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第五章  別路   ーーーー泓太子

姉上が修学院にきて一年近くが経とうとしている。

その間に長姉上は他国へ輿入れしていった。

どうやら次姉上の輿入れ先も選定が始められたようだ。

我が国の公主たちは皆美女揃いと言われており またそれなりの大国であるので

縁談は降るようにやってくるらしい。

側腹の公主たちも良い縁を賜って諸侯や王族へと嫁いでいっている。

姉上は末の公主のほうなので暫くは輿入れはないと思うのだが

そのことを思うと とても気が塞がる。

当の本人の姉上といえば そんな事などどこ吹く風と 相変わらずだ。

最近は将軍家の次子と領土図を広げて兵法など論じている。

それだけでは飽き足らず弓の引き方を教えてくれるよう頼んでいるようだ。

さすがに公主に武術を教えるのは憚られるので やんわり断っているようだが

さて姉上のこと 素直に聞き入れるかどうか。

姉上と将軍家の次子 楸律-しゅうりつ- は 相変わらず気が合うようだ。

互いによく書物を読むので新しいものや珍しいものを見つけるのが

楽しいらしい。

姉上は王宮の蔵書蔵の忘れさられたような古書を探してきては

楸律と回し読みしている。

姉上は今も変わらず皆と親しく接するし 皆も変わらないのだが

姉上と楸律の距離感は なんとなくそれとは違う感じがするのは

気のせいだろうか。

それが何なのか 別にどうでも良いことなのだけれども

何故か面白くない。

興味のない難しい書物をもって二人の間に入り込んだりする。

楸律は武人でもあるので幼い時から武術も心得ている。

そのせいか年齢のわりには堂々とした格がある。

歳は三つしか違わないのに一緒にいると自分がとても子供に感じてしまう。

姉上にもそのように見えるのかと思うとすごく悔しい。

実際 姉上の弟であり修学院では下の方の年齢ではあるのだけれども。

たまに いら立った気持ちを楸律へぶつける事があるのだが

楸律はやんわりとそれをかわす。

悔しいけれども今の私では全く相手にならない。

悔しいけれど楸律には敵わない。

悔しいけれど楸律に憧れのような気持ちを持っているのも事実だ。

そんな楸律なので姉上が楸律といて楽しそうにしているのも

しかたがないか とも思う。

結局のところ 姉上も楸律も私はとても好きなのだ。


夏が過ぎ木々が色づき初めた頃 次姉上の縁談が整った。

そして私たちの関係にも変わらなければならない時がきた。

楸律は父親や兄とともに武将としての道へ

姉上は縁づく前の心得としての婦道へとそれぞれ修学院を後にした。

まだ若輩ものの私だけが残されてしまった。

修学院を出ると姉上と楸律は会う機会はほとんどなくなってしまうだろう。

姉上はどのような心持ちなのだろう。

そして楸律はどう感じているのだろうか。



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