第十章 夏日 ーーーー泓太子
この夏はとても暑い。
氷室から氷を少しずつ出して口にしたりするのだが
それくらいでは涼しくもなるはずもなく。
つい気が立ってちょっとしたことにも いらいらしたりしている。
修学院も休講になりがちなので やる事もなく暇を持て余している。
こんな時には姉上は何をしているのだろう。
本好きなので蔵書蔵からまた難しい本でも掘り当てて
読んだりしているのだろうか。
そんな事を考えていたら偶然にも姉上から届け物がきた。
今日も香沈が届けてくれる。
つい嬉しくなって思わず席と茶をすすめて皆に驚かれてしまった。
香沈は困惑顔で辞退した。
今日も菓子を持ってきてくれた。
そして陶器の長筒のようなものと便りを一緒に渡された。
陶の壺に寄りかかってみたら冷たくて心地がよかったです
枕にしても良いかと思い作ってもらいました
瑤
姉上は部屋にある調度品の大きな壺に寄りかかって
本を読んだりしているそうだ。
姉上らしくて想像して笑ってしまう。
長筒は触ってみるとたしかにひんやりとする。
頬を当ててみるととても心地よかった。
我ながら調子のよいもので すっかり気分がよくなっている。
香沈と雑談をしながら持ってきてもらった菓子をひとつまみする。
驚いた。
噛むと果実であった。
でも見た目は菓子であり。
香沈は笑いながら私が驚いているのを見て楽しんでいる。
この菓子は姉上が考えて香沈ら侍女が作ったそうだ。
瑞々しく甘みも少しばかりなので暑いこのような時には
特に美味しく感じる。
姉上も一緒になって笑い賑やかに作ったのだろう。
花陽舎からはいつも笑い声が聞こえてくると内官が話していたのを
思い出した。
この菓子には楸律も驚くであろうな とふと思った。
北域では依然 緊張状態ではあるが戦にまではなっておらず
使者を立てての交渉が続いているらしい。
今回は交渉でなんとか収めたいというのが父王のご意向らしい。
楸律が出立してそろそろ二月になる。
私の知る限りではあるが北域の近況を姉上に文で伝えておこう。
その晩はもらった長筒を頭にあてて横になった。
心地がよかった。
数日後 北域からの報告があった。
どうやら和睦することに話がまとまったらしい。
書簡が届けられ父王はその内容に同意するようだ。
楸律が無事に帰ってくる。
安堵と嬉しさで 早速姉上に知らせを出した。
その時はまだ和睦の内容の事などわからずにいた私たちは
大変 喜んだのだった。




