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第九章   約束   ーーーー侍女 香沈

太子殿下に拝礼致します


武人の格好をした男性が入ってきた。


楸律 待ったいたよ

姉上の菓子が無くなるところだ


泓太子はその武人をお迎えになった。


久しぶりね 楸律

武装衣もお似合いですよ


公主の侍女姿もなかなかですよ


と笑いながら言った。

なんて無礼な と噛みつこうとしていたわたくしを尻目に

お三方は大笑いしている。

楸律さまというその方は武人の格好に似合わず優雅な物腰でお席に着いた。

楸律さまにもお茶が運ばれ お三方は楽しそうにお話をしていらっしゃる。

最近の修学院の出来事など泓太子は面白おかしくお話になり

瑤さまは身を乗り出して聞き あはは と笑われる。

隣で楸律さまも楽しげに笑われている。

どうやら楸律さまはご学友のようである。

それぞれの近況を話しているだけなのだけれども

お三方ともとても楽しそうである。

修学院でもこうであったのであろう。

ふと会話が途切れたとき 泓太子は尋ねられた。


それで いつ出立なのだ?


お三方の話から どうやら楸律さまは北域の国境まで遠征に出られるようだ。

北域は未だ不安が残る地域だと聞いている。

今回は父上の楸将軍と一緒なので お役目をしっかり果たしたいと楸律さまは

仰った。

出立は明後日とのこと。


瑤さまは口をきゅっとつぐまれ視線を落とされた。

泓太子も言葉少なくなってしまう。

楸律さまが瑤さまの方を向かれ穏やかに話かけられた。


公主

遠征途中の李楽山には書物に書かれてある奇石があるそうですよ

運よく見つける事が出来たならば持ち帰りましょう

割ると玉虫色に輝くのでしたね


瑤さまは楸律さまを見られる。


本当に光るかどうか 

試しに割ってみましょう


そう言われて いたずらっぽく笑われた。

瑤さまも笑顔で答えられた。


ひとつ お楽しみができました

楸律の武運を祈ります


いつもの大きな笑顔でしたが

なんとなく泣いておられるように感じられた。

その時 修学院でのあの方が楸律さまなのだとわかった。


瑤さまは穏やかなお顔で楸律さまとお話なさっていた。

その後 しばしの会話を楽しまれ泓太子の宮を後にした。


そして 春らしいさわやかな風の中

楸律さまは ご出立されていかれた。






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