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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
異界召喚編
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第二十八話 依頼

「……だが……この、神の状態というのも…つか、れ、るな…」


ブラッドの意識はそこで途切れた。



目が覚めれば、そこは見慣れた王室だった。


「倒れ込んでいたのか、俺は」


「えぇ」


いたのは、この国の姫であるアロヴァ。


「…アルペは?」


「隣の部屋にいますわよ」


「そうか」


「えぇ」


「……俺は、夢を見ていたのかもしれない」


「……?どんな?」


「神に成る…っていう」


「?いや夢ではありませんけども」


「…え?」


「その胸を見てください」


「…!!?」


ブラッドの胸には七色に光る血管があった。

それこそ神族の証、七色血(レインボーブラッド)


「…だが俺は今、人の魔力が流れているぞ?」


「…んー?何故なのかは分からないけれど…人であり神である…のかしら?」


「そうなのか」


人であり神である…何か違和感があるがまぁいいか、とブラッドは思う。しかしそれでは半神ではないのか。

そう思っていると、突然王室の病室へ人が入って来た。

髪を綺麗に結ったポニーテールの金髪の女だ。顔立ちは凛々しい。


「……アンタがブラッドさんか」


「…?誰だお前は」


「アンタ、相当強いんだろ」


「……だから誰だよ」


「私か?私は帝国三騎士の一人、リズア。以後お見知りおきを」


「…はぁ?」


敬語と、そうでない言葉の入り交じった口調は頓珍漢に感じた。


「で、帝国三騎士様が何の用だ?」


「ふむ、貴方に依頼を一つしたい」


「…貴方…急に入ってきたと思えば、怪我人に対してその無礼、私が許しません…!」


「……ふむ。だがしかし貴方のお父上には許可は得ているぞ?」


「え?」


「さぁ、依頼だ。先日、帝国内より観測された。南方へ三千キロ先、南国フィリアにて最高位指名手配であるSSS(トリプルエス)が観測された」


「……なるほど」


「と。いうことで、SSS(トリプルエス)の討滅を是非貴方に依頼したい」


「…?俺に?帝国が発見したなら帝国でなんとかすればいいんじゃないのか」


「そうにもいかないさ。SSS(トリプルエス)はその異名を単騎の力として保有している。単騎でかのものに勝つことは難を極める。そして何より、逃げ足が半端じゃない」


「包囲とかすればいいじゃないか?」


「かつてした事があるが、余裕で逃げられたな。上位騎士も二十名近く死んでいる」


「…ってことは帝国にとってSSS(トリプルエス)は因縁の相手なんじゃないのか?」


「そうでもあるが、しかし勝てる見込みのある者もいないからな」


「で、どうやって俺に辿り着いた?」


「はは、帝国の大会を忘れたのかい?」


「なるほど、てめぇら記録を見やがったな」


「さて、報酬だが──」


「──…なるほど、ならやってやろう」



ブラッドは不思議に思っている。

何故、己は神の力を使えないのだろうか。


「…」


身体から出る魔力は今までと同じ人の魔力。

色を見てもそれは人の魔力の色である青色であった。


「……どういうことだ?」


もしかしたら、自分は神になり損ねた、のかもしれない。

とにかく真偽は定かではないが、この際神であるとかそうでないとかはどうでもよかった。


「……ところでアルペ」


「ん?」


ベッドの上で寝ているアルペを横目にブラッドは淡々と告げる。


「俺は南国、フィリアに行く」


「…あ、そう」


「あぁ」


「……行ってくれば」


「…あぁ」


「まぁ、止めてもいくでしょうけどね」


「まぁな」


静寂が流れる。


「ねぇ、ブラッド」


「ん?」


「今回の女神と天使の件…どう思う?」


「…何かの策略、みたいなものか?」


「えぇ」


「今回は女神が主犯格だと思うがな」


「そうよね、流石に神が操られるとは思えにくいし」


「…だが、何か事が上手く行き過ぎているような気もするが…」


「……それは勘違いだといいのだけれどね。ところで、今回一番の謎があって」


「謎?」


ブラッドは黙考する。


「…確かに違和感はある。今回の帝国の依頼と何か関わっていなければ良いんだがな」


「…そうね」


ブラッドはつくづく感じていた。しかし同時にそれが避けようのないくらい現実味を帯びていることも。これからが最も大変だと言うことを。


(……嫌な予感がするな)


神の力なのだろうか、ブラッドは胸の奥で警鐘がなっている気がした。



ここは、南国フィリア。

そこに、一人の少女が転移され、そして一月余りが経った。

少女の名前は、忍浅葱。

一応女神からはSランクの証を受けていた女だ。


「…さーん」


「ぽけー」


「アサギさーん」


「うにゃはらにゃぁ!?」


「……どんな声出してるんですか…全く…じゃあこの依頼、お願いしますね」


「…あ、はーい。マリーちゃん」


浅葱は物凄いセンスを持っている。

たったの一月でこの南国の言語を習得してしまったのだから。


「……さて、今日も入りますか」


──忍浅葱が入るのは、巨大な門。

その名も、迷宮(ダンジョン)

なかなか幸せな日常です。

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