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第二十二章     碁縁    ーーーー侍女 香沈

最近の朝一番の仕事は小さい石を巾着に詰めることだ。

この宮では下働きの者もみな火鉢で温められたそれを

自分の巾着に入れて持っていく。

みなが温石を持つようになった。

瑤さまが太子さまから頂いた温石の温かさに驚き皆に勧めたのだ。

わたくしたちの分は石を小石にしているので何処につけても動きやすい。

小石にすることは碁石を見て瑤さまが思いついた。

瑤さまにも温まった替えの石を持っていく。

あの時に頂いた太子さまの巾着はそのままお使いになっている。

男性のものなのでかなり地味なのだけれども大切にお使いになっている。


優しい方ね


嬉しそうに笑っていられた瑤さま。

こちらまで嬉しくなった。

お部屋に入ると瑤さまはすでに起きられていた。

手には最近よく読んでおられる本があった。

碁の指南書である。

太子さまは碁がお好きで腕前もなかなかとのこと。

一緒に楽しむことができたらと思っているようだ。

ちょうど季節も冬になり どうしても部屋に籠りがちである。

碁はそんな余暇にはちょうどよい。

少し気難しい顔をなさって指を動かしながら読んでいらっしゃる。

気難しい顔をされると弟君の泓太子を思い出す。

やはりご姉弟 どことなく似ている。

泓太子はお元気だろうか。


今朝の朝餉も和やかにすすんだ。

あの日以来 太子さまと瑤さまは少し打ち解けられたようで

この頃は食事の場には笑い声が弾むことが増えた。

瑤さまが いつ頃碁のお手合わせをしていただけるのかと 

太子さまに尋ねていた。

あの本のあの章を理解できるようになってから と言われると

瑤さまは ふぅと ため息をつかれ わかりやすくがっかりされた。

皆が くすくすと笑う。


でも今日は参内の予定がないので どれくらいまで出来るのか

見てみましょうか


と太子さまが言われた。

思わぬことに瑤さまは大変喜ばれ食後のお茶を早々に切り上げさせた。

そして碁盤をはさんでお二人仲良く碁石をならべていった。


そこに打つとこうなります

ああ それはちょっと・・・


などと言いながら頭を突き合わせるようにしてお二人で碁を打たれている。

やはり全く相手にならないようで

ほとんどは太子さまのご指導となっていた。


もう少しは出来ると思っていましたが まったくですね


と 瑤さまは眉を下げてがっかりしていらっしゃる。


基本はわかっているので あとは場数でしょう


と太子さまが気を使って言われると

瑤さまは いたずらっぽく笑われて


では 太子さま もう一局お願いします


と言ってあの大きな笑顔をされた。

久しぶりの瑤さまのあの笑顔だ。

周りの内官も侍女も笑っている。

いつもは無表情のあの太監も眉を上げてお二人を見ている。

太子さまは瑤さまの大きな笑顔を本当に嬉しそうに見ていらした。



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