第十八章 太子妃 ーーーー太監 徳全
太子妃はなんとも風変わりなお人だ。
あの郭の公主が我が主の妃となると聞いた時には
これでやっと太子にも運が向いてきたと喜んでいたのに
このような方だったとは。
今日も庭先で花木司の年寄りと土いじりをしている。
整えられていた石畳はいまやあちらこちら剥がされて
そこへ草を植えて喜んでおられる。
何をやっているのか。
とうとう綺麗に植えられていた鉢の花も地面に植え替えられてしまった。
最初はいろんな草だけだったのだが
今日は何処から持ってきたのか小さいものではあるが木を植えていた。
花木司の年寄りが鋏を入れて形を整え妃にどうかと聞いている。
妃は顔中で笑いながら何度も頷いていた。
ご満足のようだ。
この妃は珍しい笑い方をする。
ざっざっと 箒を履く音が聞こえてきた。
どうやら今日の作業は終わったようだ。
おやおや 今度は年寄りに茶を勧めている。
そんな事をされて年寄りは困っているではないか。
まったく気ままなお妃様は何を考えているのやら。
おかしな事ばかりするので太子も気になるようで
最近は部屋の窓を開けて庭の様子を覗いている。
たまに妃と目が合う。
相変わらずのおかしな笑顔でこちらへ挨拶される。
はじめのうちは慌てて奥へ隠れた太子であったが
最近は小さく会釈をしたりしている。
そういえば食事の時にも自然と会話をすることが増えてきた。
まあ ほとんどが妃が話かけているのだが。
なんでも花木司の者から草木の育て方を教えてもらっているようだ。
桀の気候や土の加減はわからないので と言っていた。
庭仕事など花木司に指示してやらせればよいのに
妃は一緒に泥をつけながらやっている。
この頃は内官も駆り出されあちこちに泥をつけている。
おかげで清衣司への往来が頻繁である。
お付きの香沈という侍女が毎日お小言を言っている。
この侍女も変わった者で おのれの主にずけずけと物を言う。
ずっとそんな間柄なのか妃もまた言われてしまった と言わんばかりの顔で
肩をすぼめたりしている。
そんなやりとりを見て 妃つきの侍女 内官たちまでもが笑ったりしている。
その笑いの中心にいるのが あの妃である。
珍しい笑い方でその中にいる。
そうしてたまに部屋の中にいる太子と目が合うと
顔いっぱいで笑いかけてくるのだ。




