第十九章 冬隣 ーーーーー 侍女 香沈
こちらの生活にも慣れてきた。
桀に来てからそろそろ二ヶ月になる。
郭から共にやってきた侍女たちもそれぞれに落ち着いてきたようで
またこちらの侍女たちともうまくやっているのでほっとしている。
瑤さまも 今のところはこれといったお役目は無いので
自由に過ごされている。
自由、というより自由気まま である。
日々の暮らしが落ち着いてきたと思ったら またいろいろな事を始められた。
嫁しても相変わらずの瑤さまである。
わたくしたちは瑤さまのその様な行動には慣れてはいるが
新しい侍女や内官は驚き振り回されっぱなしだ。
瑤さまは庭を掘り起こし緑を植えられた。
一緒の敷地にお住まいの太子さまの了承を得てからは
更にあちらこちらを掘り起こし とうとう木も植えだした。
花の咲く木があったのよ
と にっこり笑われる。
なんでも王宮の端に打ち捨てられている建物があり
そこにはいろんな草花や花の咲く木 実のなる木などが
放って置かれているそうだ。
そちらから少しず持ってこさせたとのこと。
楽しそう などと言ってご自身も行かれようとしていたが
さすがに王太子妃が掘り起こした草木を引きずって王宮内を歩かれては
と思い 決してご自身では行かないようにと 強く強くお願いしておいた。
油断できないところが瑤さまである。
あと少しすると雪が降り出すとのこと。
木には冬囲いをした方がよいと花木司の者が言うので
明日はその作業をするそうだ。
雪が降る。
郭でも少しばかりは降ったりもしたが
こちらの真冬には身の丈ほどの雪が積もるのだとか。
そんなに積もって建物は大丈夫なのだろうか。
なにより凍えて何も出来なくなるのではないだろうか。
こわごわと聞くのは恥ずかしいので
さりげなく冬の日常などを聞いてみるが 大丈夫ですよ と言うだけである。
本当だろうか。水は凍っているはず。火起こしは足りるのだろうか。
そういえば婚儀の祝宴の後 王からのご連絡は何もない。
本当に何もない。
どうやら王と太子さまとは ほとんど関わりを待っていないというのは
本当のようだ。関心があまりないようだ。
ふと まただ と思った。
郭にいた時と同じく 気に留められる事が少ない。
余計な気苦労はないのだけれども
だけれども 瑤さまだって。
王太子妃でもあられるのに という気持ちも湧いてくる。
太子さまも未だに打ち解けている感じではないのがまた心に引っかかる。
瑤さまを ちゃんと見てくださいませ と
心で訴えてしまっている。




