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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第三十八話 それこそ

迷宮(ダンジョン)、八十九層は巨大な巨大な大森林であった。


「なんだか、温かいわね」


忍浅葱は、そこで、夏を思い出した──



──。


「浅葱〜」


「何よ、もう」


二人が通う道は砂利道で、そこは山で覆われて、少し奥に行けば海がある。

田舎だった。


「暑いね〜」


「暑いわね」


じんじんと照る太陽は、二人を煌々と照らし続ける。

そして、風が吹いた。


「気持ちいいね」


「ええ、そうね」


隣には小川が流れている。セミがうるさいくらいに鳴いている。


「…空、青いね」


青空が、広がっていた。雲がまばらにある。


「積乱雲ね」


「綺麗」


ザッ、ザッ、と大地を踏みしめて二人は歩く。

次第に周りは草木ではなく、古い木造の家に変わっていった。

古臭い自販機もある。


「スマホもある時代に、こんな錆びた自販機だなんて、何か風情があるわね」


「そうね〜」


忍浅葱の隣には、天野朱雀がいた。

彼女は、浅葱の唯一の友人であった。

彼女らが通う高校は、非常に田舎だった。


「学校近いわね〜てか、あの牛飼のおじさんまだなんかやってるよ」


「えぇ。水車がまわっているわ」


「子供たちが走りあっている」


「……夏ね」


「そうね」



「戦型、第一陣!」


浅葱がそう叫ぶと、それに答えるように迷宮(ダンジョン)攻略連合の兵たちはぞろぞろと動き出す。

森の中にいるのは──


(……?何かしら、あれは。弓使い?森妖精(エルフ)の類か?)


木の上から彼ら攻略者を眺める、何十に及ぶ影。


「魔法、用意」


魔術師達が、魔法を構える。


「撃てぃ!」


数多の炎球(ファイアボール)が大森林の木の上へ放たれる。

しかしそれらは──


「魔法障壁……!」


魔法障壁という魔法に対する壁で防がれた。

あれを壊すには──


鉄槌(パイルバンカー)、行きなさい」


「了解!」


魔法障壁ならず、盾役、援護役、そういった役割をすべて壊すのが、鉄槌(パイルバンカー)


「ふぅん!」


鉄槌(パイルバンカー)は跳ぶ。

勢いよく跳んで、木の上──二十メートルはあるだろうか──に降り立つ。

そして、ハンマーを構えて。


ハンマーで魔法障壁を砕いていく。


「はっ!やっ!」


ただ、砕くだけ。それだけ。

その存在に、【敵】は怯む。

そして、その刹那の隙を決して逃さない。


「影分身生成」


浅葱の影分身が生まれ、それらが素早く木の上へ登っていく。


「ふん!」


それぞれの影分身は持っているクナイで【敵】をなぎ倒していく。

忍者の特性は、致命。

致命(クリティカル)攻撃で、一撃で仕留めることが多い。

故に素早く戦闘が終わる。


「戦闘、終了」


忍浅葱の何が優れているのか。

その成長速度も侮れないが、同じくらい優れているものがある。それは、魔力量である。

異界召喚者は既に没した女神、治神(ヒーラ)のつけたランクなどに関係なく、魔力量が異様に多い。

それ故に、忍浅葱の魔力量は多い。


「はぁ。一旦休憩するかしら」



第五層。

ブラッド達は、殆どの【敵】を倒した。ブラッドはその死体を見て思う。


「…」


『何だこれは?』


『ブラッド様、私精霊として長く生きていますけど、こんな生物?見た事ないですよ〜』


『いやぁ、これはそもそも』



──生き物なのか?



「ふぅ、ここの飯は本当に不味いわね」


「そ、そうですね」


「私は、ここでの生活をもう少し快適にしたいんだけど、難しいのよ」


浅葱は語る。


「しかし、これらのモンスターが不味いのは仕方の無いことでしょう」


「んー、そうなんだけどね」


「…ここでしか生きられないもの達、か」


モンスターは迷宮(ダンジョン)の外へ出られない。

これは、掟である。

持ち出す事は可能であるが、しかし、己から出る事は不可能である。

いや、そもそも階層をまたぐことすら出来ないだろう。


「特殊な結界がある訳でもない。おそらく、そう設計されているのね」



「これが、第六階層への道か」


巨大な坂がある。

その奥は闇で包まれている。だが上へ続く道はこれ以外にはないだろう。


「さて、登るか」



陽の光が指す。と、思えば。


「暗いな、曇りかよ」


曇っていた。そして、しとしとと雨が降っている。

その雨はどこまでも続いていた。


「なんだ、ここは」


白い白い空間が続いていた。

そこに淡々と雨が振り続けていた。


水防御プロテクションウォーター


水に対する防御魔法だ。しかし、摂取する水などまでは防御しない。というか、する事が出来ない。


「不思議な場所よね」


ヨーネは感嘆する。


「ここは、なんだ」


白き白き空間。


「あれが、モンスターか」


第六層、敵。


人工物(アーティファクト)鉄塊人形(ゴーレム)か」


ブラッドは噂程度に聞いたことがあったが、まさか三メートル程の大きさとは思わなかった。


「お前ら、いくぞ──ッッ!」


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