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一般的な異世界人生。  作者: 納豆にはネギ
第一章 転生と決意編
5/6

第四話「い、妹?」


 なんと、俺もついに5歳になった!

 月日が流れていくのが早く感じる。


 なぜかと言われると、多分、楽しいから。

 努力しまくって!

 挑戦しまくるのが最高に楽しいんだ。


 初めて魔法を使ったのが、1歳かな?

 あれから、かなり成長できた。


 ファイアーボール以外にも、

 サンダーや、ウォーター……。

 まぁ、基礎魔法の4つは使える!


 今の悩みは、基礎以外の魔法が、知りたいことだな。

 ピタルに聞いたら教えてくれるかな?

 いや、そもそも知ってるのだろうか。



---



 今日も今日とて、たくさん汗をかいた。

 

 最近は、お昼に、森の中を走り回って体力増加作戦を開始してる。

 疲れるけれど、気持ちがいい。

 

 この疲れた体で、ふかふかベッド睡眠が至高なのだ。


「コウェイス、おやすみ」

「あ、うん! おやすみなさい」


 ピタルが、ドアを少し開けてそう言ってきたので、同じ言葉を返した。


 俺の声を聞いて、ガチャンと、ドアが完全に閉じられた。


「……」


 近頃、部屋が変わった。

 彼が、自分の部屋にベッドを置いて、そこで寝るようになった。


 俺は、この寝室で、ダブルベットを独り占めってわけさ。

 最高。

 ……でも、少し寂しいな。

 

 親と寝るのは、安心すると、最近になって知れた。


 おっと、早く寝よう。

 睡眠は、超大事なんだぜ。



 明日のトレーニングスケジュールを、脳内で決めて、目を閉じた。



---



 そこは、懐かしい場所だった。

 

 とても広くて、嫌な空気が蔓延している家の中。


「あぁ……ここって」


 前世の、俺の、三条奏多の自宅だった。


 いつからだろう。

 転生して、数年は普通に眠れた。

 のだけど、ここ最近、悪夢を見る。


 ラノベを読んで、飯を食って、寝る。

 起きて、学校に行ってラノベを読んで帰宅したら、また、読んで寝る。

 こんな、怠惰な日常。


 たまに、喧嘩する幼馴染との、お出掛けくらいが、俺の世界が鮮やかになる。


「ここまでは、まだいいんだけどな」

 

 夢を見ている俺の視界が切り替わる。

 先ほどまでは、怠惰な俺の日々が映っていたのに……。


「はぁ……もう、やめてくれ」


 意識してないのに、勝手にため息が出る。


 チェンジされた視界の先には、両親がいる。

 あの日見た、楽しそうに歩く両親。


 遠いから、何を喋っているのかは、わからない。

 でも俺には察せた。


 母は、『あんな子捨てることができてよかった』と、笑顔。

 父は、『そうだな、あいつはいらない子だ』。


 このセリフが合ってるかどうかなんて、確認しなくても分かる、イージー問題ってやつさ。

 

「あーもう!」


 いい加減に、夢から覚めてくれ。

 てかなんで、俺は未だに忘れられてないんだ?

 ピタルという父ができたのに、転生して新しい自分になったのに。


 この2人のことを忘れようとしたのに。


 

 決めた。

 文句を言うことにした。

 この世界に、前世に。


「おいこらー!!! このゴミ夢!

もう、二度と俺の睡眠を妨げるな!」


 大きく息を吸う。

 そして、


「俺はもう、最高の父に出会えたんだよ!!!」


 かなり遠くで、談笑してる前世の親に、聞こえるんじゃないかと思える声量で放った。


 俺の視界が暗くなっていく。

 この世界が、スローモーションになっていく。


 あぁ、これはやっと……。



「――ウェイス!」

「……」

「コウェイス!」

「え?」


 ピタルが、肩を揺さぶらせて、起こしてくれたのか。

 悪夢の時は、いつもこの人が起こしてくれるな。


「大丈夫? どうしよう、なにか良い夢を見せる魔法とか……」


 どうしようと言ってアワアワと、している。

 そんなに、心配性なのはどうかと思う。

 ……まぁ、嬉しいけれどね。


「ありがとう、大丈夫だよ。なんか、吹っ切れたような気がする」

「え、あ、そう?」

「うん」



 俺は、あの夢で、叫んだことを境に、前世の親ことを、殆ど考えなくなっていた。


---


 

 今日のトレーニングも終わり、赤ん坊の時にお世話になった、

 ロボットの『セワ』を、綺麗に磨いていると、父さんが仕事から帰ってきた。


「おかえり」

「あ、コウェイス……」

「?」


 なんだ?

 いつもなら、普通にただいまのはずだけど。

 今の彼は、頬が赤いな。


「僕がなんの仕事してるか知ってるよね?」


 え、こわ。突然の質問?


「え、おれが生まれる前は、教師をしてて、生まれてからは……」


 あれ、なんだっけ。

 1年前くらいに教えてくれたんだけど、忘れたなぁ。

 教師をしてたってことに、驚いたからかな。


「今はね、発明チームで働いてるんだ」

「あ」


 そうだ。

 発明チームかぁ。


 一から魔法を編み出す仕事……研究みたいなことをしているんだった。


「うん、それがどうしたの?」

「あ、うん。えっと、えっとね」

 

 じれったい。

 いつもは、こんな気弱な男じゃないだろ?


「もー! なに!! はっきり!」

「はい!」


 息子の俺の声に、軍人みたいに返事をしたピタル。


 息を吸う、息を吐く。

 頬が、赤かったのも落ち着いてきた。

 やっと、何か言ってくれそう。


「コウェイス」

「うん、なに?」


 彼が、俺の身長に合わせて、しゃがむ。

 目の前に、彼の顔がある。


 そして、口が開いた。


「妹、欲しいか?」


 その言葉に、俺は空いた口が塞がらなくなった。

 が、頑張って声を出した。

 

「どういうこと?」

「実はね、僕、再婚するんだ」

「……」

「あ、ごめん! 再婚っていうのはね……」

「まって、意味はわかる。だれとなの?」


 俺の問いに、ピタルはまた頬を赤らめた。

 

「マリアさん……同じ仕事場の人」

「発明チームの?」

「うん、2人1組で活動するから、その人と同じ期間が長くなって、それで……」


 お、おぉ。

 この顔はガチだ。

 恋する思春期男子みたいになってやがる。

 

「再婚は、わかったけど、妹ってのはなに?」

「うん、彼女にも子供がいてね」


 ほう。

 うちらの、逆バージョン?

 シングルマザーで、娘がいるってことかな。


「なるほどね、父さんが再婚したら、その子が、おれの妹になるってことかぁ」

「……」


 ピタルが、じっと、見つめてくる。

 俺、何か間違ったこと言った?


「な、なに、父さん」

「コウェイスってほんとに5歳?」

「えっ」


 疑いの目を向けてきている。

 なに、転生したことがバレた?

 それは、ダメだろう。

 バレるのは、まずいだろう!!


「い、いや、ちが――」

「あっはは!」

「えぇ?」


 ピタルが大爆笑しだした。


「ごめっ。おもしろくて」

「なにがー」

「昔から思ってたけど、うちの息子は大人びてるなぁって!」

「……ぷっ。あははっ!」


 彼の笑いに釣られて、こちらも大爆笑してしまった。



「ふぅ」


 少し経って落ち着く。


「明日、連れてきていい?」

「え、早速?」

「うん、今日プロポーズしてしまってさ」


 今日?

 どんなタイミングでしてるんだよ。

 もっと、ムードのあるさぁ。

 いや、いっか。


 彼は、あまり恋愛ごとには慣れてない雰囲気があるし、

 そもそも、この世界にプロポーズのムードとかあるのかしらんし。


 てか俺、彼女できたことないし。


「プロポーズして、喜んでくれたの?」

「……」

「その顔を見れば分かるね」


 ピタルは、喜びと照れが混じった表情をしていた。

 マリア?

 という人が、どんな人なのかは分からんけれど、きっといい人だ。

 

「よかったね」

「ありがとうコウェイス」

 


---



 今日、ピタルが新しいお母さん連れてくるらしい。

 あと、妹も。

 来るまで、俺は家で待機している……。


 ていうか、昨日は、いい人だと勝手に決めつけてたけどさ?


 ピタルって人を見る目あるの?

 実の母は、かなりクズっぽいし。

 

 やばい、そろそろ家に彼女らが来る……。

 


「……」


 よし決めた。

 もしも、俺の父さんがまた騙されてそうなら、息子である俺が、追い出してやる!


 たとえ、ピタルが悲しむとしても!


 とか、考えていると、音がした。

 正確に言えば、うちの家に向かってくる足音がした。


 数は3人か。


 ふっふっふ。

 これでも、修行しているからね。

 足音で人数くらいはわかるようになったのさ。


 ……いかん。

 それはいいとしてだ。


 ピタル、義母、義妹が、こちらにきているんだろう。

 おおよそ数十秒後にくるな。


 どうしよう。

 玄関口までいくか?

 『お待ちしておりました。さ、こちらへ』くらい言うべきか?


 いや、いっか。

 気が早いけど、家族になるんだし。

 うん。いいね家族。


 

 思った通り、すぐに扉が開いた。

 ガチャと、開いた。


 流石に、初対面だから挨拶はきちんと。

 と思い、背筋をピシッとして出迎えた。


 まず、入ってきたのは、いつも見ている男の人。

 ピタルだ。

 なんだか、いつにも増して、顔が綻んでる。


 彼は、俺と目があって、口を開く。


「コウェイス、そんなに緊張しなくても」

「え、緊張は別に……」

 

 自分の足を見てみると、震えていた。

 頭の中では、家族が増えることの嬉しさしかなかったつもりではあった。

 

 でも、やはり緊張はしてたらしい。


「お邪魔します」

 

 聞き慣れない声音がした。

 優しそうで、ほんわかしていて、おっとりしている。

 聖母ような声だ。


「こ、こんにちわ」

 

 ……やばい。

 とても、美人さんなんだけど。

 声が、震えてしまうぅ。

 

 こっちの世界に来てから、女の人を初めて見た。

 基準がわからないけど、きっとこの世界でもトップクラスな美人だ。


「ごめんね、マリアさん。息子はまだ僕以外と会っていなくて……」

「いいえ、とても可愛らしいですよ」


 キュン!

 可愛いと言われちゃった!

 恋に落ち……てはないです。

 流石にね。


「あはは。でも、ココちゃんには勝てないかもですけど」

「……?」


 ココちゃん?

 ピタルよ、その名はなんじゃ?

 初耳じゃぞ?


 知らない名に戸惑っていると、マリアさんの背中に何かを見つけた。


「こーら。ココ。挨拶しなさい?

 お兄ちゃんですよ?」


 彼女は、何かにしゃべっている。

 ん?

 お兄ちゃんって、俺だよな?

 てことは、


「こ、こ、こ、こんにちわ」


 あ、やっと、視界に入った。

 ずっと、背中に隠れてて見えなかった、俺の……妹だった。


「こんにちわ。ココちゃん? よろしくね」

 

 接し方は分からないけど、できるだけ優しく。

 ピタルのように。


 そして、前世の幼馴染が、子供に対してよく接していた態度を真似してみた。

 ルルは、あれでも子供好きだった。


「よ、ろ、しく」


 お、返事をくれた。

 うれしい。

 けど、怖がっているのかな?


 怯えているように見える。

 目が前髪で隠れててあまりわからないけど。


「ごめんね、コウェイスくん」

「?」


 マリアさんが、謝ってきた。

 なにに?


「ココはね、人見知りというか……」

「あ、なるほど」


 そういうことね。

 

「父さんも、ココちゃんと、まだあまり喋れないの?」

「僕は、――」


 僕もあまり、心を許してくれないんだ。

 って言葉を期待していた。


 が!


「ぱぱ……」

「!?!?!?」


 マリアから、移動した!?

 移動先は、ピタルの背中だと!?


 父さん、お見事です。

 早速、手懐けたのですね。


 じゃなくて!

 まぁ、当たり前かな。

 彼は、化け物級に良い人だ。


 子供なら、尚更懐かれやすそうだし。


「うぅ」


 な!

 うるうるした目で、俺をみないでぇ?

 なにもしないからさぁ。


 仲良くしてくれヨォ。

 とほほ。



---


 

 昨日、俺には、妹ができた。

 年齢は、同い年の5歳。

 しかも、誕生日も同じときた。


 ピタルによると、俺とココちゃんの共通点が多くて、マリアさんと会話ができたと。

 

 それはさておき、困った。


 ココちゃんは、人見知りもそうだけど、

 ――自分に自信がなさすぎる。


 例えば、自分の意見が言えない、目立たず生きている感じがする。


 「ごめんない」も、多い。

 視線が合わない。

 元気があまりない。


 声が小さい。


 

 ……俺には、そんな子に、自信をつけさせる気はさらさらない。

 俺は、自信がないから死ぬとか思ってない。


 けど、妹なんだ。

 まだ、1日も経ってないけれど、家族だから。


 それに、挑戦は楽しいってことを伝えたい。

 

 

 俺は、今日から、やることが増えた。

 妹、自信つけ計画の開始だ。

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