第二十章 初雪 ーーーー恭太子
今年初の雪が降っている。
ひとひら ふたひら と数えれるほどの降り方なのでまだ積りはしないだろう。
ここ数日寒い日が続いたので そろそろ降り出すかと思っていたところだ。
また厳しく長い冬が始まる。
私にとっては寒さもまださほどではないのだけれども
あの者たちにとっては かなりの寒さに感じているのではないだろうか。
あちらの部屋は冷え込んできたここ数日は窓を開けていない。
そういえば庭にも出できていない。
あちこちに草木が植えられて全く別の景色となった庭をぼんやりと眺めた。
大騒ぎをして植えたそれらには雪よけのためなのか囲いがされたため
不思議な景色になっている。
あちらの部屋の様子が少し賑やかになってきた。
朝餉の準備をしているのだろう。
太子 お支度の時間です
私も支度の時間だそうだ。
雪が吹き込んでこないように窓をしめてから鏡の前に向かった。
座った椅子がひんやりとしていた。
冷え込んでいるな。
あの人に寒さは大丈夫かと聞いてみようか。
食事はあの人の部屋でいただく。
華美な装飾はされていない部屋は壁には柔らかい色合いの織物や
花の絵が飾られていて明るい雰囲気がある。
灯も部屋全体に明るさが行き渡るように工夫して置いてあるので
夕餉のときにも薄暗さは感じない。
そして あの人はちょっとしたことでもよく笑うので
侍女や内官たちもどことなく穏やかだ。
最近は食事の時間が楽しみになっている。
香沈という侍女が指示している食事はとても美味しい。
特に食後に出される菓子の類はどれも珍しいものばかりである。
郭の菓子かと思っていたが これはその侍女が元あるものに工夫を加えて
作っているそうだ。
はしたない事ではあるが毎回の持ち帰りも用意してくれているのは
とても嬉しい。
あちらに行くとなんとなくではあるが自然と体の力を抜いて
落ち着ける様な気がする。
そのような香でも使っているのかと最初は思ったが あの人は
香の類は好まないようだ。
使いがきたので雪が舞う庭を通ってあちらに行く。
今日もあの笑顔であの人が出迎えてくれる。
おはようございます
くしゃっと笑った鼻先がほんのり赤かった。
何気なく手が鼻先へとそっと動いた。
冷えている
その言葉とともに ふと我にかえる。
・・・・・
あの人もまた何がおきたのか分からぬまま私を見上げている。
小さく咳払いをひとつして
寒い朝だから
なれない寒さはどうかと思って
そう言ってぎこちなく手を引いた。
あの人は今度は頬もすこし赤くして
はい 寒いです
と 鈴のような軽やかな声で 顔いっぱいで笑って答えてくれた。




