第四十六話 開始
「次元転移」
転移。
「次元転移」
転移。
「次元転移」
転移。
転移、転移、転移。
ブラッドは幾度も転移を続ける。
──そして、それは来た。
「次元転移」
ブラッドの身体は、すぅと消え去り、そして上の層へと転移する。
が、しかし。
「──がッッ!?」
ドン、と鈍い音がする。それは、階層の天井を指していた。
「……この空は、作り物なのか!」
見えている暗い空は、どうやら作られた背景の様なものの様だ。
「……火山と、森…?これが、最新の層、或いは最終層なのか」
『最終層だったら外に出るんじゃないんですかね。確か、階層ボスを倒さないと次の層に決して行けないんじゃ……』
『なら、この層のボスが倒されていないということか』
『おそらく』
「ならば、ここに浅葱がいるのか」
彼女、忍浅葱は迷宮攻略連合、その副隊長とブラッドは聞いた。
ならば、最新層にいるのは当然のこと。
「さて、この馬鹿みたいに広いエリアまるまる一つ攻略するのに一体どれくらい時間がかかるのやら」
すると、ブラッドの背後から一匹のモンスターが現れた。
それは突然の事である。
「……!」
(俺が気づけないだと!?)
「転移」
攻撃を転移によって回避する。
「……骨?の面を被っているのか」
動物の骨の面を被ったモンスターは、人型である。
「……流石にこの辺りの層にもなれば、モンスターは手強いか」
ブラッドはぞろぞろと周りにモンスターが集まる気配がした。
囲まれるのはまずいと思い、飛行によって上空に飛び出る。
「……しっかし、火山が近いせいか暑いな…」
「シャァァア!」
「は、せいぜいそこで威嚇して──ッ!?」
飛んでくるのは、刀。
「なんだ?武器?」
ブラッドは辛うじて躱すが──
「んぉっ!?」
目の前を炎が覆う。
「面炎か」
前面広範囲に炎を吹きかける魔法。
「この階層にもなれば、魔法を使うようになる。厄介極まりないな」
ブラッドは面倒だと思いつつ、相対する水魔法を発動させる。
「水切り」
高圧の水が飛び、人型モンスターの首を捉えた。
そして、直撃する。圧倒的鋭利なそれは一撃でモンスターの頭部を……
「…耐えた!?」
ダメージはあるようだが、耐えている。
生き残っている。
「な、に」
ブラッドは魔法の威力には自信があったが、それを見ると少し萎えた。
「クソが。黒炎」
対象を絶命させるまで消えない炎、黒炎が直撃した。
「…流石にこれは」
それは、効いた。
モンスターは炎に焼かれ、絶命した。
「……しかし、一体一体があのレベルか」
とてもじゃないが、今のラリやディアやヨーネでは太刀打ち出来ない強さだ。
「……とにかく、忍浅葱を探さねばな」
ブラッドは飛行し、空から探す。
かなりの魔力量を見ていたし、遠目から見てもわかるレベルだったはずだ。
そして、ブラッドは見つける。
「あの魔力量は…」
莫大な魔力量。間違いなく彼女だろう。
ブラッドはそこへ飛行し駆けつける。
「……」
そして、地に降り立つ。
「…なんてことだ…」
「…」
ブラッドは後悔した。
「モンスター……だと?」
◇
その魔力量にブラッドは驚愕する。
「……お前は、まさか、階層ボス……」
「…ん?」
「……!?」
モンスターが喋った。
それはブラッドにとっては驚かざるをえない事だった。
「…いや、この層レベルにもなれば知能もまして話せるようになる、のか」
言語化の魔法があるので、一応、全ての言語に対応して理解は出来る。
ただ言語化の魔法は母国語のように聞こえる訳ではなく、何を伝えたいか分かるだけで、小さな差はすくいとれない。
「…なんだ?お前は…」
「それは俺が質問したいところだがな。まさかモンスターが話すなんてな」
「俺はそうあれと作られただけに過ぎん。所詮我々は創造された存在でしかないのだからな」
「……創造?もしかすると、迷宮を作った奴がいるのか?」
「…さぁ、な。ただ、お前のような奴を殺せという命令は延々と聞こえてくるがな」
「随分と物騒だな」
「そうか?」
ブラッドは瞬時に相手の強さを読んだ。
これは強い。
「……」
ブラッドは魔力を放つ。
それに呼応し、相手の魔力と混ざりあって力場が歪む。
次元が捻れたように、ブラッドと階層ボスとの間の空間が捻れる。
「……」
『ブラッド様、あの女を探すのでは?』
『だが、こいつをやらねぇと話にならない。いや、と言うよりあの女じゃこいつは倒せないな』
『……確かに、そうかもしれませんね』
ツァリの声は若干震えていた。
『なんていう化け物…』
階層ボスは魔法障壁を展開した。




