第四十一話 教えを乞う
隕石は迷宮八十九層を覆うようにして堕ちていく。
その大きさは、十メートル以上はあるだろう。
高さが高さ故に、皆には点のようにしか見えなかった。
「おぉ、神よ」
迷宮攻略連合の一人が言った。
それは、まさに神の御業のようである。
そして、瞬く間に迫り来て、地面、いや、大木に直撃した。
「ッッ」
爆風と閃光と爆音が、八十九層を覆った。
「吹き飛ばされないようにしろおぉッ!」
皆地面へ張り付く。
「ぐう、ぅぅうううっ!?」
それがどのくらい続いたのかは分からない。
キーン、と全員に耳鳴りがする。
「ぅ、ぁ、くらくらする」
「あ、あぁ。…!そりゃそうじゃろ」
「……!!なん、ッだあれ…!?」
地面が抉れている、というレベルを遥かに逸脱していた。
地面が、無い。
焼きただれた地面は赤熱している。
赤く、また焦げたようだ。
「すげぇよ、あれ。地面が沸騰してる…」
砂利などが溶け、一部溶岩と化していた。
ディレベルは大きく手を挙げた。
「八十九層、ボス、討滅」
動いていた大木の跡など一切無かった。
焼かれた地面が焦げた匂いを発す。
「さて、浅葱が来たら九十層へ行くぞ」
◇
「もう集まってんのか」
「はい。みんな、もう待ちくたびれてますよ。ブラッドさん」
「…はぁ。さんづけはやめてくれ。呼び捨てか、くん付けろ」
「えぇ、っと、じゃあブラッド君」
照れながら言うラリを見て、ブラッドは心が少し朗らかになった。
「そうそう。それでいい」
「じゃあ俺達も、ブラッドって呼んでいいんですか?」
「変な敬語も要らない。これからは一蓮托生…迷宮攻略者になるんだからな」
「よろしくね、ブラッド」
三人とブラッドは、握った手を、その拳を合わせた。
「行くぞ」
◇
ブラッド達の住まう世界の基本の時間の流れ。
一日は二十四時間であり、一年は三百六十五日。
そして四年に一度日を一日増やす──と。
浅葱が来た地球という惑星と何ら変わりはない。
故に──
『外での一日は、ここにおいて約四年か』
『ん?そうなんですか?ちょっと計算しないといけないですね…!えーっと、一分が一日ってことは、一年がだいたい六時間ですか?』
『ってことは、一日四年だろ』
『あぁ、そうですね』
『さて…迷宮に入ってもう二ヶ月たった訳だが』
『外じゃ一時間くらいですか』
「…」
現在第九層。
「ふぅ、ブラッド、やっと一段落ついたぜ」
「あぁ」
第九層の敵も、しっかり強化をかければブラッド達は問題なく倒せる。
「……」
休みのため、みな座り、何か談笑している。
そこで、ある話題をブラッドは切り出そうとした。
しかし、何故か気まずい。
『…何故だ…?』
『…アイツらと仲良くなったからじゃないですか?』
『いや、そんなまさか。有り得ない』
(誰かと仲良くするなど──馬鹿馬鹿しい)
「なぁ、ラリ」
「…分かりますよ、それ。それでどうな──ッ…はい!?」
普段ブラッドから話しかけることが滅多にないので、ラリは驚愕した。
「な、な、な、な、なんでしょうか!?ブラッドくん」
「いや、まぁ、そのなんだ」
「…?」
「俺に、体術を教えてくれ」
「え」
「ん?」
ディアも、ヨーネもきょとんとした顔をする。目を点にして。
「はい?」
それはラリも例外じゃなかった。
◇
「いやいやいやいや、僕がブラッド君に?そんな無理ですって」
「頼む」
「え、えぇ」
困惑するラリ。
「まじかよ、ブラッド。なんで急にそんな?お前は魔法使いじゃないのか?」
「あぁ。でも、近接戦闘も出来た方がいいだろ」
「いや、だったら剣術があるじゃねぇか。魔剣士なら、強さに限界はあるが、それなりにいいんじゃないのか?魔闘士なんて滅多に、というか俺は見た事ないぜ」
「……ブラッド、あなた急に酔狂な…頭でもぶつけた?」
「…本気だよ俺は。純粋に力が欲しくてな。その歳で俺たちについてこれるなら相当な才能があるってことだろ」
「いや、才能ってそんな」
「なぁ、頼む」
「……」
ラリは少し身を引いて、それから決意した。
「…じゃあ、分かりました」
「おぉ」
「ただしぃ、僕ァ手を抜きませんからね」
「あぁ。そうしてくれると頼む。そうだな、暇な時間は俺に特訓をつけてくれ」
「分かりました」
「あぁ、ありがとう」
「なぁ、ラリ」
「はい?」
「それ俺も参加していいか?」
「えぇッ!?」
「あぁ、私もいい?」
「えぇ!?」
ということで、何故か体術の特訓はブラッドだけでなく、ディアとヨーネもうけることになった。
後から内容が多少変化する事もありますが、ご了承ください。




