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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
異界召喚編
28/83

第二十七話 そして神に成る

猟奇的な思考、行為である。

女神を食すなど、人智を超えた、なんと烏滸がましい行いであろうか。

しかし、彼はそんなこと微塵も考えない。

考える脳を捨ててしまったのかもしれない。


そして、女神の眼球も、女神の心臓も、女神のあらゆる部位を彼は食す。

女神は被害者となり、同時に彼もまた、被害者となる。

ヒトが神を喰らうとどうなるのか。そのあまりにも怪奇な疑問に、ブラッドは答えを持たなかった。その答えは……恐らくは……



「う、ぐぅっ?」


ブラッドは呻く。

肉体に鈍痛がはしる。

恒常的に鈍痛がはしる。身体中が、メキメキと押し潰されるような痛みであった。



「うご、け、ない」


身体が停止する。理由は単純であった。

魔力の過剰摂取。そして、神喰らいという行為。

それらが原因であることは明白だった。


しかし、ブラッドは風邪などに対する耐性があるのだ。

腐肉を食ったところで決して腹を壊さないほどのものがあり、自己の肉体強度には自信があった。


「……ん、だぁ?これ、は」


「……それは、何かしらね…?」


「あ、あ、る、ぺ?」


「暫く待っても来ないからね。私から来たってわけ…で、なんで蛆虫みたいに這ってるわけ?」


「ふ、ふふふ、あは、は、く、くってやったさ」


「食った?」


「あぁ、女神の野郎を…な」


「……!!…そう」


アルペは少し遠い目をして、聞いた。


「じゃあ死んだという事でいいわね?」


「あ、あぁッ!」


「……それ、動けるの?」


「い、や、無理、だ」


「でしょうね、どうするの?私も女神を食ったやつなんて初めて見るからどうすりゃいいのか分かんないんだけど」


「…」


だが、アルペはそれの原因に少し検討がついていた。


「一般に、ヒトの魔力の色、まぁ元来は無色なんだけど、ある魔法を使うと見える色…はね、青色を示すのよ」


アルペは指を振るう。


魔力色(マナカラー)


すると、ブラッドの身体から溢れんばかりの金色の魔力が出ていた。


「……金色、やはり神族の魔力ね」


「…それ、が?どうし、た…ごふ」


ブラッドは少し吐血する。肉体への負荷が重くなってきている。


「なら対策法はあるわ。3000年前の文献が正しければ、だけどね」



およそ3000年前の文献にはこうある。

ヒトが神に成る際の話だ。


金色の魔力がそのヒトから溢れる。

金色の魔力を纏うそのヒトは馴染まない魔力、自分にとって大きすぎる魔力に圧迫され殺されかける。

そのヒトを助けるため、一国(・・)が援助した。


それは、至ってシンプル。

金色の魔力量が爆発的ならば、その魔力量にヒトの魔力量を合わせてしまえばいいのだ。


そこで開発された魔法が、魔力譲渡(トランスファーマナ)


全国民の魔力を八割ずつ分け与え、たった一人のヒトへ与える技。


ちなみに使用者は一人でいいが、前提条件として、全国民が手を繋ぐのが最も望ましい……がそれは不可能なので、それに近い位置にいなければならない。


そして、その使用者も天賦の才を超えた天才的な魔法使いでなければならない。


「今まで幾多の魔法参考書を読んできたけれど、やはり真の神化へ成功している例はそれしかないわ…他は全て失敗、道半ばで死んでいるものたちばかりよ」


「…じゃからと言って…それワシに言うことか?」


「えぇ、国王サマ」


「…ブラッドのためじゃからいいんじゃが…」


「今は、ちょうど逃げていた帝国からラディア国の国民たちが帰ってくるところよね」


「あ、あぁ」


「じゃあ都合いいじゃない」


「ワシの一言でなんとかしろと?」


「貴方の一言で帝国へ逃げられたんじゃない」


「うぅ」


ここで補足しておくが、アルペの使用していた神化(ゴッズ)は、勿論完璧なものでは無い。

一時的に、擬似的に神としているわけで、正確に記すなら神に成っている訳では無い。

しかし、今ブラッドがしようとしているのは真の神化。


「……でも」


何か変だ、と思う。

第一、死にかけていたあの森も、今なお生きている。


まだ女神の死から一日しか経っていないが。それでもおかしい、とそうアルペは考える。

そして、つかつかと歩きある部屋へ行く。


「おい」


「……?」


「はい、あ〜ん」


「…!あ、アンタたち…」


元国王の娘、アロヴァ。そして、その娘が掬ったスープを飲もうとしているのは、神になろうとしている男、ブラッド。


「まあ、いいわ。それよりも、体調はどう?」


「はい、ブラッドちゃんの馬鹿げた魔力量のおかげで辛うじて大丈夫ですが、あと二日、持つかどうか」


「そう」


とにかく、これから発動させる魔法には多くの人が必要だった。故にアルペがすることは人集めであった。



音声を拡張させる魔法を使用して、国王は、帝国から王都へと戻る全市民へと呼びかけた。


「今、王都の戦いにて大きな戦果を上げたものがいる!それは、君たち国民を守ってくれた!紛れもない英雄だ!それは、──彼だ!君たちが忌み嫌い、無きものにしようとした彼だ!彼が君たちを救ってくたのだ!──ならば!」



王は続けて言った。


「君たちも、恩を返すときではないのか?今彼は戦いの損傷で、多量の魔力を必要としている!だから!全国民、皆で手を繋いではくれないか!?一人も欠けることなく!」


「……」


多くの民は顔を俯けた。

しかし、一部は違った。


「ねぇ、みんな、恥ずかしくないの!?あんな少年に寄ってたかってやってきたことを思い出して?今くらい、彼のためになるべきじゃないの?」


「……そ、それは」


「私は、彼の力になりたい。少なくとも、そう思える」


一人の女性が、アルペの背中に手を預けた。


「──っ!貴女…」


「魔力が必要なんでしょう?全国民分の」


「ええ」


「………っあー!もう、しょうがねぇ!」


「……」


顔を見合わせるもの、嫌々ながらも手を繋ぎ合わせるもの……全長にして、百キロにわたる人の列が出来た。



「……ぐ」


元国王の力を全面的に使って、それでやっと全員が一列に、蛇のように並んでくれた。

ラディア国から帝国への道、それから帝国内へ一列へ続く。


「ふぃ、ワシも久しぶりに疲れたのぅ。帝国の王と仲良くなかったらこりゃ戦争じゃぞ」


「…」


すぅー、とアルペは息を大きく吸う。


「やるわよ!」



ブラッドの部屋へアルペは駆け込む。


「ん”…ッ!」


両手をパシッと合わせる。


魔力譲渡(トランスファーマナ)


……と、同時に。


「うむ」


アルペの後ろには、元国王、その娘、別の王室の者…と永延に続いている。


魔力吸収(マナドレイン)


全国民から魔力を吸収する。


「ぐ…………うぅッッ!?」


アルペの身体に激痛となんとも言えない感覚がはしる。


本来魔力とは多量に動かないものだ。

体力もそうだが、見えない血のようなもの。

血と違うのは無くなっても一日後には大抵空気中から魔力を回収しきっているのだが。


それを多量に受け取りながら渡し続けるのは、生半可な精神では不可能。


「ぐ、ぅぅ」



永劫に感じる時間──十時間──が経過した。


「…」


終わった。

やっと魔力の譲渡が終了したのだ。

溢れる魔力が、収まった。国民から徴収するのは一瞬間だったが、それを整理するのが至難を極めた。


「この…アホ男」


寝込んでいたブラッドは立ち上がる。

そして、目を瞑る。


「世界が変わったみたいだ。これが神化か。俺は、神となったのか。なんという全能感だ」


「確かに馬鹿げた魔力量ね」


いや。馬鹿げたという表現では陳腐で現しきれないそどの、莫大な魔力が覆い続けている。


「ほんと、に…」


ドサッ、とアルペは倒れこむ。


「相当疲れてたのか…」


いやそれは俺もか、とブラッドは言う。


「なんだか頭がおかしくなっていた気がする。少し、頭を冷やすか」


脳内が透き通ったような感覚のブラッドは気分よく、神へと成る。



「ほぅ、ヒトが神へなるとな」


「一体何年ぶりだろうかね?」


「さぁ、覚えてないなぁ。まぁ、新しい神の誕生祝いだ、飲もう」


「だらしがないなぁ。しかして、彼はどんなだろう?」


「どういう神かってことか?」


「いや、アレは…体内に治神(ヒーラ)を宿しているね…しかし、何か別の…オリジナルの神もまざっているようだ」


「それはそれは」


「実に興味深い」



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