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第六章   花陽舎    ーーー侍女 香沈

花陽舎がまた賑やかさをとりもどした。

瑤さまがいらっしゃることが多くなったおかげである。

この一年ほどといえば瑤さまは修学院に日参していたので

昼間の花陽舎の静けさといったら。

御用をしていても時の中に取り残されたような虚しさを感じていた。

瑤さまが居ないだけで随分と違うものだった。

殿方と学問を修めてきた瑤さまではあるけれども

へんな堅物にもならずに相変わらずの瑤さまである。

年若い侍女が調子に乗ってちょっかいを出したりしても

以前と変わらず一緒に笑っておられる。

そしてその後 もちろんわたくしがその者にはお灸をすえる。

以前と変わらない 心地よい穏やかな花陽舎である。

ただ時折 瑤さまは ほぅ と空を見上げていらっしゃる時がある。

たぶんお心を修学院へ飛ばしていられるのだろう。

修学院について行っていた侍女たちによると

瑤さまはこことは違ったお姿を見せていたそうだ。

実弟の泓太子さまや会ったことのなかったご兄弟の公子さまたち

臣下のご子息といつも楽しげに学問や王宮の外の 

世の中の話などをしていたそうだ。

そして その中のある一人の方の隣にいつもいらっしゃったようだ。

その時の瑤さまはいつにもまして明るいお顔をされていたとか。

それ以上聞いては余計な事となりそうな気がして

侍女たちには他言はしないよう また修学院で見聞きしたことは

忘れるように言い聞かせた。

瑤さまは何を思っておられるのだろうか。

今 また空を眺めていらっしゃる。


その日の夕刻 小さい包と文が届けられた。

泓太子からだった。

瑤さまは読むなり鈴を振ったような軽やかなお声をたてて笑われた。

包には焼いた栗が一つ。


院庭の栗です

姉上の分です

先生に見つかる前にお食べください  泓


修学院では講師に隠れて菓子などを食べていたとか。

瑤さまも太子さまも なんとしたことか。

瑤さまは慣れた手つきで栗を割り ぽいとお口に放ってお食べになった。

そして何やら楽しげに筆をとり ご返事の文を書かれたのだった。


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