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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第三十九話 第六層

鉄塊人形(ゴーレム)はブラッドも初めて戦う相手であった。


何か不測の事態が起きるやもしれない。

そう考え、精霊ツァリに聴く。


鉄塊人形(ゴーレム)、分かるか?』


『あぁ、昔見たことありますよ』


『おぉ。で、どんなだ?』


『んー、そうですね。動き自体はかなりゆっくりなんですけど、防御力と攻撃力がえげつないですね』


『見りゃわかる。何か弱点は?』


『弱点…んー、これと言った弱点はないですが…』


『…?何かあるのか』


『えぇ、っと。こう言うとちょっとアレなんですけど』


『?』


『すごく、弱いですよ。ブラッド様なら余裕なくらい。だって私でも倒せますもん』


『…!?』


ブラッドは驚愕しざるを得なかった。

なぜなら、彼女、ツァリでさえ倒せるということは、攻撃に特化してない補助精霊が倒せるということは、それはもう本当に弱いとしか言いようが無いということではないか。


「…ちょっと、いいか」


ブラッドは三人へ語る。

三人は既に臨戦態勢に入っており、警戒中だ。

確かに、見た目だけなら非常に強そうだが──


「ちょっと攻撃してみる。黒電撃(ダークライトニング)


黒き稲妻がはしり、鉄塊人形(ゴーレム)に当たる。


「…どうだ?」


バチバチっ、と電気が迸った後、残っていたのは、鉄クズだけであった。


『…………いけるな、これ』


『ね〜?』



ブラッドは前線を三人へ任せても良いと判断する。


「頼もう」


「あぁ、頼まれた」


「任せてください」


「行くわよ」


三人は駆ける。

まず身体能力の最も高いディアが一体の鉄塊人形(ゴーレム)に到達する。

そして、剣を振るう。


「はぁッ!」


ブラッドの目から見ても、太刀筋はそれほど悪くはない。

が、己と比べれば流石に劣るが。


「ゴォ」


鉄塊人形(ゴーレム)の体に剣がくい込み、そこからヒビが入って、鉄塊人形(ゴーレム)は自壊する。


「ふぅ」


「……さて、次は──」


──メリケンサックをつけた少年。ブラッドが歳を聞くと、なんと十三歳と言う。


彼の名はラリ。ブラッドは興味があった。


体術で闘うものをあまり見ない為だ。

何か得られるかもしれない、と目を見張る。


「ほぉ」


鉄塊人形(ゴーレム)の動きを完璧に見切った殴打である。

回避場所、攻撃の避け方、それから上手い力の運び(・・・・)、数々の暴力が鉄塊人形(ゴーレム)を襲う。


そして、気づけば鉄塊人形(ゴーレム)は破壊されていた。


「ほぁッ!」


最後は術使い、ヨーネである。

魔法とは違った進化体系を辿ったもの。術。


術使いは貴重なため重宝される。ブラッドも術はほとんど使えない。


幻影(イリュージョン)


二匹の光る蝶がヨーネの手元から生まれ、ぱたぱたと飛んで鉄塊人形(ゴーレム)の前を飛ぶ。


「さて、人工物(アーティファクト)に幻術は効くかしら?」


「お、おぉ」


効いていた。

鉄塊人形(ゴーレム)は自分で自分を殴り出す。


「洗脳に近いな」


これが、幻術系統の厄介なところだ。

術に嵌れば自分で自傷行為をしようとそれは、全て相手への攻撃に自分の脳内で変換される。

もしかすると、一番厄介なのは、この女かもな。

そうブラッドは思った。


そうして、最後の鉄塊人形(ゴーレム)は崩れていった。


「ふぅ…なんとか一区切りか」


「はぁ………?」


「……?どうしたラリ」


「……い、いえ。でもなんだか不思議だなーと」


「……?」


「だって、僕全く疲れていないんですよ」


「…!」


そしてその言葉でブラッドも気づく。


「腹も空かんな、そう言えば」


もう何時間かいると言うのに、尿意もない。

その異変に気づくべきであった。


「どういう事だ?」


「とにかく、この白い空間をとっとと抜け出しましょうよ」


ヨーネが言う。


「あぁ、そうだな」



「…第七層、遠いですね」


「あぁ。歩いてもう何日かになると言うのに、変な事だ。全く腹も空かんし、眠くならない。ここは一生明るいままだしな」


「…ひょえー、疲れたー」


「…皆さん、見て下さい!」


「ん?あれは」


「光です。迷宮(ダンジョン)層攻略の光ですよ!」


「やっとか」


この白く雨の振り続ける空間はやっと終わりである。


その次の層は──


「これが、第七層か」


草原であった。



「一旦、帰ろう」


「はい。…!あ、で、でも」


「ん?」


「来る時って、転移で五層までは行けますよね。でも、ここまで来ることは出来ない。じゃあまた何日もかけてここまで来るってことですか!?」


「…いや、まぁ本当ならそうなだろうけど」


ブラッドは懐から丸い円盤を出す。


「なぁに?それ」


「こいつァ、ちと特殊な魔法道具(マジックアイテム)でな。友人から貰ったものだ」


『さっき適当に創造(クリエイト)してたのが?』


『まぁ、な』


「ここに置いておけば、いつでもここへ転移可能だ。しかしまぁ、第七層の敵に壊されたらたまらんから防御魔法はもちろん貼るがな」


「流石ブラッドさん、用意周到ですね、ウチのとは違って」


「おい!ウチのって言うな!」


「…よし、じゃあ帰るか」


「あれ?帰りはどうするの?」


「もちろん、転移だ」


「え?」


「外にもこの円盤がある。とうの昔に俺が付けておいた」


「「「ゆ、有能〜」」」


三人は声を合わせてそう言った。

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