第十六章 妃 ーーーー恭太子
粗末な公主だなぁ!
祖父王が初めてあの人に言った言葉はそれであった。
郭から私の妃がやって来た。
王后の娘でこれは我が国にとってはかなりの良縁であって
あの大国相手に公主を貰い受けたと国中で喜び騒いでいた。
郭の王族はみな容姿が美しいという。
大儲けだな などと王は言っていたけれど私はとても憂鬱だった。
美しい公主など私には到底似つかわしくない訳であって
何よりそんな立派な公主など恐れ多い。
私など相手にされないことは会う前からわかっている。
いまにもまして気の重い日々が始まってしまうのだろう。
何も考えないように迎えた公主到着の日
萌葱色の新緑のような服を着て公主はやってきた。
謁見の席で挨拶をし顔を上げた公主。
王は 粗末 と言った。
郭は美女ばかりと聞いていたがお前は本物か?
と大笑いしながら言った。
周りにいる妃たちも王に合わせるように笑っている。
謁見の席に いつものように合わせたような笑いが起きた。
いつもの気が塞ぐ嫌な笑いだ。
そっと郭の公主を見てみた。
顔が真っ赤になっていた。
初めてあった人にそのような事を言われ
おそらく今まで言われたことのないような暴言に怒っているのだろう。
泣き出してしまうのだろうか 大騒ぎをしてしまうのだろうか。
お付きの侍女が鬼の形相でいるのが伏せっている状態でもわかる。
今日も一悶着起こりそうで気分が悪くなってきた。
顔中真っ赤にしているせいか美女には見えないその公主は
しかし はっきりとしたよく通る声でゆっくりと言葉を発した。
郭の王后の第三公主 瑤にございます
美しい郭の王族の中では珍しい平凡なものではございますが
よろしくお願いいたします
と言った。
王は改めて公主をじろじろと見た。
そして ふん と視線をそらし私に向かって言った。
おまえの妃だ
改めて公主を見る。
美女ではない。少しほっとした。
王にとって 祖父にとって同じ粗末な私には丁度よい相手だと思った。
なんとなく礼をして挨拶をしてみた。
ーーーー 恭です。
美女ではない公主は顔をくしゃっとして笑った。
瑤です 恭さま ごきげんよう
顔はまだ少し赤かったが明るく軽やかな声だった。
心地よい声だった。
珍しい笑い方をする人だ。
でも嫌な笑い方ではなかった。
強張っていたものがふっと軽くなった気がする。
この人が私の妃なのだ。




