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一般的な異世界人生。  作者: 納豆にはネギ
第一章 転生と決意編
3/4

第二話「怠惰脱却作戦」


 一週間くらい経ったのかな。

 そのくらい経って分かったことがある。


 父の名前は、ピタル・シュクラン。

 とにかく優しくて、まぁイケメンだ。

 青い髪と、白い瞳。


 生後8ヶ月の俺はというと、

 フルネームは、コウェイス・シュクラン。

 

 誰に似たのか知らんが、

 髪の色は黒である。

 嬉しいことに、すごい美形。


 これ、将来モテちゃう!


 あ、そうそう、母親についてだ。

 俺は最初、父が捨てられたと思っていた。

 けど、それはおかしい。

 あんなにいい人が捨てられるのか?


 そう思い、家の中を調査した結果。

 ゴミ箱に、紙が捨てられていた。

 広げると、置き手紙のようなもので、その内容は……。


 『くそが、ピタルがこんなに金がないとはね。

 アタシはがっかりしたよ。

 離婚だ離婚。

 ガキは、1人で育てな!』


 と、記載されていた。

 俺は、それを読んだ時、空いた口が塞がらなかった。

 母はクズだ。

 

 ピタルは、顔がいい。

 でも、金銭的にいえば……裕福ではない。

 決して、貧乏でもない。

 普通っていう印象だ。


 それを母は知り、捨てた。

 金と顔にしか目がない人か?

 なんともまぁ、めちゃくちゃだな。


 捨てたのは、ピタルの方かもしれない。

 いやよそう。

 捨てた捨てられたというのは……。


 彼は、俺を愛してくれてる。

 あんなクズとの子供である俺を。

 

 それだけでいいじゃないか。

 生後8ヶ月でありながらも、彼を尊敬するぜ。

 

 

 ピタルは、朝から夕方までは、仕事に行っている。

 で、赤ん坊を家に置いておくのは、普通はやばい。


 しかし、俺の世話をしてくれるロボットがいる。

 喋りはしないが、オムツを替えたり、飯をくれたり、寝かしつけてくれる。


 きっと、この異世界の全親御さんは、このロボットに助けられていると分かる。


 このロボにより、ピタルは安心して仕事ができるってわけだ。

 


 まぁそれはいいとして、今、この家に彼はいない。

 絶好のチャンス。


 俺には、この世界に転生してから……。

 いや、魔法があると知ってから、やりたいことができた。


 前世では、ラノベを読んでは寝る。の生活で怠惰そのものだった。

 一応、高校は行っていたが、昼休みもラノベを読んでいるくらいである。


 友達を作ることすらしてなかった。


 俺は、後悔している。

 挑戦を、努力をしてこなかったから。


 幼馴染のルルは、格闘技をしていた。

 総合格闘技(MMA)、ボクシング、極真空手。


 それぞれ、敵無しだ。

 もう、ほんとに強い。

 ルルにナンパしたDQN男は、基本的にボコられる。

 

 そんな彼女は、俺にも格闘技を勧めてくれた。


 けど、やらなかった。

 めんどくさいから。

 

 格闘技自体は好きだった。

 ルルがしてたから、よく試合も見に行った。


 なのに、やらなかった。

 痛そうだから、と言い訳してた。


 今思うと、本当に怠惰だ。

 ルルには申し訳ない。

 

 ――でも、俺は転生した。


 親も、優しいし、愛してくれている。

 最高の環境だ。


 努力しよう。

 挑戦しよう。

 鍛えよう。


 MMAを、するわけではないけれど、

 俺は今日から、魔法のプロになるんだ!

 

 いつか、剣とかも扱ってみたりしたい。

 なんだろう、この好奇心。


 どこから、湧き出てきてるのかは知らん。

 が、好都合。



 生後8ヶ月。

 意識が芽生えてから、1週間。


 俺、コウェイス・シュクランは、魔法を学ぶと同時に努力をすると決心した。



---



 そうと決まれば、魔法について、だ。


 ピタルは、魔法が得意にみえた。

 俺を笑わせるために、毎日いくつか見せてくれたのだが、

 初めて見た時以外は、どれも無詠唱。

 「ファイアー」とも言わずに、火を出せている。


 まぁ、この世界に詠唱があるのかは知らん。

 しかし、きっとすごいに違いない。


 だってさ?

 うまいんだもん。

 遠くの小さなゴミを正確に当てたりするし。


 彼は、どう魔法を勉強したんだろう。

 学園とかに通っていたのだろうか。


 そう思いつつも、今。


 ピタルの部屋を漁りまくってる。

 机の引き出しが怪しい。


 ここにはきっと、魔法の本とかが!


 期待と、興味を抑えられなく、思いっきり、

 ガラっ、と引き出しを開ける。

 

 が、そこには、何もなかった。

 はずれか。


 この部屋は綺麗すぎる。

 机、ペン、紙くらいしかない。

 心が綺麗な証拠ってやつかしら。


 

 次、寝室だ。

 いつも、俺とピタルが寝てるダブルベットと、部屋の角にロボットさんがいる。


 こいつは、基本的に停止してる。

 赤ん坊の俺に、うんちなどの異変が起こらない限り。


 そういえば、こいつ名前がないんだよな。

 うーん。

 考えよう。


 えーと、いつも世話をしてくれるから……。

 よし!


 今日からお前は、『セワ』だ!

 

 セワは、停止してる。

 これがもし、人だったら喜んでくれたかなー。


 いやないな。

 正直、セワって名前は安直すぎ!

 もっと、いい命名ができないかな……。


 考える。

 うーん。


 はっ!

 おっといけない。

 今は、魔法についてを探す時間だ。 


 こんなところに、魔法の教科書があるとは思えんが。

 

 それにしても……。


「うきゃっ!」


 はぁ最高。

 フッカフカのベッド。


 あぁ、ずっとこうしていたい。

 ここに、ラノベがあれば……。


「!!」


 いかん!

 ぐーたら生活に戻る気か俺!

 

 さっき決めただろう。

 前世の怠惰から、おさらばするんだ。


 三条奏多は、もう死んだ。

 今は、コウェイス・シュクランである。


 ふふん。

 って、かっこつけてるけど、今の体型が赤ちゃんすぎて可愛くなっちゃう。


 それはそうと、魔法の本とかないかなー。

 ないなら諦めて、喋れるようになるまで成長を待ち、ピタルに教わるしかないな。


 1歳くらいになったら喋れるかな。


「?」


 ベッドから降りて気がついた。

 下の隙間に、箱がある。


 赤い箱で、黄色いリボンのようなのがついてる。

 手を伸ばし引きずり出す。


 ベッド下にあるとか、

 前世のえろ本かよ……。


「……」


 箱を、凝視する。


 開けていいのかな。

 なんか、プレゼントボックスって感じだ。


 ピタルの好きな人にあげるやつとかだったら、開けたらダメだよね。


 でもいないか。

 うん、まだいないだろうな。

 クズ女に騙されてたもんピタル。

 まだ、女性不信が解けてないだろ。


 そう、勝手に思い込んで、いざ!

 開封!


 え……。



 箱の中身は、本であった。

 紙も添えてあり、『コウェイス5歳の誕生日』と、記されている。


 本の題名は、

 『魔法』と、

 端的に書かれてある。


 この2つを見て、俺は、ぐるぐると頭の中が回転した。

 やってしまったのかもしれない。

 魔法についての本を見つけた嬉しさより、

 

 ピタルが、俺にプレゼントしようとしたであろうものを開封してしまった。

 5歳にくれるものを今……。


 どうしようどうしようどうしよう!

 優しい父のサプライズを、好奇心旺盛な、クソガキが台無しにしてしまった。


 やばい、申し訳ない、すいません。

 いや、謝ってる場合か。

 まず、この箱を戻そう。

 元あった場所に。


 うわ!

 リボンビリビリに破いてしまった!

 

 おわったかもしれない。

 と、半分絶望していると、


「コウェイス?」


 ありえない声が聞こえてきた。

 今は、いないはずの人の声。


 仕事に行ったと思ってた人の声。

 俺は、恐る恐る振り返る。


「ぱぷ?」


 ピタルと目が合い、次に彼は、破かれた自分のプレゼントに視線を向けた。

 

 やばい、と思い、必死にかわいこぶった。

 

「ぱっぷぅ」

「……」


 ピタルの顔が、真顔になった。

 いつも、俺に向ける笑顔ではなく。


「ぱ、ぱぶ〜」


 いや、こんな可愛いよ!?

 これなら、許してくれるよね?

 赤ちゃんがしでかしたことさ!


 いーや!

 そもそも、こんなところに隠してるのが悪くないか?


「なーんだ」


 え?


 ピタルが、苦笑した。


「やっぱり、ここは見つけちゃうよね」

「……」

「仕事を早く終わらせて、隠し場所変えないとと思ったのにー!」

「……」


 悔しがるピタル。

 その表情を、ただ見上げることしかできない。


「まぁ、いいか!

 コウェイスも、早く魔法を知りたいよね」

「……ばぶ」

「よーし! 今日から読み聞かせるからね!」


 俺は、彼が悲しむと思った。

 

 だって、サプライズプレゼントを先に開封されたら俺だって、まじかよってなるし。

 

 でも違った。

 彼は、悔しがって、ただ笑った。


 なのに俺は、許してもらおうと、無様にぶりっ子してた。


 まったく。

 まだまだガキだな俺って。

 ピタルを見習おう。



 今日から魔法の本を、父が毎日読み聞かせてくれるようになった。

 

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