第十七章 作庭 ーーーー瑤公主
郭から持ってきた花の球根を植えてみる。
こちらの気候でも大丈夫そうなものを持ってきたのだけれども
ちゃんと芽が出てくれるだろうか。
わたしの部屋の前には庭こそあるけれども木が一本植えられているだけである。
石畳の上には鉢植えの花が数個 あとは石で作られた卓と椅子が置かれている。
草などはどこにも生えていない。
土の地面がないのである。
球根は鉢の中に埋めた。
今までは草花が身近にある生活をしていたので なんだか落ち着かない。
石畳を挟んで向かいにある太子の部屋の前には花も置かれていない。
せめてもう少し花の鉢が欲しいところなのだが
気候の厳しいこの国にとって花は貴重な限られた調度品の一つなのだ。
太子は毎日ほとんど自室にいらっしゃる。
食事は毎回一緒に取るのだけれども その後には自室へ戻られる。
少しばかりのお話はするけれどもそれだけだ。
どうやらわたしは気に入られていないようである。
粗末な公主、、いや粗末な妃なので仕方がない。
気にしてもどうしょうもないので わたしはここでの自分の暮らしを
作っていこうと思う。
石畳をなんとかしたいのだけれども動かすことはできないだろうか。
土さえあれば野の花とかでもそこに植えることが出来るのだが。
新しく加わったこちらの侍女に野草が生えてるところがないか
尋ねてみる。
東の方に打ち捨てられた建物があるので そこは草だらけだと言っていた。
幸いわたしは今のところ王宮内であれば何処へでも出歩くことができる。
とりあえずその建物まで行って庭に植えれそうな草を探してこよう。
その前にそれを植える場所をつくらなくては。
石畳をなんとか動かすことはできないだろうか。
堀り匙もないので花木司というところへ借りに行ってもらう。
石畳の間には砂が埋まっている。その隙間を掘ってみる。
思っていたよりも深く砂が埋まっている。
匙ではどうにもなりそうにないので鉄の火かき棒を差し込んでみた。
石がわずかに傾いた。
動いた!
喜んだ次の瞬間 石は元の位置に落ち服の裾に泥をはね飛ばした。
石は動かせそう。
うまくずらせるように違うところから棒を差し込んでみる。
ごとり という音とともに 一枚の四角の石が動き
ずれて横の石の上に乗り上あげた。
押してみたが わたしの力では動かないので内官に頼んで動かしてもらう。
さあ 次の一枚。
そうやって四枚ずらし四角の場ができた。
下には砂が敷き詰められてあったがそれを匙でのぞくと地面が出できた。
土がある。
ここを掘り起こして緑を植えることができるかもしれない。
そばで内官が呆れた顔で見ている。
その内官に花木司に行くことを告げた。
呆れ顔が焦った顔になった。
通りがかった香沈が慌ててやってきた。
香沈もわたしが花木司に行くのは無理であると言って
用があるのならば呼びに行かせればよいと言った。
本当は花木司にある木や花などを見て
いろいろと聞きたいところではあったのだけれども
ここは香沈の言う通りに花木司の者に来てもらうことにした。
とりあえず草花を植えられるような土壌にするには
どうしたらよいのかを教えてもらいたい。
いつの間にか あちらこちらで侍女や内官がこちらを見ている。
服に泥をつけて剥がした石畳を前に思案しているわたしを怪訝そうに見ている。
ざわつきに気がついたのか向かいの太子の部屋の窓が少し開いた。
お付きの者が驚き 中の主に何かを伝えているようだ。
太子が窓辺まできて 穴の空いた庭を見て あ と声を上げた。
食事の場以外で見る太子は初めてかもしれない。




