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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
異界召喚編
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第二十九話 出立

迷宮(ダンジョン)……名前くらいは聞いたことがあるわよね?」


「まぁ、もちろん」


「ブラッド、あなたに頼んで申し訳ないのだけれど、そこで取ってきて欲しいものがあるの」


「…?お前は行かないのか」


「私はここでちょっと研究を続けるわ」


「そうか」


「じゃあ、取ってきて欲しいものを言うわね……、────」


「……なるほど。わかったが、報酬はあるのか?」


「貴方の治療費ってことで」


ブラッドとアルペの会話。



「……ブラッドさん、行ってしまうのですね」


「……ブラッド…またな」


「あぁ」


エーデルガンドが五人衆。一人は欠け、一人は片腕を喪失する大損害を起こしてしまった、という罪悪感もブラッドにはあった。


「…しかし、南国フィリア、か」


「?」


「いや、俺は多くの国に知り合いや顔見知りがいるものだが、かの国には一人たりともいないのだ」


「…ふーん」


「くれぐれも気をつけてくれ…何が起こるかわからんからな」


「慢心している訳では無いが、神殺しだぞ?俺は」


「あぁ、十分に分かってはいるさ、だけど時に大きすぎる力は破滅をもたらすだろう。心配なんだよ、俺はお前が」


「……まぁ、頭には入れとくさ」


「ありがとう」


「……んで、」


ブラッドは姿勢を直して体の向きを変える。


「お前たち、何でいるんだ?」


「いえ、ブラッドさんにお礼がいいたくて…」


「……礼?そんなされるようなことしたか?」


「……貴方は、俺たちを解放してくれた、俺たち犯罪者を」


「じゃあ俺は悪だな」


「…!いや貴方は悪などでは!」


すっ、とブラッドはセイヤの口に手を当てる。


「悪役は必須だろ。悪逆を尽くすキャラクターなんてのは特にな。実際に俺は女神を惨殺した。これは紛れもない悪だ。本来の正義であれば……まぁ、いい」


「…貴方は一体…」


ブラッドは顔を緩める。


「だが、お前たちもこの国を出るんだろ?」


「はい…我々は逃亡中故に、他国へ逃げます」


「…ま、なんとか捕まるなよ」


「…えぇ、貴方のように、人を救いながら、人生観を磨くために旅をしたいと思っています。また会うことがあれば、その時は」


セイヤは会釈した。


「…他の三人は?」


「まだ怪我があるので、休んでいますが直に治ると思いますよ」


「そうか。じゃあ、俺もそろそろこの国から出るとするかなぁ」


生まれ育った故郷である。母が妊娠し、出産し、俺が成長した町。

さらば故郷。


「他国へ行くなんて、何年ぶりだろうな」


しかも今までは帝国以外に行ったことがない。


「……ブラッドよ」


「……イリヴァ」


元国王、イリヴァ。


「…その、色々悪かったのう」


「……はぁ?色々?」


「あぁ…」


「なんだよ色々って」


「それは、お前に対する国民たちの態度は、アレはワシが」


「敢えて近づかないように指示していた、か」


「何故それを」


「そこら辺のやつを路地裏にでも連れ込めばすぐに吐くさ。それで、それって何が目的だったんだ?」


「……」


イリヴァは下の床を見て俯く。


「お主の、母が殺されたじゃろ。力ある者達に」


「もちろん、忘れるわけもないが」


「……それで、な、民に危険が及ぶかと思ったんじゃ、悪かった」


「…もういいよ、それは」


「…な、許して、くれるのか?」


「いやぁ。許さない。だがアンタの判断は正しい」


「──ワシは…ワシはお前がずっと寂しい思いをしているかと思ってな、ワシぁ、ワシぁ申し訳なくてな……お前に友達と呼べるやつも出来んくて、ワシのせいじゃと、ワシぁ」


「……確かに友人は今までで一人しかいた事ないけど、俺はこの国で暮らす分には困ったことないんだわ」


「お、おお」


「まぁそのなんだ。アンタも大変だったしな。お互い様だろ……別に、個人と国なんて、比べるまでもない」


「ホントに、何年間も、すまんかったのぅ……」


「…」


ブラッドは少し悲しい眼差しを向けてそして、いった。


「じゃあ、俺はそろそろ南国へたとうと思う」


「…南国、フィリアか」


「……何か知っているのか?」


「知らん」


何でだよ、と喉まででかかったがそれを遮るようにイリヴァの言葉が続いた。


「じゃが、ブラッドよ。これを持っていくがよい!」


「……んぁ?なんだこりゃ。割符?」


「それはあらゆる国に入る事が許される特権割符じゃ」


「へー」


よく分からない文字が刻まれている割符である。


「ん、あぁこりゃ(ドラゴン)文字ね」


「そんなのがあるのか」


「えぇ、神族以外には通用するはずよ、確か私の記憶が正しけれぶわっぷ────」


「──ブラッドちゃァァァぁあん!」


「ごばふっ!」


「アロヴァ!」


アロヴァがその豊満な胸をブラッドの顔面へ。ブラッドの顔がアロヴァの胸に埋まる。


「ごはっ」


エーデルガンドの三人(もう一人は病室)は羨望の眼差しを向ける。

アルペは若干殺意をもった視線を向ける。


「…いゃぁん!いないでぇー……」


「…」


「…って言いたいところだけどー、貴方は言って聞く人じゃないものねー」


「…ま、まあな…」


「あー、私たちはラディア国で頑張って生きるしかないのねー」


「…ふ、何を言って?」


「……ブラッドちゃん、国民たちは皆あなたに罪悪感をもっていたのよ」


「罪悪感?」


「……そう。貴方は何もしていないのに疎外されて、そしてそれに対して国民全体が罪悪感を持っていたのよ」


それは、市民が英雄(ヒーロー)に向ける感情と反対。哀れな障がい児に向ける罪悪感と同じだ。


「だから、貴方に魔力を与えたのは贖罪のような感情もあったのかもね」


「……罪悪感、か。だがそれこそ俺に相応しいな。俺は英雄(ヒーロー)に絶対なれないからな。俺は、悪人で十分さ」


「……でも、私の中では英雄(ヒーロー)よ?」


「そうかよ、まぁいいさ、感謝はしない。だが、アンタは俺の母の代わりみたいな人だった」


「…」


ブラッドは手を差し出す。


「またいつか、遊びに行くさ」


その手をアロヴァはぎゅ、と握った。



ラディア国の国の門を、黒いフードを被った、若い男が歩いて出ていく。

木の割符を持ち、革のバッグを下げ、長いコートを、着ている。

そして、緑の平原へ出る。地図を持ち。


「……ありがとう」


ラディア国へ、彼は感謝をする。

そして向かう、遥か南国へ。

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