だ。
ならばブラッドはブラッドの魔法障壁で耐えるしかない。
「来るか」
「隕石」
「地震」
「大洪水」
「大火災」
「流星群」
「事象の平面」
天災級の魔法がブラッドへ降り注いだ────




