第一話「ここって」
記念すべき、いや、記念する程ではない一話!
両親は俺を愛していたのだろうか。
仕事とかいって、無駄に広く建てられた家に俺を1人にして。
父と母に会ったのは、両手で数えられるほど。
寂しい気持ちを感じつつも、仕事だから仕方ないと我慢していた。
……けど、ある日、俺は見た。
両親が、外で楽しそうに歩いてる所を。
ニコニコと微笑みながら歩いてる所を。
その時、思った。
そんな暇があるなら、家に帰って来いよって。
悲しさよりも、苛立ちが芽生えた。
あぁ。
思い返してみれば、あれって……。
今、確信した。
両親は俺を愛してなどいなかったんだ。
いや、もういいことか。
俺は、さっき轢かれた。
きっと、今、こんなことを考えている間も、天国に向かっているんだろう。
来世は、優しい家族に恵まれたい。
ところで。
現在、俺は目を閉じている。
轢かれてからの痛みも消えている。
息も……。
ん?
息できてるな。
あと、温かい何かに包まれている。
とても心地いい。
もう天国に着いたのかな?
「……」
どのような世界が広がっているのか。
女神とかいるのか。
そういった期待を胸に膨らませ、目を開く。
(え?)
その景色に、俺は絶句した。
まず、視界に入ったのは男であった。
青い髪の男。
子守唄のようなものを歌っている。
これ、なに?
意味がわからない。
その次に、ここは家の中だ。
木造建築というのが見てわかる。
近くに窓があるが、緑っぽい景色が遠目にわかる。
森か?
森にある、家の中に俺?
本当に意味がわからない。
あと、この男!
顔が近い!
子守唄をなぜ歌っている!
こわいこわい!
「……?」
あ、こっちに気づいた。
「あ! 起きちゃった?」
え、どうしよ。
うっす。とか言うべきか?
いや、それはなんかあれだな。
こんにちわ。と言おう。
「うあー」
……は?
声が、出ない?
違う。出てはいる。
けれど、喋れない。
赤ん坊の声しか聞こえない。
「ははっ。元気だね、コウェイス」
外国の名前か?
なぜ、俺を見て言う。
なぜ、俺を見て微笑む。
逃げたい。
怖い。
怖すぎる。
俺は、逃げることを決意した。
まずは、状況把握からだ。
部屋の構造を確認しよう。
どういうわけか、首が動かしづらいが、頑張って部屋全体を見渡してみる。
最初に、鏡を発見した。
脱獄に鏡は不必要だ。
無視しよう。
「……」
まって。
無視できない。
俺は再び、鏡に目を向ける。
映っているのは、
先程から喋っているこの男と、
その男に抱き抱えられている赤ん坊だった。
---
前世では、死ぬほどラノベを読んでいた。
だから、俺も転生したいな。
なんて、思ってたりもしたし、ルルに言って呆れられたりもした。
けどさぁ。
ほんとにさぁ。
転生するとは思わんやろ!
はぁ!?
なんでだ!?
記憶持ったまま赤ん坊からは、きつくないか!?
じゃあ、あの男は父親……?
ったく、冗談きついですよぉ。
とか、思いつつも俺は今、ハイハイしている。
なぜかって?
そりゃ、家の中を探索するためさ。
体が小さいからか、冒険って感覚だ。
現在は夜なので、男は寝ている。
ていうか、気づいたけどさ。
俺は、何歳なんだ?
生まれた直後って感じでは無かった。
なら、途中から意識が芽生える感じの転生だったんだろうな。
鏡で見た感じ、1歳とかかな?
まぁ、それは追々わかることか。
……それにしても、母親はどこ?
もしや、彼は捨てられたのか?
あらま、父さん、可哀想に。
息子の僕が一緒に寝てあげるね。
前世なら、男と隣で寝るなんて、死んでも嫌だったけど。
あの人は、安心する。
やっぱり、親……なんだろうな。
ハイハイして、寝室に戻る。
全速力移動により、秒で寝室の扉に到着。
急速に眠気が襲ってきた。
やばい、早くこの部屋に入って……。
---
「――! ――!!!」
なんだ、うるさいな。
「――イス!」
え?
なに?
「コウェイス!!!!!」
「……!?」
だれ!?
あ、そっか。
俺、転生したんだ。
この人は『父さん』だ。
「あう?」
「あ……よかった」
赤ん坊なりの、おはようをした。
すると、見る見るうちに、父さんが涙を流した。
「よかった、よかった」
わからん、この状況なんなんだ。
えっと、俺は寝てて、今起きた。
うむ?
どこで寝たんだ?
……やっべ!
扉の前で死んでたみたいになってたかも。
「ほんとうに、よかった」
そう言って、ベッドに移動させられてた俺を、抱き上げた。
「コウェイス、寝るならここの、ベッドで寝てね」
啜り泣きながら、俺を温かく抱いて言った。
そして、涙を拭き取り、微笑んで、
「愛してるよ」
と、おでこにキスをしてきた。
我慢していたのに、不意を突かれ、俺は泣いてしまった。
理由は明白。
俺をここまで心配してくれたから。
「愛してる」と、言ってくれたから。
この人が、父親だから。
前世では、両親に、愛してるなんて言ってもらったこともないし、心配されたこともない。
そうだ、俺は転生したんだ。
前世のことは忘れよう。
今世で、俺は生きていく。
今度こそ、家族との幸せを知りたい。
「コウェイス!? 大丈夫!?」
赤ちゃんらしく、大泣きしていたら、父さんが心配してくれている。
「えっと、えっと!」
大泣きの原因がわからず困惑しているっぽい。
うんちじゃないよ。
「うんちじゃないなぁ」
だから、うんちじゃないんだって。
「リカバリー」
……はい?
彼は、手を俺の頭に置いて、リカバリーと唱えた。
次は俺が困惑した。
「あれ、泣き止んだ。正解だったのかな」
いや、さっきのはなんだったんだ。
急にそんなこと言われたら泣き止むわ。
「うーん。でも、この子あんまり笑ってくれないよなぁ」
お、笑えばいいのか?
渾身のかわいい笑いを見せてやろうか?
と、どのようにしようか悩んでいると、
「シュクラン、あれみてて」
父が、指を差した。
その先には、丸めた紙のようなゴミが落ちていた。
「よーし! ファイヤー!」
ボワっ!
っと、ゴミが燃えた。
うそだろ?
ラノベ読みまくったからわかるぞ?
いやでも。
さすがにね。
「ウォーター」
燃えた紙を水で、鎮火した。
あ、あはは。
なんてこった。
ここは、外国じゃなかった。
魔法が使える異世界だったのか。




