第二十三章 初宵 ーーー−恭太子
実際に石を動かすほうが合っていたのか
あの人は段々と碁が上達している。
この頃は夕餉の後に時間が取れた時には教える形で
一刻ばかり碁盤を挟んで過ごしたりしている。
真剣な対局のも楽しいが こうやって人に教えることも楽しいものである。
たまに思いもよらぬところに石を打たれて驚いたりするが
その後の攻めができていないのでまだまだではある。
でも これはもう少しすると対局するのが楽しくなりそうだ。
もっとも今も他の意味ではあるが とても楽しく というか賑やかに
碁を打っいる。
いつの間に 遠巻きながら皆が様子を見ているのだ。
碁が好きな徳全もひっそりとではあるが ずっと碁盤を見ている。
今日はかなりいい感じで攻めてきた。
私もそれならばと石を打つ。まだ負ける訳にはいかない。
あの人が次の一手に困り果てて 今日もだめだった と石を
手放そうとした時 徳全が そっとあの人にささやいた。
驚いて振り返っていたが 徳全はまたいつもの澄まし顔で碁盤に視線を
落としている。
あの人はしばし碁盤を見て考えて はたと気がついたように
にこっと笑って そして石をぱちり と置いた。
徳全・・・
初勝利であった。
あの人は周りの者達と大騒ぎをし
徳全はわたしからの抗議の視線を澄まし顔でそっぽをむいてそらしていた。
ひとしきりの騒ぎの後
ゆっくり碁石を片付けながら話をする。
今の対局のこと 石の置き方でまだわからないこと
そして今日 この宮であった楽しかったことなど。
何気ない話を聞きながらも心がおちつく。
あなたといると
不思議と心が穏やかになれます
あの人も わたしといると安心する と言ってくれた。
そしてこの くしゃっとした笑顔。
あなたが妃でよかった。
本当にそう思った。
外から静かな音がする。
窓を開けてみたらたくさんの雪が舞っていた。
大きな雪が降りそそいでいる。
すごい雪です
向かいの部屋が見えません
本当ですね これではあちらに帰れません
帰れませんね
朝には落ち着くはず
そう・・ですね
朝まで 待ちましょう
はい 待ちましょう
あの人の手にそっと自分の手をかさねた。
静かな雪の音に包まれながら 夜はゆるやかにゆるやかに更けていった。




