第二十四章 鴛鴦 ーーーー 瑤公主
新しい衣が二着ならべて掛けられた。
やわらかな白の地に細かな金の刺繍をされたそれは新年用の衣である。
鴛鴦みたい
小さく心でつぶやいた途端なんだかとても嬉しくなった。
口元を押さえ 誰もいないことを確かめてからそっと笑った。
香沈がお茶を持ってきた。
真新しい揃いの衣装をみて おしどりみたいですね と何気に言った。
心の声を聞かれたみたいで どきりとしてしまった。
あの雪の日以来 恭さまはこちらで過ごしている。
こちらの部屋がお住まい あちらの部屋は執務室のようになった。
太監の徳全は執務室にいるときには常に恭さまの側にいるけれども
こちらにきた時には少し離れたところで控えている。
食事の後には あちらの部屋に戻り雑務をしているようだ。
私的な生活のときの恭さまのことは こちらの者に任せるようになった。
徳全は宮中の中でも年長者 その上とても真面目で実務的な人である。
香沈いわく この宮の司正です とのこと。
確かに 司正 仕えるの者の礼儀 規律を監督する人である。
徳全は最初は王に仕えていたそうだ。
その後 恭さまの父上の前太子さまに仕え そして今 恭さまのそばにいる。
幼い時にご両親をなくされた恭さまにとって徳全は父であり祖父であり
師でもある。
そんな徳全が この前の碁の時には わたしに思わぬ助け舟を出してくれて。
驚いたけれども わたしのことを受け入れてくれたようで嬉しかった。
でも徳全にとってのわたしは まだ変わった妃のままのようだ。
皆で大笑いしていたりすると わたしの顔を見て眉をすごい上に上げて
やれやれ と言わんばかり顔をするのだ。
今もし ここに徳全がいて わたしがこの白の晴れ着を見ながら
ひそかに頬を緩めているのを見たら やっぱり あの顔をするのだろう。
そう思ったら今度はその事がおかしくなって またひとりで ふふ と
笑ってしまった。
香沈が怪訝そうにこちらを見た。




