第五話「挑戦」
魔法は楽しいもんだ。
毎日やるたびに成長を感じられる。
魔法を使用すると、魔力が少しずつ増える感覚がある。
魔力が増えるメリットは、打てる回数が増えるのと、魔法の威力が上がること。
これによって、階級が上がっていけたりするんだろう。
俺は、若くしてこの世界の真理に気づいてしまった。
いや、前世でもそうだったのかもしれない。
答えは、簡単。
そう、努力だ。
努力をしろ。
挑戦をしろ。
失敗をしろ。
成功を勝ち取れ。
もし、この4つを突然言われた前世の俺なら、「は? めんどいわ」ってなった。
今の俺なら?
「それな」。
って言うと思う。
それぐらい努力が大事と気づけた。
これに気づくには、挑戦しないとってわけ。
「なので、ココちゃんがんばろ?」
「い、イヤ」
無理かぁ。
このコウェイス神思考を、数十分は語ったのになぁ。
「ココ? お兄ちゃんがこんなに言ってくれてるのよ?」
「だって、どうせむりだし……」
どうせむり、か。
どうやったら、ここまでになるんだろう。
いじめられたとかだろうか。
「コウェイス、あまりココちゃんに無理をさせたらダメだよ?」
「わかってるよ、父さん」
「コウェイスくん、ココと仲良くしてあげてね」
「わかってますよ、母さん」
「まほ、う、やりたくない」
「ダメだよ、ココちゃん」
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朝。
以前までと違うのは、真隣に妹が寝てること。
ダブルベットを独り占めしていたけど、ココちゃんと寝てねと、言われちゃ仕方ない。
隣の部屋……ピタルの部屋は、今頃ラブラブに抱き合って寝てる違いない。
彼ときたら、知らぬ間に、自分もダブルベットにしていたからね。
こほん。
突然ですが、俺のモーニングルーティンを始める。
「ほっ」
まずは、ストレッチ。
体をほぐしておく。
これに意味があるのかは知らない。
「ほい!」
ストレッチが終わったら、腕立て100回。
スクワット100回。
100という数字が好きだからこの回数だ。
「せいやぁー!」
ふぅ。
すこし、汗かいてきた。
水浴びしてこよう。
ん?
「……」
見られている。
視線を感じる。
ココちゃんだ。
「一緒に水浴びする?」
俺の言葉に、首を横に振った。
高速で、横に振った。
「そこまで、嫌なのかぁ」
汗もかいてないのに、朝っぱらから水浴びは嫌なんだな。
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水浴びも終わり。
4人で、朝ごはんを食べる。
基本的に、ピタルが作ってくれるのが主流であったが、マリアさんがしてくれるようになった。
うん、彼女の方が数倍美味しい。
「おいしいかしら……2人とも」
心配そうに、俺達に話しかけてきた。
「美味しいですよマリアさん」
「うん、おれもおいしいと思います」
そう言うと、ほっとしたのか、嬉しそうに微笑んだ。
「……」
ココちゃんは淡々と口を頬張らせている。
でも、初めて見る表情だ。
とても、とても嬉しそうに食べている。
食べることが好きな子なのかな。
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毎日の本命。
トレーニングを始めよう。
「コウェイスくん」
「?」
家を出る時に、引き止められた。
マリアさんに。
「どうしたんですか?」
「ココについてなんだけど……」
ココちゃん?
「あの子にもっと、仲良くしてあげてくれないかしら」
「えっと?」
「ココはね、昔は元気な子だったの」
「……」
長くなりそうだな。
でも、聞こう。
「今は……内気になってるけれど」
「何があったんですか?」
「……あの子が3歳の時――」
ここから、数分に渡って、マリアさんとココちゃんに起きた出来事が語られた。
---マリア視点---
あれは、ココが3歳の時だった。
元旦那は、酒乱。
暴力までは、振るってこなくても、言葉の暴力がひどく……。
私とココは、毎日のように暴言を浴びせられた。
けど、我慢はできた。
あの子は、いつも元気。
私が惨めに、「我慢してね」と言うと、
『大丈夫! いつかお酒も辞めるだろうし!』
って、親なのに元気付けられることが多かったと思う。
今思うと、我慢してねなんて言ったのは、あの人が酒を辞める日が来ると思っていたからだろう。
そんな日など来ることはないのに。
ゴツっという音が鳴る。
『痛ッ』
ココが、あの人に殴られた。
『ウルセェんだよ! 声がデケェんだよ!
なんで、そんか元気なんだよ!!』
『あなた、自分が何をやっているのかわかっているの!?』
『ウルセェウルセェ!』
その後は、自室に戻り、いつにも増して酒を飲み続けたのであった。
この日、ココを守らなければと痛感した。
---コウェイス視点---
「これが、きっと今のあの子の、自信の無さの原因だと思うの」
「ふむ」
う……うーん。
話が、色々すごすぎて、ガキの俺には……。
でも、分かることは、原因は元旦那にあるってことか。
それに、昔は元気っ子だったんだココちゃん……。
そうと分かれば、尚更。
「わかりました、母さん」
「……え?」
「おれが、ココちゃんを昔の100倍元気っ子にさせてみせますから」
「……」
マリアさんは、少し困惑したあと、
綺麗な笑顔になった。
「ありがとうお兄ちゃん」
お、おぉ。
お兄ちゃん呼び照れる。
トレーニングを改めて開始する。
場所は、家から数百メートル離れておく。
魔法が、失弾して家に向かったら危険だからだ。
それにしても、こんだけ離れても、まだ森の中。
どんだけ広いんだよ。
本当の外が、どんなところか俺だけ知らないのか。
悲しい。
まずは、ランニング。
どんだけ、とかはない。
疲れて疲れて吐きそうになるまで走る。
ランニングが終われば、魔法の訓練。
そこらへんにある1番でっかい木に向けて、魔力が切れるまで放つ。
「ファイアーボール!」
ドゴンっ!
っと音で、木が揺れる。
デカさ故に、折れたりはしない。
まだまだだなー、俺もっ。
次は、ファイアーと、ウォーターを撃つ。
的は、落ちてる葉っぱ。
「ファイアー」
葉は、ボっと燃えた。
「ウォーター」
声と共に、燃えてる火が消えた。
「ふぅ」
ま、この2つはどうでもいい。
ファイアーボールと、サンダー以外は、生活に使う家庭魔法って感じだし。
いくら使って、威力を上げても意味はない。
よっしゃ。
サンダーを撃とう。
「うーん」
歩き回る。
できるだけデカい岩を見つけるために。
「おっ、あったあった」
見つけたー。
とてもでかーい岩。
軽自動車くらいのでかさかな?
これに向かって……。
「……」
息を吸う。
息を吐く。
目を閉じる。
目を開ける!
「サンダー!!!!」
上空から岩へ、稲妻が落ちた。
その瞬間、岩が、すべて石ころに変わって砕けた。
この、サンダーは何級だろ。
ピタルに聞いておこう。
彼は、階級に詳しい。
「うーん」
まだ、体力が残っている。
まだ、体が動く。
どしよ。
トレーニングを続けようか。
いつもはここで終了だけどなあ。
いーや。
やめよ。
いつも頑張ってるし、偶には休みを取るのも大事っていうしね!
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夜。
それぞれ、就寝のため、ベッドに入った。
ダブルベット。
5歳児2人には、十分のデカさ。
一緒に寝てるけど、ココちゃんは、端っこで向こうを向いて寝てる。
少し気まずい。
「ココちゃん、寝た?」
とりあえず、話しかけたけど、修学旅行みたいになったかも。
「好きな子いる?」
やばいやばい。
もっと、それっぽくなったって。
「……」
「……ごめんなんでもない」
できたら、寝ててくれぇい。
恥ずいからぁ。
「えっと」
なんだとぉ!?
寝てないだとぉ!?
えっとって何!?
「う、うん。なに?」
「お、にいちゃん」
「……」
「なんで、――頑張るの?」
「え」
目を開けると、目の前にココちゃんがいた。
先程まで、そっぽ向いて寝てたのに、こちらを向いている。
「どうして、頑張るの?」
「……それは、――」




