第四話「い、妹?」
なんと、俺もついに5歳になった!
月日が流れていくのが早く感じる。
なぜかと言われると、多分、楽しいから。
努力しまくって!
挑戦しまくるのが最高に楽しいんだ。
初めて魔法を使ったのが、1歳かな?
あれから、かなり成長できた。
ファイアーボール以外にも、
サンダーや、ウォーター……。
まぁ、基礎魔法の4つは使える!
今の悩みは、基礎以外の魔法が、知りたいことだな。
ピタルに聞いたら教えてくれるかな?
いや、そもそも知ってるのだろうか。
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今日も今日とて、たくさん汗をかいた。
最近は、お昼に、森の中を走り回って体力増加作戦を開始してる。
疲れるけれど、気持ちがいい。
この疲れた体で、ふかふかベッド睡眠が至高なのだ。
「コウェイス、おやすみ」
「あ、うん! おやすみなさい」
ピタルが、ドアを少し開けてそう言ってきたので、同じ言葉を返した。
俺の声を聞いて、ガチャンと、ドアが完全に閉じられた。
「……」
近頃、部屋が変わった。
彼が、自分の部屋にベッドを置いて、そこで寝るようになった。
俺は、この寝室で、ダブルベットを独り占めってわけさ。
最高。
……でも、少し寂しいな。
親と寝るのは、安心すると、最近になって知れた。
おっと、早く寝よう。
睡眠は、超大事なんだぜ。
明日のトレーニングスケジュールを、脳内で決めて、目を閉じた。
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そこは、懐かしい場所だった。
とても広くて、嫌な空気が蔓延している家の中。
「あぁ……ここって」
前世の、俺の、三条奏多の自宅だった。
いつからだろう。
転生して、数年は普通に眠れた。
のだけど、ここ最近、悪夢を見る。
ラノベを読んで、飯を食って、寝る。
起きて、学校に行ってラノベを読んで帰宅したら、また、読んで寝る。
こんな、怠惰な日常。
たまに、喧嘩する幼馴染との、お出掛けくらいが、俺の世界が鮮やかになる。
「ここまでは、まだいいんだけどな」
夢を見ている俺の視界が切り替わる。
先ほどまでは、怠惰な俺の日々が映っていたのに……。
「はぁ……もう、やめてくれ」
意識してないのに、勝手にため息が出る。
チェンジされた視界の先には、両親がいる。
あの日見た、楽しそうに歩く両親。
遠いから、何を喋っているのかは、わからない。
でも俺には察せた。
母は、『あんな子捨てることができてよかった』と、笑顔。
父は、『そうだな、あいつはいらない子だ』。
このセリフが合ってるかどうかなんて、確認しなくても分かる、イージー問題ってやつさ。
「あーもう!」
いい加減に、夢から覚めてくれ。
てかなんで、俺は未だに忘れられてないんだ?
ピタルという父ができたのに、転生して新しい自分になったのに。
この2人のことを忘れようとしたのに。
決めた。
文句を言うことにした。
この世界に、前世に。
「おいこらー!!! このゴミ夢!
もう、二度と俺の睡眠を妨げるな!」
大きく息を吸う。
そして、
「俺はもう、最高の父に出会えたんだよ!!!」
かなり遠くで、談笑してる前世の親に、聞こえるんじゃないかと思える声量で放った。
俺の視界が暗くなっていく。
この世界が、スローモーションになっていく。
あぁ、これはやっと……。
「――ウェイス!」
「……」
「コウェイス!」
「え?」
ピタルが、肩を揺さぶらせて、起こしてくれたのか。
悪夢の時は、いつもこの人が起こしてくれるな。
「大丈夫? どうしよう、なにか良い夢を見せる魔法とか……」
どうしようと言ってアワアワと、している。
そんなに、心配性なのはどうかと思う。
……まぁ、嬉しいけれどね。
「ありがとう、大丈夫だよ。なんか、吹っ切れたような気がする」
「え、あ、そう?」
「うん」
俺は、あの夢で、叫んだことを境に、前世の親ことを、殆ど考えなくなっていた。
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今日のトレーニングも終わり、赤ん坊の時にお世話になった、
ロボットの『セワ』を、綺麗に磨いていると、父さんが仕事から帰ってきた。
「おかえり」
「あ、コウェイス……」
「?」
なんだ?
いつもなら、普通にただいまのはずだけど。
今の彼は、頬が赤いな。
「僕がなんの仕事してるか知ってるよね?」
え、こわ。突然の質問?
「え、おれが生まれる前は、教師をしてて、生まれてからは……」
あれ、なんだっけ。
1年前くらいに教えてくれたんだけど、忘れたなぁ。
教師をしてたってことに、驚いたからかな。
「今はね、発明チームで働いてるんだ」
「あ」
そうだ。
発明チームかぁ。
一から魔法を編み出す仕事……研究みたいなことをしているんだった。
「うん、それがどうしたの?」
「あ、うん。えっと、えっとね」
じれったい。
いつもは、こんな気弱な男じゃないだろ?
「もー! なに!! はっきり!」
「はい!」
息子の俺の声に、軍人みたいに返事をしたピタル。
息を吸う、息を吐く。
頬が、赤かったのも落ち着いてきた。
やっと、何か言ってくれそう。
「コウェイス」
「うん、なに?」
彼が、俺の身長に合わせて、しゃがむ。
目の前に、彼の顔がある。
そして、口が開いた。
「妹、欲しいか?」
その言葉に、俺は空いた口が塞がらなくなった。
が、頑張って声を出した。
「どういうこと?」
「実はね、僕、再婚するんだ」
「……」
「あ、ごめん! 再婚っていうのはね……」
「まって、意味はわかる。だれとなの?」
俺の問いに、ピタルはまた頬を赤らめた。
「マリアさん……同じ仕事場の人」
「発明チームの?」
「うん、2人1組で活動するから、その人と同じ期間が長くなって、それで……」
お、おぉ。
この顔はガチだ。
恋する思春期男子みたいになってやがる。
「再婚は、わかったけど、妹ってのはなに?」
「うん、彼女にも子供がいてね」
ほう。
うちらの、逆バージョン?
シングルマザーで、娘がいるってことかな。
「なるほどね、父さんが再婚したら、その子が、おれの妹になるってことかぁ」
「……」
ピタルが、じっと、見つめてくる。
俺、何か間違ったこと言った?
「な、なに、父さん」
「コウェイスってほんとに5歳?」
「えっ」
疑いの目を向けてきている。
なに、転生したことがバレた?
それは、ダメだろう。
バレるのは、まずいだろう!!
「い、いや、ちが――」
「あっはは!」
「えぇ?」
ピタルが大爆笑しだした。
「ごめっ。おもしろくて」
「なにがー」
「昔から思ってたけど、うちの息子は大人びてるなぁって!」
「……ぷっ。あははっ!」
彼の笑いに釣られて、こちらも大爆笑してしまった。
「ふぅ」
少し経って落ち着く。
「明日、連れてきていい?」
「え、早速?」
「うん、今日プロポーズしてしまってさ」
今日?
どんなタイミングでしてるんだよ。
もっと、ムードのあるさぁ。
いや、いっか。
彼は、あまり恋愛ごとには慣れてない雰囲気があるし、
そもそも、この世界にプロポーズのムードとかあるのかしらんし。
てか俺、彼女できたことないし。
「プロポーズして、喜んでくれたの?」
「……」
「その顔を見れば分かるね」
ピタルは、喜びと照れが混じった表情をしていた。
マリア?
という人が、どんな人なのかは分からんけれど、きっといい人だ。
「よかったね」
「ありがとうコウェイス」
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今日、ピタルが新しいお母さん連れてくるらしい。
あと、妹も。
来るまで、俺は家で待機している……。
ていうか、昨日は、いい人だと勝手に決めつけてたけどさ?
ピタルって人を見る目あるの?
実の母は、かなりクズっぽいし。
やばい、そろそろ家に彼女らが来る……。
「……」
よし決めた。
もしも、俺の父さんがまた騙されてそうなら、息子である俺が、追い出してやる!
たとえ、ピタルが悲しむとしても!
とか、考えていると、音がした。
正確に言えば、うちの家に向かってくる足音がした。
数は3人か。
ふっふっふ。
これでも、修行しているからね。
足音で人数くらいはわかるようになったのさ。
……いかん。
それはいいとしてだ。
ピタル、義母、義妹が、こちらにきているんだろう。
おおよそ数十秒後にくるな。
どうしよう。
玄関口までいくか?
『お待ちしておりました。さ、こちらへ』くらい言うべきか?
いや、いっか。
気が早いけど、家族になるんだし。
うん。いいね家族。
思った通り、すぐに扉が開いた。
ガチャと、開いた。
流石に、初対面だから挨拶はきちんと。
と思い、背筋をピシッとして出迎えた。
まず、入ってきたのは、いつも見ている男の人。
ピタルだ。
なんだか、いつにも増して、顔が綻んでる。
彼は、俺と目があって、口を開く。
「コウェイス、そんなに緊張しなくても」
「え、緊張は別に……」
自分の足を見てみると、震えていた。
頭の中では、家族が増えることの嬉しさしかなかったつもりではあった。
でも、やはり緊張はしてたらしい。
「お邪魔します」
聞き慣れない声音がした。
優しそうで、ほんわかしていて、おっとりしている。
聖母ような声だ。
「こ、こんにちわ」
……やばい。
とても、美人さんなんだけど。
声が、震えてしまうぅ。
こっちの世界に来てから、女の人を初めて見た。
基準がわからないけど、きっとこの世界でもトップクラスな美人だ。
「ごめんね、マリアさん。息子はまだ僕以外と会っていなくて……」
「いいえ、とても可愛らしいですよ」
キュン!
可愛いと言われちゃった!
恋に落ち……てはないです。
流石にね。
「あはは。でも、ココちゃんには勝てないかもですけど」
「……?」
ココちゃん?
ピタルよ、その名はなんじゃ?
初耳じゃぞ?
知らない名に戸惑っていると、マリアさんの背中に何かを見つけた。
「こーら。ココ。挨拶しなさい?
お兄ちゃんですよ?」
彼女は、何かにしゃべっている。
ん?
お兄ちゃんって、俺だよな?
てことは、
「こ、こ、こ、こんにちわ」
あ、やっと、視界に入った。
ずっと、背中に隠れてて見えなかった、俺の……妹だった。
「こんにちわ。ココちゃん? よろしくね」
接し方は分からないけど、できるだけ優しく。
ピタルのように。
そして、前世の幼馴染が、子供に対してよく接していた態度を真似してみた。
ルルは、あれでも子供好きだった。
「よ、ろ、しく」
お、返事をくれた。
うれしい。
けど、怖がっているのかな?
怯えているように見える。
目が前髪で隠れててあまりわからないけど。
「ごめんね、コウェイスくん」
「?」
マリアさんが、謝ってきた。
なにに?
「ココはね、人見知りというか……」
「あ、なるほど」
そういうことね。
「父さんも、ココちゃんと、まだあまり喋れないの?」
「僕は、――」
僕もあまり、心を許してくれないんだ。
って言葉を期待していた。
が!
「ぱぱ……」
「!?!?!?」
マリアから、移動した!?
移動先は、ピタルの背中だと!?
父さん、お見事です。
早速、手懐けたのですね。
じゃなくて!
まぁ、当たり前かな。
彼は、化け物級に良い人だ。
子供なら、尚更懐かれやすそうだし。
「うぅ」
な!
うるうるした目で、俺をみないでぇ?
なにもしないからさぁ。
仲良くしてくれヨォ。
とほほ。
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昨日、俺には、妹ができた。
年齢は、同い年の5歳。
しかも、誕生日も同じときた。
ピタルによると、俺とココちゃんの共通点が多くて、マリアさんと会話ができたと。
それはさておき、困った。
ココちゃんは、人見知りもそうだけど、
――自分に自信がなさすぎる。
例えば、自分の意見が言えない、目立たず生きている感じがする。
「ごめんない」も、多い。
視線が合わない。
元気があまりない。
声が小さい。
……俺には、そんな子に、自信をつけさせる気はさらさらない。
俺は、自信がないから死ぬとか思ってない。
けど、妹なんだ。
まだ、1日も経ってないけれど、家族だから。
それに、挑戦は楽しいってことを伝えたい。
俺は、今日から、やることが増えた。
妹、自信つけ計画の開始だ。




